【監修:青山健一】
目 次
永久歯が生え始めた頃にお子様の歯並びが悪いと、歯列矯正を検討するご両親も少なくありません。
歯列矯正は検討するものの「何歳から始めれば良いのか」「子どもが嫌がらないだろうか」など不安が絶えないものです。
お子様の歯列矯正を考え始めた方・子どもの歯列矯正の進め方や始める時期について知りたい方のために、小学生の歯列矯正について解説します。
歯列矯正の種類や注意点なども紹介するため、参考にしてみてください。
小学生が矯正するメリット
小学生で矯正すると、乳歯と永久歯が混在するうちに悪習慣や癖を改善し、顎を正しく成長させられます。
子どもの歯並びには顎の状態が関連しているケースが多くあります。例えば反対咬合・噛み合わせが合わない開咬・顎の骨格が狭いことなどです。
原因は遺伝的な要素も考えられますが、それ以外には指しゃぶり・口癖・口呼吸などの悪習慣によって形成される場合もあります。
また、早いうちに歯並びが整うと歯磨きがしやすくなるため虫歯などの歯のトラブルを防げます。
小学生の矯正の特徴
小学生の歯は大人と違い顎や歯が成長途中にあり、まだ永久歯が生え揃っていない状態です。
お子様の歯がどんな成長過程にあるのかを知ることで、矯正を始めるタイミングや歯並びを悪化させない習慣の参考にしてください。
乳歯と永久歯が混在
小学生の歯は乳歯と永久歯が混在している状態で、前歯から奥歯にかけて順番に歯が抜けて生え変わる時期です。
歯が抜ける時期は個人差がありますが、小学校低学年ではまだ永久歯が生え揃ってない子どもの方が多いです。
生え始めの永久歯は虫歯になりやすく、特に日々のデンタルケアが重要な時期といえます。
顎が発達している段階
小学生の顎はまだ発達段階で、食べ物を噛む力や回数が大切な時期です。
食べ物をよく噛むことで顎が発達していきますが、現代人は柔らかい食べ物を食べることが多くなり顎が発達せずに狭くなる子どもが増えています。
顎が狭くなると永久歯が入りきるスペースが狭くなり、歯並びに影響する場合があります。
子どもの時期は固めのものを食べたり、よく噛んで食べるのを意識して顎を発達させていくことが重要です。
子どもの矯正のタイミングと特徴
「歯列矯正をさせたいけどまだ早いかな」など、子どもの歯列矯正を始めるタイミングに悩むご両親は多いですよね。
子どもが歯列矯正を始めるタイミングは2つの時期に分けられていて、開始する時期によって治療方法が異なります。
子どもの歯列矯正は早期治療が良いとされていますが、お子様の性格や歯並びの状態にもよるため歯科医に相談してみましょう。
第1期治療
乳歯と永久歯が混在している時期の基礎治療となる歯列矯正を第1期治療といい、およそ6~11歳に開始する治療です。
第1期治療は歯を動かすというよりも、顎の骨や成長を整えていくのが目的です。
第1期治療で矯正が完了するまでの期間は約4年で、歯並びの乱れが軽度の場合はもう少し早く終わる場合もあります。
第1期治療は歯並びや噛み合わせを整える土台となる治療で、第2期治療で歯並びと噛み合わせを治していきます。
第2期治療
乳歯が抜け終わり永久歯が生え揃った段階の仕上げとなる矯正治療を第2期治療といい、およそ13歳~成人に開始します。
第2期治療は大人と同じ治療方法で歯列矯正をするため、さまざまな矯正方法から選んで治療するのが特徴です。
治療期間は第1期治療期間よりも長くなる傾向にあります。なぜなら顎の発達や歯が大人と変わらない状態になるからです。
まず初めに第1期治療で顎の骨格を整えておくことで、第2期治療では抜歯をせずに歯列を整えられる可能性が高くなります。
小学生向けの矯正治療の種類
小学生の矯正治療は大人と違い、歯列を整える以外に永久歯が綺麗に生えるスペースを作るという目的があります。
大人の歯列矯正に比べて痛みを感じにくい矯正装置もあるため、お子様の負担を軽くしながら治療を進めることが可能です。
永久歯が綺麗に生え揃うスペースを作るために、顎自体を動かす矯正方法など子どもの成長や状態に合わせた矯正方法があります。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は大人の歯列矯正においても使用される方法で、自分の歯の形に合わせたマウスピースを付け替えていくことで矯正していく方法です。
マウスピース矯正のメリットは、歯磨きをする際に取り外しができることです。
取り外せばいつもと同じように歯磨きができるため、磨き残しの心配がありません。
他の矯正方法より装着しているときの違和感を感じにくいため、子どもにも利用しやすいのが特徴です。
