【監修:青山健一】
目 次
「歯科矯正はしたいけれど、見た目が気になる」そんな理由から、矯正治療を始めることに躊躇してしまう方は少なくありません。
マウスピースを用いるインビザラインで矯正治療を始める方が増えていることからも、治療中の見た目の問題はご本人にとって、大きな問題といえます。
そこで注目されているのが、ワイヤー治療でも目立ちにくいホワイトワイヤーです。審美的なデメリットを軽減するホワイトワイヤーについて解説していきます。
ホワイトワイヤー矯正の特徴
ホワイトワイヤー矯正は、その名の通り白いワイヤーを用いた矯正方法です。
ワイヤーを用いる矯正治療では、通常は銀色のワイヤーを使用するため、口を開けたり話したりする際に目立ちやすい特徴があります。
その点、ホワイトワイヤーは、歯の色に近い白色のワイヤーのため、口を開けたときにも目立ちにくいです。
ホワイトワイヤーを使用すると、歯の表側に矯正器具を装着しても目立ちにくく、離れた距離では矯正中だとわかりにくくなります。
矯正中の見た目が気になる方でもワイヤー治療を始めやすく、治療中の審美的なストレスを軽減してくれる器具として注目されています。
ホワイトワイヤーの種類
ホワイトワイヤーといっても、いくつか種類があり、単なる「白いワイヤー」というわけではありません。
治療中の注意点を踏まえながら、ホワイトワイヤーの種類、それぞれの違いを解説いたします。
白く塗装したワイヤー
ホワイトワイヤーのひとつが、銀色のワイヤーを白く塗装したワイヤーです。
よく目にする銀色のワイヤーは、主にニッケル・ステンレス・チタンの材質からできており、これらのワイヤーを白く塗装したものになります。
ニッケルは金属アレルギーになりやすい材質といわれているため、金属アレルギーの方は注意が必要です。
しかし、白く塗装されることで、金属面が直接口の中の粘膜に触れることがなくなるため、金属アレルギーの症状が出にくくなります。
ただし、歯みがきなどの摩擦で、塗装が剥げてしまう可能性があるため注意が必要です。
光沢のあるものやマットなタイプ、摩擦抵抗を減らすために見える部分だけ白く塗装したワイヤーなど、白く塗装したワイヤーにもさまざまな種類があります。
特殊な金属でコーティングされたワイヤー
ホワイトワイヤーには、ロジウムという特殊な白い金属でコーティングされたものもあります。
ロジウムでコーティングされたワイヤーは、白く塗装したワイヤーと比べて剥げにくく、耐久性に優れているのが特徴です。
ホワイトワイヤー矯正のメリット
ホワイトワイヤー矯正のメリットを具体的に解説していきます。
矯正装置が目立たない
ホワイトワイヤー矯正のメリットは、矯正装置が目立ちにくく見た目に影響しにくいという点です。
通常の金属のワイヤーと比べると、矯正装置をつけているのか一見わかりにくいため、人前に立つお仕事の方や見た目を気にされる方でも歯列矯正を始めやすいメリットがあります。
また、ワイヤーを固定するブラケットも白色や透明の目立ちにくいものを選ぶと、よりナチュラルで矯正装置が目立ちにくくなります。
さまざまな症状に対応可能
マウスピース型矯正のインビザラインは、矯正中の審美的な影響を与えない治療ですが、歯並びの状態によってはインビザラインでの治療が難しいこともあります。
その点、ホワイトワイヤーであれば、基本的にどんな歯並びでも対応可能です。
特に出っ歯の矯正や過蓋咬合の治療は、マウスピースを使用した矯正では難しい場合があります。
マウスピース矯正の適用が難しいさまざまな症状に対応できることも、ホワイトワイヤーのメリットです。
ホワイトワイヤー矯正のデメリット
見た目の問題を軽減してくれるホワイトワイヤーですが、デメリットがないわけではありません。メリットと併せてデメリットも把握しておくことが大切です。
塗装が剥げる
白く塗装したホワイトワイヤーを使用する場合、摩擦によって塗装が剥げてくる場合があります。塗装が剥げてきたために矯正装置が目立つようになるケースも少なくありません。
また、見た目の問題だけではなく、塗装が剥げると摩擦抵抗が生まれやすくなり、歯が動きにくくなるため、そのままにしておくと矯正治療の進み具合にも影響するため注意が必要です。
歯にかけられる力が小さい
基本的には通常のワイヤー矯正と同じように歯並びを矯正することができますが、ホワイトワイヤーは塗装の厚みがあるため、通常のワイヤーと太さが少し異なります。
そのため、通常のワイヤーよりも歯にかけられる力が小さくなる可能性があり、通常のワイヤーよりも治療に時間がかかる場合があります。
ホワイトワイヤー矯正の治療の流れ
ホワイトワイヤー矯正の治療はどのように進んでいくのか、治療の流れを具体的に解説していきます。
問診
まずは、歯並びの悩みや困っていることを問診で医師に相談しましょう。費用や期間など、矯正治療を始めるにあたって不安なことがあれば、問診の段階で医師に確認することが大切です。
