【監修:青山健一】
目 次
子どもとの何気ない会話や歯磨きの仕上げ磨きなどで、ふと「うちの子、歯並びが悪い?矯正が必要?」と感じることはありませんか。
矯正と一言でいっても、目的や方法に違いはあり、それにより矯正期間・金額も異なります。
顎の骨が発達段階である子どもだからこそ効果が期待できる「床矯正(しょうきょうせい)」があるのをご存知ですか。
タイミングを逃さないためにも、床矯正や費用についてご紹介します。
子どもの床矯正を検討する親は多い?
子どもの歯並びに不安を感じると、親はまず矯正について情報収集を始める方が多いです。
矯正には種類があり、それぞれ目的やメリット・デメリットの違いがあり、迷うかもしれません。
中でも床矯正は、将来的に抜歯が回避できるかもしれないという期待と適応年齢が早い時期で過ぎてしまうことから、検討する親も多くいます。
歯科矯正は大人になってから本人の意思で始める人もおり、それが可能です。
しかし、親としては始まったばかりの子どもの人生、正しい噛み合わせやきれいな歯並びで健康に人生を送ってほしいですね。
床矯正の費用相場
床矯正の相場は20~40万円です。この費用に幅があるのは、それぞれの症状によって治療法、治療期間が変わってくるからです。
症状が軽い場合は矯正装置の数も少なく、症状が大きい場合は期間が長くなることもあり、矯正装置の数も増えます。
また、歯科医の指示に従わず装着時間が短かったり使用方法を間違えたりすると、計画通りの効果が得られません。そのため、矯正の期間が延長され、当初の費用より高くなることもあります。
床矯正の概要
矯正というとワイヤー矯正やマウスピース矯正のイメージが強く、床矯正については馴染みが薄いかもしれません。
床矯正は適応できる年齢が限られており、小児矯正においては重要な役割があります。
装置の特徴
名称に「床」がついているように、矯正装置に床がついています。入れ歯をイメージしていただくと分かりやすいかも知れません。
その床の部分にネジやワイヤーが埋め込まれています。そして入れ歯のイメージにもあるかと思いますが、食事や歯磨きのときには自分で取り外します。
ここまでの説明で想像できるかと思いますが、床矯正はワイヤー矯正とは見た目も扱い方も目的も違うものになります。
床矯正の目的
床矯正の目的は、顎の幅を広げることです。
歯並びが悪い理由として、顎の幅が狭いために歯がきれいに並ぶためのスペースがないことがあります。その場合、永久歯を抜いてスペースを作る抜歯矯正というものもあります。
しかし、永久歯を抜くことに抵抗を感じる人は少なくありません。
床矯正は抜歯をせずに、顎の幅を広げることによりスペースを作ることが目的になります。
そのため、歯並びの細かい調整や歯を根本から動かすことはできません。そのような点で、ワイヤー矯正やマウスピース矯正とは目的が異なります。
適応年齢
床矯正は顎の幅を広げる矯正のため、顎の骨が発育段階にある「3~12歳」が適応年齢になります。
しかし、これは大きな目安であり、口の中の状態によっても開始時期は変わります。
例えば、上下のどちらかの顎が極端に前に出ている場合は4歳頃から、叢生と呼ばれる歯がデコボコに生えている状態は7歳頃からの開始がおすすめです。
お子さんの床矯正を検討されている方は、そのタイミングを逃さないよう、早めに歯科医に相談しておきましょう。
また、大人は絶対に床矯正が出来ないわけではありません。大人もできれば永久歯を抜かずに矯正したいですよね。
子どもの床矯正のメリット
子どもが床矯正をする場合、近くで見守る大人は心配や不安もあるかと思います。
子どもに痛みや不快感はないのか。特に小さな子の場合は、それを言葉として伝えてくれるだろうか。
ここからは床矯正のメリットを説明します。メリットと心配・不安を天秤にかけず、心配・不安は歯科医に相談しながら、床矯正の必要があれば前向きにみてみましょう。
痛みが少ない
矯正は「痛い」というイメージがあるかもしれません。確かにワイヤー矯正の場合、大きな力で歯を動かそうとするため、痛みを感じることがあります。
しかし、床矯正は痛みが少ないといわれています。その理由は、子どもは顎の骨が柔らかいため大人に比べて負担が少なく痛みが弱いようです。
ただし、矯正装置が歯茎に当たって痛いと感じる場合があります。そういう場合は、ネジを緩めるなどの処置が必要になります。歯科医に問い合わせてみましょう。
また、最初は矯正器具を装着することに痛みではなく、違和感や不快感をおぼえることがあるようです。
しかし、子どもの適応力の高さもあり、2週間程度で慣れるといわれています。
慣れるまでは、テレビを見ている時間は装着する・できたら褒めるなどして少しずつ装着時間を増やしていきましょう。
歯科医はたくさんの患者さんを診ており経験や知識が豊富です。些細な事でも相談してみましょう。その家庭に合ったアドバイスがあるかもしれません。
抜歯を回避する可能性
きれいな歯並び・正しい噛み合わせにするために、顎にスペースがない場合は永久歯を抜いてスペースを作る抜歯矯正があります。
この場合、上下左右にある第一小臼歯を4本、親知らずが上下左右にあれば4本、合計で4~8本の永久歯を抜くことになります。
つまり、大人の場合32本の歯が24本にまで減ることがあるということです。出来れば健康な歯は残しておきたいですね。
