【監修:青山健一】
目 次
人と話すときや笑ったときなど、前歯は周りの人から見られやすい歯です。
そのため、前歯が大きいとコンプレックスに感じる方も少なくありません。そして、歯並びへの影響も忘れてはいけないポイントです。
前歯が大きいことでお口の中に様々な問題が生じる可能性があり、治療が必要なケースも少なくありません。
今回は、前歯が大きく見える原因や小さくする方法について詳しく解説していきます。
前歯が大きく見える原因
ご自身の歯がなぜ大きく見えるのか、その原因を知りたいという方も多いのではないでしょうか。
前歯が大きく見える原因を、絶対的な原因と相対的な原因に分けてそれぞれ解説します。
絶対的な原因
前歯が大きく見えるのには、歯そのものが大きいという絶対的原因が考えられます。
一般的な前歯の幅は、男性が8.6㎜程度で女性が8.5㎜程度が平均です。
また、歯の長さは10~11㎜程度が平均となっています。
これらの数値を参考にして、大幅に超える場合は絶対的に前歯が大きいということになるのです。
絶対的に前歯が大きくなる原因ですが、遺伝的に顎が小さいことや、成長過程で顎の発達が進まなかったということがあげられます。
食生活の欧米化により、昔よりも柔らかいものを食べる機会が増えました。
これによって、顎の発達に影響を及ぼし前歯が大きくなることがあるのです。
相対的な原因
前歯自体の大きさは平均的でも、相対的に大きく見えることも少なくありません。
相対的に前歯が多く見える原因には、以下のようなものがあります。
- 前歯が前突している
- 隣接する歯が後退している
- 歯肉退縮(歯茎が下がっている)
前歯が前突している状態とは、いわゆる出っ歯のことです。
歯列が整った状態で並んでいると大きくないのですが、隣接する歯と前後した位置にあることで、相対的に大きく見えます。
これは骨格が原因の場合もあれば、指しゃぶりや舌で歯を押すような生活習慣が原因の場合もあります。
歯肉退縮は、強いブラッシングで起こる可能性があり、歯茎が下がることで表面に出てくる歯の面積が大きくなるのです。
前歯が大きいことで生じるデメリット
絶対的・相対的のどちらが原因であっても、前歯が大きいことで様々なデメリットが生じる恐れがあります。
そのデメリットはお口の中のトラブルを引き起こすリスクがあるため注意しなければなりません。
ここでは、前歯が大きいことで生じるデメリットを2つご紹介します。
歯並びが悪くなる
前歯が大きいことで生じるデメリットとして、歯並びが悪くなることがあげられます。
原因が何であったとしても、前歯が大きいということは歯列が整いにくい状態です。
前歯が大きいと、前歯だけでなく隣接する歯が整列するためのスペースを確保することが難しくなります。
そのため、出っ歯や叢生のような歯並びの悪さを引き起こすリスクがあるのです。
噛み合わせが悪くなる
噛み合わせが悪くなることも、前歯が大きいことで生じるデメリットの1つです。
歯並びの悪さにつながる部分でもありますが、歯列が整わない状態において噛み合わせが悪くなるリスクは隣り合わせといえます。
上下の顎がズレている可能性もありますし、悪化すると顎関節症になるリスクもあるのです。
前歯が大きいと気にされている場合、噛み合わせにも注意しなければなりません。
前歯を小さくする治療方法の種類
前歯が大きいと、先ほどご紹介したように歯並びや噛み合わせに影響を及ぼすリスクがあります。
また、見た目にコンプレックスを感じる方も多く、前歯を小さくしたいと思う方は少なくありません。
前歯を小さくするにはどのような方法があるのか、治療方法の種類を解説します。
前歯を削る
前歯を小さくする方法には、大きい前歯を削るという治療があります。
特にこの治療方法が向いているのは、前歯そのものが大きいケースです。
歯の表面にはエナメル質という部分があり、ここを削ることで前歯を小さくすることができます。
しかし、削る場所や元々の前歯の大きさによっては、大きく削らなければなりません。
そのため、削った歯と隣り合う歯との間に隙間ができてしまうことがあります。
隙間ができると、見た目の問題だけでなく虫歯や歯周病のリスクを高めることになるのです。
せっかく前歯が小さくなっても、隙間があることで審美性に問題が生じては悩みを解消することはできません。
隙間が大きい場合は矯正をしたり、被せ物をしたりと、別の治療を併用することが多いです。
矯正治療を行う
相対的に前歯が大きい場合は、矯正治療をするという方法があります。
元々の前歯の大きさは標準的ですので、歯並びを整えることで前歯が大きく見える状態を改善するのです。
実際には前歯が小さくなる訳ではありませんが、隣接する歯とのバランスが取れて小さくなったように見えます。
先ほど前歯そのものが大きい場合に前歯を削る方法があるとお伝えしました。
矯正治療の場合でも、歯列を整えるためのスペースが確保できないケースでは歯を削ることがあります。
どちらにしても、前歯を小さくする治療では削る可能性があることを押さえておきましょう。
前歯を削るリスク
絶対的に前歯が大きい場合には前歯を削ることが多く、矯正治療を行う場合でも必要に応じて削ることがあります。