もし、結婚式など大きなイベントを控えている場合は、イベントまでに治療を終えることが可能かどうかも確認しておきましょう。
検査
問診の次は、検査をします。この検査は、治療方針を具体的に決める大切な検査です。
口の中の状態や骨の状況を精密に把握するために、レントゲンや歯型の採取、横顔や口腔内の写真撮影など細かく検査をしていきます。
検査内容は歯科医や医師によって異なりますが、顎関節の検査が必要な場合はCTやMRIの検査を行うこともあります。
検査結果・治療方法の説明
検査の内容をもとに、現在の歯並びや歯の状態について医師が説明します。そのうえで、ベストな治療方法や治療期間など、今後の具体的な治療方針を医師と決めていきましょう。
具体的な治療方法が決まれば、具体的な矯正費用も決まってきます。
ホワイトワイヤーはメタルワイヤーに比べて追加料金となる場合がほとんどです。
矯正装置の種類によって、費用や治療期間に違いが発生するのか、治療を始める前にしっかり確認しておきましょう。
治療開始
具体的な治療方針が決まれば、いよいよ治療開始です。
歯の状態によっては、矯正装置を装着する前に虫歯の治療や親不知の抜歯が必要になります。また、出っ歯の矯正の場合は、小臼歯の抜歯が必要になる場合もあります。
矯正装置を装着する前に、歯みがき指導や歯のクリーニングをするケースも多いです。ワイヤー矯正は、食べ物がはさまりやすく、汚れが残りやすくなります。
そのため、矯正期間中は、虫歯や歯周病になるリスクもゼロではありません。歯みがきのポイントをしっかり医師から教わっておきましょう。
保定
いよいよ矯正装置を装着し、ワイヤーの保定です。1本1本歯の表面にブラケットを付け、ブラケットにワイヤーを装着します。
矯正治療中は、歯の動きを見ながらワイヤーの調節が必要です。
個人差はありますが、1~2ヵ月おきに通院し、ワイヤーの調整をしていきます。
この定期的な通院を怠ってしまうと、治療期間が延びてしまう可能性もあります。矯正治療を順調に進めていくためにも、定期的な調整を怠らないようにしましょう。
ホワイトワイヤー矯正以外の目立たない矯正治療
ホワイトワイヤー矯正以外にも、目立たない矯正治療があり、それぞれメリット・デメリットが異なります。
目立たない矯正治療を考えている方は、それぞれの矯正治療の特徴やメリット・デメリットを踏まえ、自分に合った治療方法を考えてみてください。
裏側矯正
裏側矯正は、歯の裏側に矯正装置を付ける治療方法です。「舌側矯正」「リンガル矯正」と呼ばれることもあります。
歯の裏側に矯正装置を装着するため、口を開けても目立たず、歯科矯正をしていることが他人から見てわかりにくいです。
目立ちやすい上側だけ裏側矯正をするハーフリンガル矯正という方法もあります。
歯の裏側に装置があるため、人によっては滑舌が悪くなる、歯みがきが難しいなどのデメリットがあります。また、通常の矯正治療よりも費用が割高になりやすいです。
マウスピース矯正
マウスピースを装着して歯並びを矯正する治療方法も、装置が目立たず他人から見て矯正中だとわかりにくい治療方法です。
アメリカのアライン・テクノロジー社で開発されたマウスピース型矯正治療のインビザラインは、目立たない歯列矯正として、日本でも人気が高まっています。
気付かれにくく簡単に取り外しができる、ワイヤーなどの装置を装着しないため口の中を清潔に保ちやすいといったメリットが特徴です。
一方で、1日20時間以上はマウスピースを装着しなければならない、歯並びの状態によってはマウスピース矯正治療ができない場合もあるなどのデメリットもあります。
ホワイトワイヤー矯正の治療は信頼できる専門医に相談しよう
ホワイトワイヤー矯正は、どんな歯並びでも対応できるワイヤー矯正のメリットをそのままに、矯正装置が目立つというデメリットをカバーした治療方法です。
矯正装置を気にするあまり、治療中の患者さまのなかには「思いっきり笑えない」「口元を気にしてしまう」という方もたくさんいます。
矯正装置が目立つというストレスが軽減されれば、治療期間中も過ごしやすくなるはずです。
ただし、ホワイトワイヤー矯正は、装置の種類によっては塗装が剥げやすい、治療の進度が遅くなるなどのデメリットもあります。
矯正治療をスムーズに進めていくためにも、信頼できる専門医に相談することが大切です。
まとめ
歯の矯正を始める際に、見た目の変化を気にされるのは当然のことだと思います。
だからこそ、矯正装置が目立つという大きなストレスが軽減されれば、1~2年という長い矯正治療期間も笑顔で過ごしやすくなるはずです。
ただし、目立ちにくさだけで安易に治療方法を選んでしまうと、思うような治療効果が得られない恐れもあります。
歯並びを矯正するベストな治療方法は、人によって異なります。
歯科医と相談しながら、ホワイトワイヤー矯正をはじめとした目立たない治療方法のなかから最適な治療方法を選んでいきましょう。