床矯正はできるだけ歯を抜かないことを前提とした治療法です。顎の成長が止まっていない子どものうちに抜歯を回避できるよう、スペースを作っておくことができます。
通常の矯正より費用が安い
床矯正は通常の矯正より費用が安いといわれていますが、通常の歯科矯正の費用が分からなければイメージできないと思います。
通常の歯科矯正にかかる費用はさまざまですが、一般的に30~150万円といわれています。
矯正にかかる費用の幅が大きく、実際にはいくらか分かりません。この違いは一体どこにあるのか不思議に思う方も多いです。
矯正費用は矯正方法・口の状態・期間によって違ってきますが、基本的に保険適用外という自由(自費)診察のため高くなります。
自由診察とは、歯科医・歯科医院が治療費全額を患者さんから受け取るもので、診療内容や費用は歯科医院が設定するものです。
歯科医院は、専門設備や使用する素材、専門医の専門性の高さにより価格設定しています。
そのため矯正費用には大きな幅がでてくるのです。そんな費用がかかる矯正の中でも床矯正の場合は20~40万円が相場とされています。
子どもの床矯正の治療期間
子どもの矯正は、永久歯が生えそろう前に行う第1期矯正と永久歯が生えそろったあとに始める第2期矯正に分かれます。これらの矯正は目的が異なります。
第1期矯正の目的は、骨格の成長を正しい状態に誘導することです。つまり、きれいに永久歯が並ぶように土台をつくることが目的です。
それに対して、第2期矯正の目的は、永久歯の歯並びを整えることになります。
床矯正は第1期矯正に該当し、矯正期間は半年から2年くらいです。その後、歯並びの矯正が必要な場合は第2期矯正に入ります。
床矯正の注意点
小さな年齢から床矯正を始めることによるメリットもありますが、注意しなければならない点もあります。
どんな矯正でも効果を出すにはある程度の時間と費用、手間がかかります。期待通りの効果を得るためにも始める前に注意点も理解し、心の準備をしておきましょう。
子どもの協力が必要
床矯正を始める頃、子どもの年齢は低く、まだ自らの意思で始めることは少ないです。矯正の必要性を伝えても、すべてを理解するのには難しい年齢です。
しかし、子どものやる気と協力がないと矯正で期待通りの効果が得られなくなります。
床矯正は自分で取り外しができるため、食事がこれまで通りに楽しめたり、しっかり歯磨きができるメリットがありますが、自分で矯正装置の装着・取り外しを行わないといけません。
特に学校などでは給食や発音が気になる授業で外すことがあります。その後、面倒に思わず・嫌がらずに装着する必要があります。これらを子どもが協力的に行うことが重要です。
親のサポートが必要
子どもの協力の他に床矯正は親のサポートも必要になります。
例えば、まだ子どもが小さかったり、矯正を始めたばかりで矯正装置の装着・取り外しが難しい場合はサポートが必要です。
また、食事やおやつ後に装着する際には、歯磨きをして口の中をきれいにしてから装着しなければなりません。
「食べたら磨く、磨いたら装着」を習慣にするようサポートも必要になります。
そして、清潔にするのは口の中だけではありません。矯正装置も清潔に保たなければいけません。装置は歯磨き粉を付けずに、専用の歯ブラシで優しく丁寧に水洗いをします。
頑固な汚れやヌメリ、嫌なにおいには市販の入れ歯用洗剤を使用します。その場合は商品により使い方が違うため説明書を参考にしてください。
治療の目的を知っておく
長期の矯正を続けていくと、サポートに疲れたり面倒に感じたりすることがあります。その際のモチベーション維持のためにも治療の目的を理解しておきましょう。
また、小児矯正には第1期矯正と第2期矯正があり、それぞれ目的が異なります。
第1期矯正が終わったときに「歯並びがきれいになってない」と落ち込まず、「土台はできた」「次は歯並び!」と第2期矯正に入っていくことができます。
装着時間を守る
床矯正は自分で取り外しができる代わりに、装着時間を自分で管理しなければいけません。
一般的にいわれているのが食事や歯磨きを除いた時間、少なくとも1日のうち14時間の装着が求められます。
装着をさぼると期待していた効果が得られず、期間の延長、それに伴う費用の追加などが発生します。
また、数日間さぼるとフィット感がなくなり、痛みが出てくるようです。その場合は装置の作り直しが必要になるなど、やはり追加費用がかかることがあります。
慣れるまでは嫌がることがあるかもしれませんが、装着時間を意識して取り組みましょう。
床矯正の費用に関する不安は歯科医に相談しよう
床矯正が矯正の中でも安くできるということで、すぐにでも始めようと思う人もいると思います。しかし、床矯正で出来ることと出来ないことを理解してから始めましょう。
また、床矯正が安いといっても自由診療のため、通常の歯科医院での治療に比べると高く感じるかもしれません。しかし、床矯正は小児矯正では大きな役割をもっています。
まずは歯科医に相談してみましょう。プロの正しい知識から、それぞれの症状に合わせて治療計画を確認しましょう。
しかし、治療計画は計画であり、そこには矯正装置を正しく使う・装着時間を守ることが前提とされています。
まとめ
床矯正は矯正していない子に比べると、子どもの負担も親の負担もあります。
しかし、将来的に抜歯を回避できる・正しい噛み合わせで健康的にかつ美しい歯並びを手に入れられると考えてみてください。
骨の成長過程にいる子どもの頃に床矯正をするのは、その子にとって大きなメリットになります。