【監修:青山健一】
目 次
矯正治療は骨が柔らかい子どもが行うものというイメージがありましたが、最近は大人も矯正治療を受けています。
子どもは大人が選んだ方法でしか治療できません。
一方大人は自分自身で選択権を握っているにもかかわらず、矯正治療で「後悔」する方が少なくないのです。
大人の矯正治療でよくある誤解や後悔と、後悔を避けるポイントをご紹介します。
大人の矯正でよくあること
大人は多くの情報収集ツールを持ち、子どもよりも広い人間関係を構築しています。
歯科矯正を検討するにあたり、ありとあらゆる情報が手に入る状況です。
これはメリットであり、デメリットでもあります。
歯の状態には個人差があり、同じ治療を行っても同じ結果が得られるとは限りません。
聞こえの良い情報だけを信じて思うような矯正ができなかったり、失敗談だけを見て過度に不安を覚えたりするのは大人の矯正でよくあることです。
まずは「大人の矯正はこうだ」という思い込み・誤解を取り除き、満足度の高い矯正治療を受けましょう。
大人の矯正に多い誤解
大人の矯正では、年齢についての誤解が多く見受けられます。
矯正治療は子どもが受けるものであり、骨が成長しきった大人は矯正できないといった思い込みです。
しかし実際は歯と歯茎が健康であれば年齢は関係ありません。
毎日仕事で忙しい大人に特有なのが時間にまつわる誤解です。
治療前の検査は当然必要ですが、矯正装置を装着して治療開始となれば月1回の通院に落ち着きます。
そのため仕事しながらの歯列矯正は可能ですし、よほどのことがない限り何日も休暇を取る必要はありません。
こういった誤解から、歯列矯正によるメリットが受けられない大人が多くいるのが実情です。
大人の矯正のメリット
大人になってからの歯列矯正には、大人ならではの悩みを軽減するメリットがあります。
見た目の良さはもちろんのこと、健康維持にもつながるのが大人の矯正治療です。
第一印象が良くなる
歯並びが整うと見た目の印象が良くなります。
歯列が美しくなるだけでなく、歯並びによってバランスを崩していた口元の形が整うのも大きなメリットです。
たとえば他の前歯と重なるように生えている八重歯を矯正すると、口元の印象が大きく変わる方がいます。
また人前で思い切り笑うことができ、笑顔の時間が増えるでしょう。
対人関係が幅広い大人は、仕事でもプライベートでも日々多くの人と接しています。
いつも笑顔で思い切り笑う人には好印象を抱くはずです。
虫歯や歯周病になりにくくなる
口腔内の健康が維持しやすくなるのも大きなメリットです。
歯並びが悪いと歯と歯が重なり合った部分に磨き残しが生じやすく、蓄積した汚れは虫歯や歯周病の原因になります。
またこうした口腔内トラブルは口臭の発生源にもなるため、場合によっては対人関係にも影響するでしょう。
歯科矯正で歯列が整えば、口腔内を清潔に保つことができます。
また虫歯の痛みによって日常生活に支障をきたす心配もありません。
噛み合わせが改善する
歯列矯正で歯並びが整うと、上下の歯がうまく噛み合うようになります。
噛み合わせが悪いとどうしても噛みやすい場所で物を噛んでしまい、顔の骨格が歪みがちです。
噛み合わせを改善すると口の中をバランスよく使うようになり、顔のパーツが左右対称に近付きます。
年齢とともに下がり気味になる頬やフェイスラインがスッキリするのも、大人の矯正ならではのメリットです。
胃腸への負担減少につながる
噛み合わせが改善すると上下の歯で食べ物をしっかりすり潰せるようになるため、消化が良くなります。
食事をするといつも胃がもたれる方や、便秘や下痢を繰り返している方は、矯正治療によってその症状が軽減するかもしれません。
大人の矯正のデメリット
多くのメリットがある大人の歯科矯正ですが、当然デメリットも存在します。
しかし必ずしも全ての方にとってデメリットになるとは限りません。
ご自身の歯の状態や生活スタイルと照らし合わせてみてください。
時間がかかる
何十年もその場所で安定している歯を動かす治療ですから、当然時間がかかります。
歯科矯正では人間の体の修復機能を利用して歯を動かすため、代謝が低い大人は子どもよりも治療に時間がかかる傾向です。
抜歯や歯を削る処置をすれば期間短縮も可能ですが、健康な歯を失うことになるため抜歯せずに矯正するケースが多くなっています。
抜歯なしの矯正治療は1~3年程度かかるのが一般的です。
その間は月1回程度、矯正歯科に通院することになります。
話しにくくなる場合も
矯正器具を装着していると、話しにくさ・しゃべりにくさを感じる方がいます。
特に歯の裏側に矯正器具を付けて治療する場合です。