前歯を小さくするために必要な治療ではありますが、歯を削ること自体にリスクがあることをご存知でしょうか。
ここでは、前歯を削るリスクを2つ解説していきます。
歯そのものの寿命が短くなる
前歯を削ることのリスクには、歯そのものの寿命が短くなるということがあります。
歯の神経があるのは、エナメル質よりもさらに内側にある象牙質という部分です。
エナメル質を削ると、歯の表面から象牙質までの距離が短くなります。
これによって、食べ物や冷たい飲み物を口にしたときに、知覚過敏のような症状が出ることがあるのです。
また、エナメル質を薄くすることで虫歯になりやすくなるリスクも忘れてはいけません。
前歯を小さくするためにエナメル質を削る場合、左右合わせて1㎜までとされています。
しかし、これ以上削る必要がある場合は、歯の神経を抜いてさらに小さくする症例もあるのです。
歯の神経を抜くということは歯に栄養が行き渡らず、歯の寿命を短くすることにつながります。
前歯の矯正方法
先ほどご紹介したように、前歯を小さくする方法には矯正治療があります。
しかし矯正治療と一言でいっても、表側矯正・裏側矯正・マウスピース矯正と様々な種類があるのです。
ここでは、それぞれの矯正方法の特徴をご紹介します。
表側矯正
表側矯正は、歯の表側に矯正器具を装着して歯列を整える方法です。
ブラケットという装置を歯の表側に装着し、そこにワイヤーを通します。
前歯だけの部分矯正という方法もありますが、噛み合わせが気になる方には全体矯正がおすすめです。
裏側矯正
裏側矯正は、歯の裏側に矯正装置をつける方法です。
表側矯正と同じくブラケットとワイヤーを使って歯を動かしていきます。
矯正装置を歯の裏側につけるため、装置が見えにくいのが特徴です。
ワイヤー矯正をしたいけれど目立つのは避けたいという患者様に選ばれています。
しかし、舌側に装置をつけるため、違和感が生じる可能性があることに注意しましょう。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、ワイヤーを使わずにマウスピースのみで矯正を行う方法です。
全体矯正だけでなく、前歯だけの部分矯正も行うことができます。
しかし、表側矯正と同様に噛み合わせに問題がある場合は全体矯正の方がいいでしょう。
透明なマウスピースを装着するため、矯正中であることが目立ちにくいのが特徴です。
前歯を小さくする治療の費用相場は?
前歯を小さくする治療には、削る方法と矯正治療という選択肢があります。
どちらの治療方法にもメリットやデメリットがありますが、費用相場も選択する際のポイントの1つではないでしょうか。
ここでは、前歯を小さくするための治療の費用相場をご紹介します。
- 表側矯正(全体矯正):60~100万円
- 表側矯正(部分矯正):20~50万円
- 裏側矯正(全体矯正):100~150万円
- 裏側矯正(部分矯正):40~60万円
- マウスピース矯正(全体矯正):80~100万円
- マウスピース矯正(部分矯正):10~70万円
- セラミック矯正(1本あたり):4~15万円
治療費が高額になるのは、矯正治療が自由診療だからです。
こちらはあくまでも目安ですので、別途初診料や検査費用がかかることがあります。
また、抜歯や歯を削る治療が必要なケースもありますので、総額は患者様によって異なることを押さえておきましょう。
セラミック矯正は前歯を大きく削り、セラミックの被せ物をする方法です。
前歯1本だけ気になるという場合、部分矯正よりも費用を抑えられる可能性があります。
費用や治療内容を理解したうえで、前歯を小さくする治療を受けるようにしましょう。
前歯を小さくしたい場合は信頼できる歯医者に相談
前歯が大きいと、それがコンプレックスとなる方も少なくありません。
また、歯並びが悪くなり見た目の印象に影響したり虫歯のリスクを高めたりすることもあります。
そのため、前歯を小さくしたいと希望する患者様は多いのです。
前歯を小さくしたい場合、前歯そのものが大きいケースと歯並びの悪さによって大きく見えるケースがあります。
原因によって前歯を小さくする治療方法が異なりますので、まずは歯医者に相談することをおすすめします。
その際に、実績や経験が豊富な歯医者を選びましょう。歯を削ったり抜歯をしたりすると、その歯は元に戻ることはありません。
そのようなリスクをしっかりと説明し、患者様の不安に寄り添う歯医者が、信頼できる歯医者といえます。
まとめ
今回は前歯が大きく見える原因や、前歯を小さくする方法について解説しました。
前歯そのものが大きい場合と、周囲の歯との関係で大きく見える場合があります。
いずれにしても、前歯が大きいことをコンプレックスに感じていらっしゃる方は多いです。
前歯を削れば小さくすることはできますが、歯の寿命を縮めるうえに、失われた歯が戻ってくることはありません。
このことを理解したうえで、様々な選択肢の中から最適な治療方法を選ぶようにしましょう。
納得のいく説明があり、不安を相談しやすい歯医者のもとで、前歯を小さくする治療を受けてください。