【監修：青山健一】
目 次
子どもの歯列矯正は顎の骨が柔らかい成長期にすれば治療期間も短く、大人になって歯並びで悩むこともなくなります。
そのため症状にもよりますが6歳から12歳前後くらいの頃に歯列矯正をすれば、大がかりな器具を付けずにマウスピースなどですむケースも少なくありません。
特に思春期に周囲にわかる矯正器具を付けることに抵抗を感じるお子さんは多いため、小児矯正では「ネオキャップ・ビムラー矯正」という画期的な治療法を使い治療します。
ネオキャップ・ビムラー矯正は痛みが少なく、装着する時間もインビザラインのように長時間ではないためお子さんの負担もあまりないです。
今回はネオキャップ・ビムラー矯正の特徴とそのメリットについて歯科医が詳しく解説します。
ネオキャップ・ビムラー矯正の特徴
ネオキャップ・ビムラー矯正は日本ではまだあまり知られていない矯正方法で、一般的な歯列矯正で使うブラケットやワイヤーを用いない画期的な治療方法です。
ネオキャップ・ビムラー矯正は国際機能矯正臨床研究会（IFOCS)より公式許可を受けている歯科医院でしか治療できません。
それではネオキャップ・ビムラー矯正の特徴について解説しましょう。
2つの装置を併用
ネオキャップ・ビムラー矯正とは「ネオキャップ」と呼ばれる取り外しができない装置と、「ビムラー」と呼ばれる取り外しのできる装置を併用します。
その特徴は一般的な歯列矯正と異なり、歯の表面に矯正装置を装着せずに歯並びを整えることです。
「ネオキャップ」は白いプラスチック製の矯正装置で、乳臼歯に装着することでお口の中で舌が動きやすい空間を作る矯正方法です。
歯は舌・頬・唇の筋肉のバランスが保たれ、舌の筋肉と頬の筋肉が活性化することで歯が適切な位置に移動し歯列が整います。
ネオキャップ・ビムラー矯正は強制的に力を加えて歯を移動させる治療ではないため痛みが最小限に抑えられるというメリットがあります。
また、お子さんの成長する力を使うことで正しい顎の位置まで移動させ、後戻りがほとんどありません。
夜だけ装着
ネオキャップ・ビムラー矯正は取り外しが可能な装置で、寝るときだけ装着するため友達に気づかれずに矯正治療が可能です。
夜寝るときだけ装着すれば自然と歯並びがよくなり、お子さんもストレスなく継続できるためブラケットと同じ効果が期待できます。
ネオキャップ・ビムラー矯正はブラケットと異なって日中は取り外したまま生活しても問題なく、食事がしにくい・歯が磨きにくいといった心配はありません。
ネオキャップ・ビムラー矯正を始めるタイミング
ネオキャップ・ビムラー矯正を始めるタイミングは乳歯と永久歯の生えかわりが終わる頃、6歳から8歳くらいで永久歯が上の前歯で2本と下の前歯で4本生える頃が目安です。
12歳から13歳くらいまでが治療に最適な期間とされていますが、症例などにより個人差があることから多少前後することもあります。
ネオキャップ・ビムラー矯正の治療期間と費用
ネオキャップ・ビムラー矯正は子どもの成長を利用した治療で、期間はだいたい4年を目安にしています。
なかなか装着しないお子さんの場合はいつまでたっても効果があらわれず治療期間が長くなる傾向があるため、親御さんが意識して声をかけてあげましょう。
ネオキャップ・ビムラー矯正の費用は検査費用が約50,000円、治療費が約450,000円～550,000円かかります。
そのほか月1回の定期検査料が約2,000円～3,000円かかると考えてください。
なお10歳以上のお子さんの場合、ネオキャップ・ビムラー矯正か、ほかの矯正治療を選択することもあります。
ネオキャップ・ビムラー矯正の費用は矯正治療の内容や期間のほか歯科医院によっても変わりますから歯科医師とよく相談しましょう。
ネオキャップ・ビムラー矯正のメリット
ワイヤー矯正などのように歯の表面に装置を装着しないため、まわりから気づかれにくいネオキャップ・ビムラー矯正にはさまざまなメリットがあります。具体的に解説していきます。
日中装着する必要がない
矯正治療というと装置を常に装着するイメージがありますが、ネオキャップ・ビムラーは夜だけで大丈夫です。
ブラケットとは異なり日中は学校や外出中に装着する必要はなく、お友達と今までどおり話したり思いっきり笑ったりもできます。
ただし、矯正期間を短くしたいなら帰宅後に装着する習慣をつけることをおすすめします。
痛みが少ない
ネオキャップ・ビムラー矯正はワイヤー矯正のような強い力で歯を移動させる治療ではありません。
歯列矯正はどうしても痛みをともなうものだと思われますが、ネオキャップ・ビムラー矯正は装着するのは数時間であり痛みが少ないため小さなお子さんにおすすめの矯正治療になります。
抜歯する可能性が低くなる
歯列矯正は抜歯が必要だといわれるケースが多いですが、ネオキャップ・ビムラー矯正ではこれまでの矯正治療とは根本的に異なるため、抜歯する必要性はほとんどありません。
お子さんの将来を考える上でも、健康な歯を抜歯しないですむのがこの治療方法のメリットといえます。
