【監修:青山健一】
目 次
歯列矯正で使用されるパラタルバーを、使ったことはないけど見たことはあるという人も多くいます。
しかし、パラタルバーの効果を知っているかと聞かれると、あまり知らないという人も多いものです。
口の中に入れるものであるため、気になっているけど詳しくわからない、となるとなかなか試してみようという気にはなれません。
とはいえ、パラタルバーは、歯列矯正の際に用いることの多い装置です。歯列矯正を考えているのであれば、パラタルバーのことを知っておくことが大切です。
今回の記事では、パラタルバーの特徴や詳しい効果から、デメリットや装着時のトラブルまで詳しく紹介します。
パラタルバーの特徴
パラタルバーの特徴は、その形状にあります。太い針金で作られた装置であり、アーチ状になっています。
口腔内でもとくに歯の内側に装着するものであり、使用していることは外側からは見えづらい装置です。
そのため、ブラケットなどと違って装着していることが見ただけではなかなかわかりません。
パラタルバーは上顎に装着する場合や下顎に装着する場合などがあり、それぞれパラタルプレート、リンガルバーなど呼び名が違ってきます。
一般的にパラタルバーと呼ばれるのは、上顎に装着する場合です。
パラタルバーの効果
パラタルバーを装着することによって、どのような効果があるのかを知っておくことが重要です。
歯列矯正の際に用いられることの多い装置のため、とくに歯列矯正を考えているのであれば効果を知っておくことで、装着するかどうかを決めることもできます。
パラタルバーの効果をよく理解することで、装着に対する不安感も薄れてストレスも軽減できます。
奥歯に対して効果のみられる装置であるため、歯科医師と相談して必要であればぜひ試してみてください。
固定源の強化
歯列矯正を行う際に、歯を動かすためには固定源が必要になります。
固定源の喪失や移動を防ぎ、保護するための効果がパラタルバーにはあります。
基本的には奥歯に装着して、奥歯を固定源として保護するのがパラタルバーの効果です。また、固定をより強化することも、重要な効果の一つです。
奥歯が前方に移動するのを防ぐ
パラタルバーは、奥歯が前方に移動することを防ぐ目的があります。
前歯を歯列矯正する際に、小臼歯を抜歯することがあることを理解しておくことが重要です。
その場合、奥歯をそのままにしておくと奥歯が前に移動してしまうことがあるために、そのようなことにならないように固定することが必要です。
パラタルバーを装着することで、奥歯が前に移動しないように固定することができます。
奥歯が前に行かないように固定することで、うまく歯列矯正ができるため歯科医師に勧められたら、検討してみてください。
奥歯の捻れ・幅をコントロール
パラタルバーには、奥歯のねじれ・幅をコントロールする効果もあります。
つまり、パラタルバーが装着されている歯の向きを変えることができるわけです。歯の向きを正常にすることで、噛み合わせを正常な状態にすることができます。
パラタルバーを使用して奥歯の噛み合わせがうまくいくことで、前歯の噛み合わせも矯正される場合があるため、おすすめです。
そのほか、幅を拡大させることもできるため、歯列矯正の際に非常に役立つ効果を備えている装置です。
奥歯を圧下させる
パラタルバーの効果には、奥歯を圧下させるというものがあります。
歯を歯茎の側に入れるようにする動きを圧下といい、食べ物を飲み込むという動きを利用して奥歯の圧下を行います。
食べ物を飲み込む動きを利用しているため、どうしても舌に違和感を感じたり、食べ物をうまく呑み込めなくなったりということがあるのは仕方ありません。
しかし、そういったトラブルは装着しているうちに慣れてくるため心配はいりません。
パラタルバーを装着したときに歯肉から少し隙間がありますが、それも圧下させるために必要な隙間です。
パラタルバーは固定源の強化に必要
パラタルバーは、固定源の強化に必要な装置です。
固定源を強化することで、うまく前歯の歯列矯正ができるようになります。
そのため、歯列矯正の際にはパラタルバーを用いることが多くあります。固定源は保護することが重要です。
また、強化することで前歯を動かすときに奥歯が前に行くことがなくなるため、歯列矯正の際にせっかく抜歯などで開けたスペースが埋まる心配をしなくてもよくなります。
パラタルバーのデメリットは?
