【監修:青山健一】
目 次
「我が子の乳歯が斜めに生えてきた」という声を保護者の方から聞くことは多いです。
正常に生えてこないと「子どもの成長や将来に悪影響が出るのではないか…」と心配になるお気持ちはよくわかります。
今回は乳歯が斜めに生えてきた際の不安を解消するため、乳歯の生え方の特徴から治療をすべき状態の紹介まで詳しくご説明します。
乳歯が斜めに生えてきて心配になる親は多い?
結論から申し上げますと、お子さんの乳歯が斜めに生えてくることを心配される保護者の方の声は多いです。
噛み合わせなどの身体に与える影響や歯並びが悪いことに対する見た目への影響など、やはりお子さんの将来を考えると不安になってしまいます。
乳歯の生え方の特徴
乳歯は個人差はあるものの生後6ヵ月から9ヵ月の頃に生え始め、3歳になるまでには大体全てが生え揃います。
乳歯の生え方は下記の順番で20本生えてきます。
「下の前歯2本→上の前歯2本→生えた歯の両隣に上下2本ずつ→奥歯(第1乳臼歯)が4本→乳犬歯(前歯と奥歯の間)→奥歯(第2乳臼歯)」
中には順番が前後する方もいますが、基本的にはこの順番です。お気づきの方もいると思いますが、奥歯(臼歯)は2段階に生えてきます。
稀に20本全てが生えてこないという方も1~2%の確率でいます。これは先天欠如(せんてんけつじょ)と呼ばれる状態です。
ただし、乳歯が足りないからといって必ずしも永久歯の本数も足りないとは限りません。心配な方は生え変わり始めた頃に一度歯科医で診てもらうとよいです。
乳歯にまつわる不安
実際に保護者の方から多い乳歯にまつわる不安についてご紹介します。
「我が子だけがこんな状態なのかな…」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、意外と同じ悩みを抱えている方は多いです。
斜めに生えている
最も保護者の方から多い不安は乳歯が「斜め」に生えているという声です。真っ直ぐ生えてくるはずの乳歯が前後左右に傾いていると不安になる気持ちもわかります。
しかし乳歯は抜けて後に永久歯へ生え変わるため、現在は斜めの状態でも生活に支障がなければ問題ないことがほとんどです。
隙間がある
乳歯自体は真っ直ぐ生えているけれど、歯と歯の間に「隙間」があるという悩みもよく耳にします。
私たちの永久歯は通常隣の歯とくっつき合っているため、スカスカの歯を見ると不安になってしまうかもしれません。
しかし、乳歯期における歯の隙間は心配ないことがほとんどです。寧ろ多少の隙間がある方が将来的にはよいこともあります。
永久歯は一般的に乳歯よりも大きいため、綺麗に並んだ乳歯のスペースでは永久歯が生えるにはやや狭い場合があるからです。
乳歯の間に隙間があると、乳歯1本分にプラスして元々存在した隙間分の余裕ができるため、何も障害なく永久歯が生えてこられるのです。
乳歯が抜ける前に永久歯が生えてきた
保護者の中には乳歯が抜ける前に永久歯が生えてきたという悩みを持つ方もいます。
本来乳歯は歯根部分が自然と溶かされて乳歯がグラグラし始め、最後には抜けていく仕組みになっています。
しかし、中には歯根の溶解が完全にできていない状態でしたから永久歯が生えてきてしまう場合があるのです。
この現象は決して珍しいことではありませんが、もし残っている乳歯が永久歯の生え変わりを邪魔してしまっている場合は歯科医で乳歯を抜歯してもらう方がよいです。
乳歯が残っているところへ永久歯が無理に生えてくると、最終的に歯並びが悪くなってしまう恐れがあります。
斜めに生えた乳歯は歯並びに影響する?
乳歯にまつわる悩みをご説明した後は、その状態を放置すると歯並びに影響があるのかについてお話していきます。
多くの場合は問題がない
上記でも述べた乳歯が斜めに生えてくる、あるいは乳歯の間の隙間があるという状態は多くの場合問題はありません。
これらの状態が永久歯であれば話は別ですが、乳歯の場合は後に生え変わることで同じ歯並びになるとは限らないためです。
永久歯が生え揃うまで様子を見る
斜めに生えた乳歯は特に生活へ支障がなければ、そのまま永久歯が生え揃うまで様子を見る場合が多いです。
乳歯列期はスカスカあるいはガタガタでも、永久歯に生え変わると綺麗に生え揃うという方もいらっしゃいます。
逆に乳歯列期は綺麗に並んでいても、生え変わるとガタガタになってしまったという方ももちろんいます。
このように乳歯の生え方から永久歯の生え方を予測することは難しいため、様子を見るという選択が取られることが多いのです。
治療が必要なケースもある
乳歯列期に歯並びが悪くてもほとんど問題ないことが多いとお話しましたが、中にはすぐに治療を行った方がよいケースもあります。
詳しくは下記で述べていますが、それは噛み合わせや口まわりの骨格に問題がある場合です。特に噛み合わせの問題は後に影響することが多いため早めの対処が必要になります。
乳歯列期で治療すべき歯並びは?
