【監修:青山健一】
目 次
歯列矯正をするにあたって、親知らずを抜くべきかどうか悩む人は多いです。
人によっては横向きに生えたり歯茎に埋もれていたりと、歯みがきがしにくく炎症が起きることも少なくありません。
トラブルが多い歯としてもよく知られる親知らずですが、抜歯はすべきなのでしょうか。
抜歯すべきかどうか親知らずが歯並びに与える影響について解説いたします。
親知らずは歯並びに影響するのか?
一般的に親知らずは、ほかの歯が生え揃ってから生えます。また、ほかの歯と比べて大きな歯です。
そのため、親知らずが生えてくる角度によっては、隣接した歯にぶつかったり押し出すような力が加わったりする可能性があります。
一番奥に位置する親知らずがほかの歯を前に押し出すように生えれば、歯並びがガタガタになる・歯並びのアーチが前に出るなどの恐れがあります。
親知らずは、必ずしも歯並びに影響を与えるとは言いきれません。しかし、他の歯に影響を与えないとも言いきれないのも事実です。
大人になってから急に歯並びに変化が生じた場合は、親知らずの影響を疑う必要性があります。
親知らずの概要
親知らずは一番奥に生えてくる奥歯のことです。20歳前後に生えてくることが多く、永久歯のなかで一番最後に生えてきます。
親に知られることなく生えてくることが「親知らず」の名前の由来だといわれています。
親知らずは上顎・下顎にそれぞれ左右で1本ずつ、合計4本です。
しかし、親知らずの有無、本数には個人差があり、もともと親知らずがない人もいれば、4本揃ってない人もいます。
親知らずは一番奥に位置する歯のため、磨き残しが起きやすく、虫歯や歯周病になるリスクが高い歯です。
また、歯肉が部分的に被さったままになる人も少なくなく、こうした親知らずは炎症が起きやすくなります。
歯のなかでもトラブルが起きやすい歯であるため、親知らずがある場合は虫歯や歯周病などの注意が必要です。
親知らずの抜歯が必要なケース
親知らずは抜歯する人も多く、それゆえ「抜歯すべき歯」というイメージも根強くあります。
しかし、親知らずの抜歯は決して簡単なものではありませんし、抜歯のリスクもあります。そのため、必ずしも抜歯すべきとはいえません。
一方で、親知らずが口の中の衛生状態や歯並びに悪影響を及ぼすようであれば、抜歯した方がよいといえます。
親知らずの抜歯が必要なケースについて解説いたします。
横向き・斜めに生えている
親知らずが横向き・斜めに生えている場合は、ほかの歯に悪影響を与える可能性が高いです。
横向き・斜めに生えることで隣接する歯にぶつかり、痛みや炎症を起こす場合があります。
また、親知らずが横向きに埋まっている場合、手前の第二大臼歯の根っこが溶かされるように吸収されてしまうことも少なくありません。
歯茎に完全に埋もれていて親知らずの存在が目でわからない状態でも、横向き・斜めに生えていれば歯並びに影響を及ぼす可能性があります。
横向き・斜めの親知らずは、悪影響を及ぼす前に抜歯を検討すべきといえます。
萌出が一部のみ
親知らずが部分的に見え、歯茎が部分的に被さっているような場合も、抜歯が必要なケースです。
萌出が一部のみの親知らずは、汚れが溜まりやすく不衛生になりやすいです。そのため、歯茎の炎症が起きたり虫歯になったりするリスクが高くなります。
腫れや痛みが生じやすい生え方ともいえますし、大きなトラブルになる前に抜歯を検討しましょう。
埋没している
親知らずが完全に歯茎に埋没している状態を完全埋没智歯といいます。
完全埋没智歯は、目で親知らずの存在を確認することができませんし、痛みや腫れなどがなければ親知らずの存在に気付きません。
一見トラブルがなく抜歯の必要がないように思えますが、歯茎に埋没している親知らずは、骨が溶けだしたり腫瘍になったりする恐れがあります。
また、歯茎に埋もれている状態で真横に生える親知らずを水平埋没智歯といいます。
水平埋没智歯は、歯並びや噛み合わせに影響を与える可能性が高いです。また、顎関節の痛みにつながる可能性もあります。
完全埋没智歯も水平埋没智歯も抜歯すべきケースといえます。
親知らずの抜歯が不要なケース
親知らずは生え方によって抜歯すべきといえますが、状態によっては抜歯が不要なケースもあります。
抜歯しなくてもよい親知らずとはどんな状態なのかチェックしておきましょう。
親知らずの周囲にトラブルがない
親知らずがまっすぐ生えていて、周囲に虫歯や歯肉炎などのトラブルがない場合も抜歯は不要です。