しかし、状態によっては抜歯しなければならない場合もあることだけは認識しておきましょう。
顎のバランスもよくなる
ネオキャップ・ビムラー矯正では上下の歯を一緒に治療していくため、顎のバランスだけでなく身体のバランスもよくなります。
また、指しゃぶりや舌癖が治りやすく、顎のバランスがよくなることで顔立ちが整うというメリットもあります。
虫歯のリスクが減る
ネオキャップ・ビムラー矯正は取り外しができるためお口の手入れがしやすく虫歯になりにくいです。
また、歯科医院では定期健診でもお口のチェックをしますから虫歯のリスクは低くなります。
ネオキャップ・ビムラー矯正の注意点
ここまでネオキャップ・ビムラー矯正のメリットについてみてきました。
次にネオキャップ・ビムラー矯正をする上で注意しておくべき点について解説しましょう。
対応可能な歯科医院は限られる
日本ではネオキャップ・ビムラー矯正に対応できる歯科医院はまだ少ないといえます。
ネオキャップ・ビムラー矯正は国際機能矯正臨床研究会（IFOCS)より公式許可を受けている歯科医院のみでしか治療ができません。
しかし、承認を受けるためには厳格な審査が必要であるため、承認を受けた歯科医院は最先端の矯正技術を持っている証ということになります。
ネオキャップ・ビムラー矯正を希望する場合、認可を持つ歯科医院を探さなければなりませんが、認可医院なら安心してお子さんを任せられます。
保定装置の装着が必要な場合も
ネオキャップ・ビムラー矯正は後戻りが少ない治療方法のため基本的には保定装置の装着は不要です。
しかし、症例によっては歯が元に戻ろうとすることがあり、乳歯と永久歯の生え変わりが終わる12歳から13歳以降も保定装置を入れておくケースもあります。
この場合は医師の指示に従って一定期間内は保定装置を必ず装着しておいてください。
装着時間が長いほど効果が高い
矯正措置全般にいえることですが、装着時間が長ければ長いほど歯の移動は早くなり治療も短時間ですみます。
しかし、取り外しができるネオキャップ・ビムラー矯正の場合、装着し忘れて寝る習慣が度重なると
歯並びはよくなりません。
ネオキャップ・ビムラー矯正には親の協力も大切
お子さんの成長期を利用したネオキャップ・ビムラー矯正は治療期間が限られています。
期間が長引けば費用もかかり、ワイヤー矯正など別の治療方法を選択しなければならなくなる可能性もあります。
装着する習慣がつくまで就寝前に親御さんがお子さんにネオキャップ・ビムラーを装着したかどうか確認するようにしましょう。
お子さんの矯正治療には親御さんの協力も不可欠です。
ネオキャップ・ビムラー矯正を検討しているなら
従来の歯列矯正ではワイヤーを直接歯に装着して歯を強制的に移動させる治療が一般的です。この治療では審美的な問題や痛みなどから矯正を嫌がるお子さんも少なくありません。
ネオキャップ・ビムラー矯正は強制的に歯を移動させる治療ではないため痛みも少ないです。
寝ている間だけ装着するだけで矯正ができるという画期的な方法で、抜歯の必要もほとんどありません。
やはり健康な歯を抜歯するのは誰でも躊躇するのではないでしょうか。矯正治療の大きな課題は抜歯と痛みといっても過言ではありません。
ネオキャップ・ビムラー矯正はこれらの課題を克服し、上下の顎のバランスが整えられることで顔立ちも綺麗にしてくれます。
ただし、ネオキャップ・ビムラー矯正は国際機能矯正臨床研究会（IFOCS)に承認された歯科医院しかできません。
先ずはホームページでお近くの歯科医院で対応できるところがないか探してみましょう。
口コミや親しい人から情報などを集めて信頼できる歯科医院を受診してみてください。カウンセリングだけなら無料で行っている歯科医院があります。
そこで不安や疑問を全て話しましょう。それでも払拭できない場合はセカンドオピニオンがおすすめです。
1ヶ所だけで判断せずに複数の歯科医院を受診してみましょう。また、矯正治療は時間がかかるためお子さんと歯科医師の相性や通院時間なども大切です。
まとめ
ネオキャップ・ビムラー矯正の特徴とそのメリットについて解説してきました。
歯列矯正を行うなら骨格がまだ柔らかい成長期のお子さんにおすすめです。
矯正歯科治療の技術は進歩しネオキャップ・ビムラー矯正であれば、小学生から痛みやストレスもなく誰にも知られずに矯正ができます。
しかし、ネオキャップ・ビムラー矯正は歯列矯正ができる歯科医なら誰でもできるわけではなく、国際機能矯正臨床研究会（IFOCS)に承認された歯科医院だけです。
ネオキャップ・ビムラー矯正はお子さんが治療するにあたって適齢であっても歯の状態によっては対応できない可能性もあります。
また、ネオキャップ・ビムラー矯正にはお子さんだけでなく親御さんの協力も欠かせません。
お子さんの歯列に関心を持ち、お子さんの明るい未来を実現するためにもネオキャップ・ビムラー矯正をご検討ください。
1965年 広島県呉市生まれ