斜めに生えた乳歯は多くの場合問題がなく、一般的な治療は永久歯が生え揃うのを待つとお伝えしました。
では逆に乳歯列期の段階から、すぐに治療が必要な歯並びとはどのような場合を指すのか、具体的な状態を挙げてご説明します。
乳歯列期に治療が必要なのは、大人では改善が難しくなる状態や時間が経過することで大きな悪影響に繋がる場合に行われます。
大人になってからでは困難な治療でも子どもの場合は骨が柔らかく完成していないため、比較的容易に行えることが多いです。
受け口
受け口(うけぐち)とは正式には「下顎前突症(かがくぜんとつしょう)」や「反対咬合(はんたいこうごう)」と呼ばれ、下顎が上顎よりも前に出ている状態をいいます。
下顎が前にあると上手く上下の歯を噛み合わせることができず、食べ物を噛むことや発音することが難しいです。
さらに受け口の状態を長く放置しておくと、無理な力がかかることで歯が欠けたり、削れことや歯肉が下がってしまい歯がグラグラすることもあります。
早めに治療を行うことで歯へのダメージを最小限に抑え、後々生じる可能性のあるダメージをなくすことができるのです。
開咬
受け口と同様に噛み合わせの不良の一つである開咬(かいこう)は、奥歯からしっかり噛み合わせたときに上下の前歯に隙間ができてしまう状態をいいます。
開咬は別名「オープンバイト」とも呼びます。開咬は指しゃぶりや舌を前歯で噛むような癖がある方で生じやすい状態です。
開咬の場合口が閉じにくくなり口呼吸を助長してしまうことや無意識に口が開いた状態が増えるため、口腔内の雑菌が繁殖しやすくなります。
また本来ないはずの隙間があるため、出したい言葉が出せないといった滑舌への影響も考えられます。
出っ歯
出っ歯(でっぱ)は前歯が歯または歯茎から通常よりも前に突き出た状態をいいます。専門的には上顎前突(じょうがくぜんとつ)と呼ばれます。
前歯が突き出ていると開咬同様に口が閉じられず、口呼吸の原因です。
また通常よりも歯が前にあることで、何かの拍子で口元へ物がぶつかった際に歯が折れたり、唇が切れる可能性が高くなります。
出っ歯は指しゃぶりや舌で歯を押す癖などの生活習慣が原因になることも多いため、お子さんの様子を見て癖を止めさせることも出っ歯予防に効果的です。
交叉咬合
交叉咬合(こうさこうごう)とは開咬とは逆に奥歯に問題がある状態で、正しい噛み合わせより少し左右または前後にズレて噛み合わせていることを意味します。
交叉咬合の場合奥歯から噛み合わせがズレているため、より歯から顎への負担が大きくなります。
また歯並びだけでなく、顎の変形や関節異常などの危険性も潜んでいるため、早めの治療がおすすめです。
乳歯列期に行う矯正治療の種類
乳歯列期に行う矯正は歯並びを正す治療よりも噛み合わせなどの骨格矯正が主になります。上記でも述べたように乳歯が永久歯に生え変わることで歯並びは変化するためです。
特に子どもは骨格がまだ完全に安定していないため、大人では動かせない顎の矯正が行えます。
例えば、ムーシールドと呼ばれる透明な硬いゴムのような素材でできたマウスピースを上の歯に被せる治療があります。主に乳歯が生え揃う3歳前後に行われることが多いです。
寝ているときだけ装着すればよいため、比較的お子さんへの負担が少ない治療方法です。
このムーシールドを嵌めて寝ると正しい噛み合わせを促してくれるため、受け口などの噛み合わせの問題を改善してくれます。
また舌を乗せられる空間が設けられており、そこに舌を置くことで無意識に歯を舌で押してしまうことを予防するとともに、正しい舌の位置を覚えることが可能です。
一方「床矯正」と呼ばれる歯が並ぶスペースを作る矯正も行われる場合があります。
こちらはムーシールドよりも少し遅く、生え変わりが始まる少し前から数本生え変わり始めた頃に行われるのが一般的です。
出っ歯の原因には生活習慣の他に顎が小さく、歯が並ぶスペースがないことが原因の場合もあります。
その場合はスペースを作るために床矯正で空間を広げるか、抜歯をして空けなければなりません。
床矯正は大人になってもできる治療ですが、骨格が柔らかい子どもの頃に行う方がより負担を減らせます。
乳歯列の矯正にもさまざまな方法があります。いろんな専門家から意見を聞くのも一つの方法です。
すぐに治療を開始する必要はないため、まずは相談だけでも検討してみてはいかがでしょうか。無料相談をご希望の方は下のボタンをクリックしてください。
斜めに生えた乳歯や歯並びが不安なときは
永久歯が生え揃うまで待つ方がよい場合と、乳歯列期に治療した方がよい場合があることをご説明しましたが、ご自身で判断するのは難しいです。
もしお子さんの乳歯が斜めに生えてきて、将来への影響に不安を感じた際には専門家に診てもらうことをおすすめします。
一度診てもらうことで保護者の方自身も安心できますし、何より治療が必要な場合により早く対処できます。
不安なことがありましたら、些細なことでもぜひご相談ください。無料相談をご希望の方は下のリンクをクリックしてください。
まとめ
今回は乳歯の生え方から、もし斜めに生えてきた場合の状況に応じた対応方法に至るまでをご紹介してきました。
保護者の方がお子さんの将来を考えて不安になることはごく自然なことです。少しでも不安を感じた際は抱え込まずに、ご相談ください。
お子さんの健やかな成長と、丈夫で健康な歯を得られますように。