人間は発語する際に舌と歯を使いますが、さ行・た行など舌を歯の裏につけて音を出すときに不便さを感じることがあります。
また仕事で英語をよく使う場合、矯正開始直後は発音しにくいかもしれません。
とはいえ数週間ほどで慣れてきますので心配ありません。
大人の矯正で後悔するパターン
大人の矯正における後悔は大きく2つのパターンに分かれます。
1つ目は「もっと早く治療を始めるべきだった」、2つ目は「治療前にじっくり話を聞くべきだった」というものです。
1件の矯正歯科に「治療しない方がいい」と言われ、治療を断念する方がいます。
しかし数年後、別の歯科医は治療できると言った。このようなやり取りはよくあることです。
また自分が想像した仕上がりにならなかったり、思った以上にケアしにくかったり、通院が億劫になる方もいます。
こうした後悔を防ぐために必要なのは複数の矯正歯科に相談すること、そしてじっくり話を聞き疑問点を解決することです。
大人の矯正で後悔しないための3つのポイント
矯正治療で後悔しないために知っておきたいポイントが3つあります。
どれも基本的なことだからこそ見落としがちです。
また子どもの矯正は大人が管理しますが、大人の矯正は自分で管理しなければなりません。
ちょっとした気の緩みが後悔につながる可能性もあるため注意しましょう。
様々な選択肢を説明してもらう
まずは歯科医師に相談して検査を受けたうえで、どういった選択肢があるのか確認しましょう。
どういう方法が適しているか、と質問すると歯科医師が得意としている治療方法のみ提示される可能性があります。
選択肢を提示してもらってください。
またそれぞれの治療方法にどういったメリット・デメリットがあるか確認します。
難しい言葉が並ぶと質問しにくいかもしれませんが、分からないことは分かるまで質問しましょう。
さらに、別の矯正歯科にも相談して同じように選択肢を提示してもらうことが重要です。
選択肢が多すぎて選べない場合でも、複数の医師の意見を総合していくとベストな治療方針が見えてきます。
1回の治療で治し切る
矯正治療を開始したら、中断せずに治しきりましょう。
転居して通院できなくなる方、就職・結婚・出産などで生活が変わった方が治療を中断するケースがあります。
治療を中断した場合、動き始めた歯はそこで止まってくれません。
治療によって歯が動きやすくなっているため元に戻ろうとしたり、歯並びが乱れたりするのです。
この状態で治療再開はできず、もう一度検査して矯正器具の調整を行う必要があるでしょう。
治療が振り出しに戻るケースも少なくありません。その場合は当然治療費が上乗せになります。
数年後までに生活が大きく変わる可能性がある場合、治療開始時期をずらすことも検討しましょう。
系列の歯科で継続治療ができないか相談してみるのも一つの方法です。
定期的なチェックを受ける
矯正治療で定期的な診察は欠かせません。
矯正装置によって歯が動き始めたら、それに合わせて装置を調整しなければ矯正に時間がかかってしまいます。
また自分では気付かない矯正装置の破損や、虫歯・歯肉炎の確認も重要です。
矯正中に虫歯が進行すると、場合によっては矯正治療の中断を余儀なくされます。
矯正歯科の選び方
情報過多になりがちな大人は、目に飛び込んでくる情報だけで矯正歯科を選んでしまうことが少なくありません。
どの歯科を選ぶかは自由であり、決定権はご自身にあります。
しかし後悔につながらないよう、矯正歯科は慎重に選びましょう。
特に以下3点には十分留意してください。
低価格・短期間には注意する
治療費が高く治療期間が長くかかる矯正治療では、治療費の安さと短期間治療は患者様にとって大きなメリットです。
そのため安い・早いをアピールする矯正歯科が数多くあります。
しかし矯正治療は人間が備え持つ修復力を使った治療法ですから、そのスピードを格段に上げることは難しいはずです。
また近年矯正治療が身近なものになった背景には、シミュレーション技術の進歩があります。
歯の動きはある程度予測できても「絶対」はありません。
それを限りなく「絶対」に近付けるために緻密なシミュレーションを行い、治療方針を決めているのです。
精密検査機器とシミュレーションシステム、それを見る目と時間を考えれば破格値の矯正治療は難しいでしょう。
とはいえ、安かろう悪かろうとは限りません。
歯科医師の話を聞いた上で、安い・早いに納得できるかどうかが重要です。
まとめ
大人ならではの矯正の後悔を避けるには、複数の歯科医師への相談が欠かせません。
歯や歯茎の状態を確認してもらったうえで同じ内容の質問をして、回答を見比べてください。
説明が分かりやすく、歯科矯正でこの先の人生をより良いものにしたいという気持ちが見える歯科医師を探しましょう。