ただし歯列の乱れが大きい子どもにはマウスピース矯正が適さない場合があるため、検討する際は歯科医に相談してみましょう。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正とはブラケットと呼ばれる装置をつけてワイヤーを通し、歯を動かしていく矯正方法です。
ワイヤー矯正のメリットは歯を動かしやすいことです。常時装着しておくため、歯が元に戻りにくくスムーズに矯正治療を進められます。
ワイヤー矯正には表側に装置をつける表側矯正と歯の裏側につける裏側矯正があり、歯並びの程度によっては痛みを感じる場合があります。
また歯の外側からワイヤーが見えるため、見た目を気にする子どもには白いワイヤーなどなるべく目立たない方法も検討してみてください。
床矯正
床矯正とは歯列の幅を広げることを目的とした矯正で、歯の裏側から装置を取り付けます。
床矯正のメリットは成長に合わせて少しずつ幅を広げていくため痛みが少なく、取り外しができる点です。
また床矯正によって歯が生えるスペースが確保できるため、抜歯をする必要がありません。
バイオネーター
バイオネーターは下顎の成長が未熟な子どもに使用する装置で、下顎を前方に成長させる作用があります。
装置をつけることで気道が十分に確保されて鼻呼吸がしやすくなるメリットもあるため、口呼吸を改善できるきっかけになります。
就寝中につけるなどして毎日決められた時間装着することで効果が得られるため、違和感を感じなくなるまでは慣れる工夫が必要です。
ペンデュラム
ペンデュラムとは上あごにつけるプレート状の装置のことで、6歳臼歯を後ろに下げる目的で用いられます。
6歳臼歯を後ろに下げることでスペースが空くため、抜歯をしなくても歯がおさまる可能性が高いです。
大きめの装置を上あごにつけるため最初は違和感を感じる子どもが多いですが、外側からは見えにくいため見た目を気にするお子様には適しています。
小学生の矯正治療の費用相場
「小学生の矯正治療にはいくらかかるんだろう」と詳しい費用が気になりますよね。
矯正治療は自由診療のためクリニックによって差がありますが、第1期治療で大体10~50万円です。
歯並びの乱れやあごのズレが大きい場合は第1期治療から始めることで土台を作り、継続して第2期治療に移ります。
第2期治療になると期間も長くなり金額が高くなる場合があるため、歯列矯正を始める際の費用に不安がある方は、歯科医に相談してみてください。
小学生が矯正するときの注意点
小学生が矯正治療を始める際は矯正装置をつければ安心というわけではなく、親子で注意しながら経過を見ていく必要があります。
矯正を始める親子の心構えとして、どのような点に注意すれば良いのかを解説します。
子どもの協力が必要
いくら両親が歯列矯正をさせたいと願っても歯列矯正をするのは子ども本人であるため、子どもの意思や協力なしに歯列矯正を進めるのは難しいものです。
歯列矯正を始める前にしっかりと子どもに説明をして、治療についての同意を得ることが大切です。
矯正をするメリット・矯正している間に起こり得る違和感・矯正装置をつける期間などを誤魔化すことなく説明することで、子ども自身も納得しやすくなります。
特に高学年のお子様はさまざまなことを理解可能な歳であるため、事前にしっかりと説明をして協力を得るようにしましょう。
親がサポートする
子どもが納得して治療を始めることが第一歩ですが、矯正を始めたばかりのお子様や矯正中のお子様にとって親のサポートも重要です。
矯正中は歯磨きがしづらくなるため、子どもの歯磨きだけでは十分に磨けず磨き残しが残る可能性があります。
歯磨きの際には親が仕上げ磨きをしてあげるなど、口内環境を整えるサポートをすることで虫歯などのトラブルにならずに矯正治療を進められます。
また低学年の子どもは矯正装置をつけ始めた頃の違和感や痛みを嫌がる可能性があるため、嫌がったり痛みを感じている時は寄り添い励ましてあげてください。
小学生の矯正は歯科医に相談しよう
小学生になって歯が生え変わる頃に歯並びが気になり始めたら、まずは歯科医に相談してみましょう。
歯科医に相談して実際にお子様の歯を見てもらうことで、歯列矯正の方法や始めるのに適切な時期を提案してもらえます。
まとめ
小学生の歯や顎は発達段階にあるため動かしやすく、顎を正しく成長させられます。
子どもの歯列矯正を始めるタイミングは第1期治療と第2期治療があり、第1期治療から始めた方が歯を動かしやすく矯正期間も短くなるといわれています。
矯正方法はマウスピース矯正・ワイヤー矯正・床矯正・バイオネーター・ペンデュラムなどさまざまな方法があるため、お子様の希望や歯並びの状態によって選びましょう。
小学生の歯列矯正にはお子様の理解と協力が必要不可欠で、歯のトラブルを招かないようご両親のサポートが重要です。
まずはお子様の歯の状態を歯科医に見てもらい、適切なタイミングで治療が始められるようにしましょう。