親知らずの周囲にトラブルがないということは、親知らずが問題なく生えていて、歯みがきもちゃんとできている状態といえます。
ただし、磨き残ししやすい部分であるため、引き続き注意して親知らずを清潔に保つように心がけましょう。
歯並びに影響していない
まっすぐ生えていて歯並びに影響していないようであれば、親知らずを抜歯する必要はない場合もあります。
また、矯正治療によって、親知らずを正しい位置に動かすことができる場合も、抜歯の必要はないといえます。
親知らずの生える方向が悪くても、歯列矯正で正しい方向に治すことができる場合は、親知らずを抜かずにそのまま残すことも可能です。
歯列矯正を検討している方で親知らずを抜きたくないという場合は、歯列矯正で治すことができるのか専門医に確認してもらいましょう。
無料の矯正相談では、親知らずの悩みについても相談することができます。気になる方は下記のボタンからご予約ください。
親知らずが影響するトラブル
トラブルが多い歯といわれる親知らずですが、具体的にどんなトラブルを引き起こすのでしょうか。
親知らずが影響するトラブルについて解説いたします。
歯肉炎
親知らずが影響するトラブルのひとつが歯肉炎です。特に萌出が一部分の親知らずは、歯肉炎が発症するリスクが高いため注意しましょう。
部分的に歯茎が被さっている親知らずは、歯と歯肉の隙間に食べカスや細菌が残りやすい状態です。そのため細菌が繁殖しやすく、歯肉炎となります。
歯肉炎の炎症が広がると歯茎が腫れるだけではなく、口臭・痛み・頬が腫れるなどの症状が見られる場合もあります。
炎症を放置しておくと、最悪の場合炎症が顎や喉など広範囲に広がる恐れがあり注意が必要です。
歯肉炎が見られる場合は、早めに医師の診察を受けましょう。
磨き残しによる虫歯
親知らずは、磨き残しが多い歯のひとつです。そのため、虫歯になりやすい歯でもあります。
虫歯は自然に治るものではありません。放置しておくと、痛みや腫れがひどくなる恐れがあります。
また、虫歯を放置することで細菌感染が広がると、副鼻腔炎などほかの病気を引き起こす可能性もあります。
口臭が気になったり神経が壊死したりする可能性もあるため、虫歯の可能性がある場合も早めに歯科医に相談しましょう。
矯正前に親知らずを抜歯するメリット
歯列矯正をする場合、矯正前に親知らずを抜いたほうがよいといわれることが多いです。
なぜ矯正前に親知らずを抜いたほうがいいのか、矯正前に抜歯するメリットについて知っておきましょう。
後方移動しやすくなる
矯正前に親知らずを抜歯すると、親知らず分のスペースができます。口の中のスペースができることで、歯は後方移動しやすくなります。
前に出ている歯を引っ込めたいといった歯列矯正の場合、歯並びのアーチが後方に動きやすくなることで矯正治療がスムーズに進みます。
親知らずは、歯を後方移動する際の妨げになりやすいです。横向き・斜めに生えている親知らずが歯の動きを邪魔する場合もあります。
歯が思うように動かないと治療期間も長引きます。親知らずが歯列矯正の妨げになると判断できる場合は、矯正前の抜歯がおすすめです。
後戻りのリスク軽減
親知らずが矯正後の歯並びに影響を与えたり後戻りの原因になったりするケースもあります。
せっかく歯列矯正で歯並びをきれいにしたのに後戻りしてしまうのは、患者様にとって悲しいことですし避けたい事例です。
矯正治療後の歯はまだ動きやすく、元の位置に戻ろうとします。
後戻りの原因のすべてが親知らずというわけではありません。しかし、親知らずがほかの歯を押すことで後戻りしやすくなる恐れがあります。
矯正前の親知らずの抜歯は、後戻りのリスク軽減にもつながります。
親知らずと歯並びの関係で悩んだら
親知らずの状態は個人差があり、人によってさまざまです。そのため、親知らずが歯並びに与える影響もひとりひとり異なります。
抜歯が必要なのか不要なのかも人によって異なりますから、適切に対処するためには専門医に診てもらうことが大切です。
特に親知らずと歯並びの関係に悩んでいる場合は、矯正の専門医に相談しましょう。下記のボタンから無料の矯正相談が利用できます。
まとめ
親知らずは存在そのものが悪というわけではありません。
しかし、まっすぐ生えてこない場合も多く、トラブルの原因となりやすい歯であることも事実です。
お口の中の健康を保ち、きれいな歯並びを守るためには、親知らずの状態に適した処置が必要です。
親知らずが気になる場合は、放置せず早めに歯科医に相談しましょう。