パラタルバーを装着するときには、メリットばかりではなくデメリットもあります。
はじめて装着するというときには、本当につけて大丈夫なのか、デメリットはないのかなどといったことが気になってくるのも当然です。
どのようなデメリットがあるのかを事前に知っておくことで、装着時の不安が解消されます。
パラタルバーを装着する前に、どのようなデメリットがあるのかを理解しておいてください。
痛み
パラタルバーを装着すると、痛みがあります。もちろん個人差があるために、全員が痛みを感じるわけではありません。
とはいえ、痛みがあるといわれると、なかなか装着する気にはなれないのも仕方のないことです。
しかし、パラタルバー装着時にどのような環境で痛みが出るのかを知っておくことで、装着前に感じる不安を軽減することができます。
パラタルバーを装着することで感じる痛みの原因の一つは、歯が動き始めたことです。
歯を動かすというのは、元あった位置から無理やり移動させるということであり、当然いくらかの痛みを伴います。
もう一つの原因は、パラタルバーが口腔内にこすれてしまい、傷がつくためです。
また、傷だけでなく炎症を起こして口内炎ができることもあるため、もしも傷や口内炎ができたら歯科医師に相談してみてください。
口腔内の違和感
パラタルバーを装着するということは、異物が口の中に常にある状態にほかなりません。
そのため、どうしても口腔内に違和感を感じてしまいます。
とくにパラタルバーは舌の動きを利用して効果を発揮している装置のため、どうしても舌が装置に触れてしまい、そのことでトラブルが起きることが多いです。
装置を装着すれば、慣れるまでは違和感を感じるのも仕方ないことです。また、舌の動きが装置にあたって喋りづらいということもあります。
舌が装置にあたるため、どうしても喋りづらい言葉があり、滑舌も悪くなります。
咀嚼・嚥下しにくい
咀嚼・嚥下がしにくいというのもパラタルバーを装着したときのデメリットといえます。
食べ物を飲み込むときの動きを利用して圧下させるために、どうしても飲み込むことができづらくなってしまいます。
食べ物を飲み込むことが難しいときには、スープや柔らかいものを食べるようにしましょう。装置に慣れてくれば、固形物も食べられるようになります。
パラタルバー装着中に喋りにくくなる理由
パラタルバー装着中には、喋りにくくなるというデメリットがあります。なぜ喋りにくくなるのか、その理由を知っておくことで安心して装置を装着できます。
パラタルバーを装着することで喋りにくくなるのは、喋るときの舌の動きが装置にあたってしまうからです。
パラタルバー装着中のトラブル
パラタルバーを装着すると、どうしてもトラブルが起きてしまいます。
口腔内にどのようなトラブルが起きるのか、トラブルが起きたらどうすればいいのかなどを詳しくみていきましょう。
口内炎
パラタルバーを装着すると、どうしても口内炎ができやすくなってしまいます。
装置を付けることで、口腔内が装置にあたって傷ができたり口内炎ができたりするからです。
もしもパラタルバー装着によって口内炎ができてしまったら、歯科医師に相談しましょう。
飲み薬や塗薬などを処方してもらうことで、口内炎を治すことができます。
また、口内炎ができるだけでなく口腔内が装置によって傷ついてしまい、そのまま放置しておくと傷口が膿んでくる場合もあります。
そういった場合には、すぐに歯科医師に連絡してしかるべき処置をしてもらってください。
装置に食べ物が挟まりやすい
装置に食べ物が挟まりやすい、というのもパラタルバー装着時のトラブルとしてよくあります。
パラタルバーを装着するということは、歯に装置を装着するということです。
そうすると、歯と装置の間に食べ物が挟まりやすくなり、清潔に保つことが難しくなってしまいます。
もしも挟まってしまったら、すぐに取り除くようにしてください。挟まったままにしておくと、口腔内の病気のもとになってしまいます。
歯にものが挟まらないようにするためにも、よりきれいに歯磨きをするように心がけてください。
虫歯や歯周病
パラタルバー装着時に考えられるトラブルとは、虫歯や歯周病です。
装置を装着するとどうしても装置と歯の間をきれいに磨くことが難しくなってしまい、歯垢がたまりがちになります。
歯垢がたまると、虫歯になりやすくなるためできる限りきれいに磨くように心がけてください。
また、磨き残しが装置の動きによって圧下するときに歯肉の間に入り込んでしまうことで、歯周病になることもあります。
もしも、歯茎が晴れて出血してしまうようなことがあればきれいに歯磨きができていないということなので、歯磨きの際に気を付けるようにしてください。
パラタルバーの不安は信頼できる歯科医に相談
パラタルバーを装着するときには、どうしても不安を感じることがあります。
もちろん、不安を感じたからやめるというわけにはいかない人も多くいます。しかし、装着するときに、不安はできる限り解消しておくのがおすすめです。
不安を解消しておくと、装着時のストレスも少なくなるからです。
まずは、信頼できる歯科医師に相談して、気になることや疑問点はどのような些細なことでも質問してみましょう。
気になることを全部聞いておくことで、不安を解消できます。
まとめ
歯列矯正のときにパラタルバーを装着することは、よくあります。
パラタルバーは外側からは見えづらく装着していることがわかりません。
とはいえ、喋りにくくなったり物を飲み込みにくくなったりと、日常生活に支障が出る場合があります。
とくに滑舌が悪くなると意思を相手にうまく伝えられなくなり、物が飲み込みにくくなると固形物が食べづらくなるなどかなりの影響がでてしまいます。
しかし、装置に慣れてくればある程度元に戻るため、装置装着中ずっとこういったトラブルが起きるわけではありません。
まずは信頼できる歯科医師に相談して、パラタルバーを試してみてください。