~歯科界で起こっている現実と今後起こりえる未来予想~
■2023年の1年間で起きた歯科医院の倒産、詐欺など
- 2023年1月、詐欺的な商法を行ったとして、医療法人社団「デンタルオフィスX」が患者153人から訴えられた。
- 全国に23カ所の歯科クリニックを展開していた(医)社団友伸會(豊島区)が2023年9月末、負債37億3370万円を抱えて東京地裁に民事再生法の適用を申請した。
- 医療法人社団成優会は、2023年9月30日に事業を停止し、事後処理を藤田智弘弁護士ほか1名に一任、自己破産申請の準備に入った。治療中の患者を中心に債権者は1000名を超える見込み。
■上記の事件の背景
上記の事件の3件ともすべての医院でマウスピース矯正に絡んだ事件になります。
1.のデンタルオフィスXはマウスピース矯正におけるモニター商法における詐欺
2.の(医)社団友伸會の破産もマウスピース矯正治療の急速な拡大路線による破綻
3.の(医)社団成優会の破産も多くのマウスピース矯正治療の患者さんが路頭に迷われています。
全国ニュースでも取り上げられたこれらの事件は、全てマウスピース矯正を中心に行っている医院になります。
これまで歯科医院において、全国的なニュースになるような詐欺や倒産などが少なかったのに、なぜ急にここ1年でこんなに事件が次々に起きてすべての医院でマウスピース矯正治療が絡んでいるのはなぜだろうか?
■歯科医院の時代背景
マウスピース矯正が注目されるまでは、矯正治療というのは、長年の研鑽を積んだ職人的な歯科医師だけが行える治療でした。
しかし、マウスピース矯正の出現によって、矯正治療を経験したことのない歯科医院まで矯正治療を行い始めるようになってきました。
確かにマウスピース矯正で歯は動くので、これまで矯正経験や矯正の知識の少ない歯科医師がこぞって矯正治療を行うようになってきました。
しかし、矯正経験の浅い歯科医師が行うマウスピース矯正では、きちんとしたかみ合わせまで仕上げられていないケースも増えてきて、患者さんとのトラブルも急増してきました。
マウスピースでの矯正治療は手軽に簡単に行える一方で、集客のための広告費やマウスピースの作成に外注する技工料が余分にかかることになります。
これまでの矯正治療は技術料金としての収入がほとんどでしたが、マウスピース矯正においては、広告費や技工料金の占める割合が多くなってきたので、経営的な視点がないと、矯正治療をすればするほど赤字の垂れ流しになってしまいます。
これまでは歯科技術の勉強だけしていればよかった歯科医師も、経営的な視点も持たないとやっていけない時代背景がこれらの事件と大きくかかわっています。
虫歯の治療においては、倒産しても他の医院で継続して治療していくことも可能ですが、矯正治療においては、かかりつけの歯科医院が倒産してしまうと治療費が2重にかかったり、治療方針の違いから次に歯科医院での治療を断られるケースもあります。
世の中はAIの発展などでどんどん便利になってきますが、便利になることでの副作用も必ずあります。
マウスピース矯正は簡単に始められる一方で、臨床経験の少ないクリニックでのトラブルを避けるためには、いくつかのクリニックで相談して比較検討したうえでのご決断をお勧めしています。