【監修:青山健一】
目 次
反対咬合、いわゆる受け口は、小児矯正のなかでも多いお悩みです。
子どもの反対咬合の発生率は約5%弱といわれています。1年で約5万人以上のお子様とそのご家族が、受け口に悩んでいるのです。
子どもの反対咬合を治療する治療方法にムーシールドという治療方法があります。
今回は、小児矯正ムーシールドについて詳しく解説いたします。
ムーシールドとは?
ムーシールドとは、マウスピース型の矯正装置です。
下の前歯が上の前歯よりも前に出ている反対咬合、いわゆる受け口を改善する矯正装置です。
ムーシールドは、乳児のうちから反対咬合の治療が可能な治療方法として、1983年に考案されました。
その後、学会でも発表され、2005年頃から一般の歯科医でもムーシールドによる治療が開始されています。
さまざまなメリットから小児矯正で導入されるようになり、ムーシールドの治療は広がりをみせています。
ムーシールドの効果
ムーシールドは、子どもに見られる反対咬合を改善する効果があります。
子どもの反対咬合は、歯並びの問題というよりも唇や顔の筋肉の力、舌の位置のバランスの悪さによって生じやすい傾向があります。
- 上唇の力が強い
- 下唇の力が弱い
- 上顎の成長が遅い・悪い
- 舌で下顎を押す癖がある
- 舌の位置が悪い
- 噛み合わせのバランスが悪い
このような理由などが原因となり、反対咬合が見られるお子様は少なくありません。
つまり、子どもの受け口は歯並びそのものというよりも、口腔内の筋肉や舌の位置のバランスによって発生する傾向があります。
ムーシールドを装着することによって、舌の位置や顎のバランス改善につながります。受け口を改善することで正常な噛み合わせに導くことが可能です。
ムーシールドの特徴
ムーシールドの特徴のひとつは、就寝時から朝起きるまで装着するだけという点です。
起きている間ずっと装着する必要はないため、小さなお子様でも治療に対応しやすく痛みが少ないといわれています。
小さなお子様が矯正治療を続けていくには、違和感や痛みを極力減らし、治療にネガティブな印象を持たないことが大切です。
ムーシールドは、ワイヤー矯正とは異なり見た目を気にする必要はありません。
痛みや見た目の変化を気にせずに幼いうちから受け口改善のトレーニングができるという点が、ムーシールドの最大の特徴です。
費用の目安
ムーシールドの治療にかかる費用は、約5万~20万円ほどです。
歯科医院によって金額に差はありますが、歯列矯正のポピュラーな方法であるワイヤー矯正と比較すると比較的安価な治療方法です。
ムーシールドの適齢期と矯正期間は?
費用が安くお子様への負担も少ないムーシールドですが、何歳から治療を始められるのでしょうか。
ムーシールドの適齢期や矯正期間についてお話していきます。
適齢期
ムーシールドは、4~5歳くらいから治療が可能です。乳歯がすべて生え揃えば、3歳くらいから治療を始めることもできます。
一般的に子どもの歯列矯正は7~9歳頃から治療可能といわれています。一方、ムーシールドは一般的な歯列矯正よりも幼いうちから治療が可能です。
小さなお子様でも負担を抑えて治療を始められるため、受け口の初期治療としてもおすすめの治療方法です。
矯正期間
就寝時から朝までの装着を毎日しっかり継続できれば、ムーシールドの矯正期間は約1年~1年半です。
ムーシールドは、通常の歯列矯正よりも治療期間が短く済みます。ただし、矯正期間は個人差があり、長い場合は2年くらいかかることもあります。
治療を早く終わらせたい場合は、毎日寝る前にムーシールドの装着を欠かさないことが重要です。
矯正期間はお子様自身の協力によって変わってくることも覚えておきましょう。
ムーシールドのメリット
幼いうちから治療を始められるムーシールドは、さまざまなメリットがあります。
ムーシールドが多くの小児矯正で用いられる理由とそのメリットを解説いたします。
歯のかみ合わせと受け口の改善
ムーシールドは、永久歯に生え変わる前の早い段階で受け口の改善ができる治療方法です。
子どもの反対咬合は自然に治るともいわれることもありますが、自然に治る確率は実際のところ約6%弱とされています。
受け口を改善するには、治療が必要なお子様のほうが圧倒的に多いのです。
受け口は、顎の骨の成長や噛み合わせに大きな影響を与えますし、滑舌や発音が悪くなるリスクもあるため注意が必要です。
お子様の成長に伴い顔つきにも影響を与えるため、反対咬合の症状が見られる場合は早めの対処をおすすめします。
ムーシールドは、幼いうちから歯の噛み合わせと受け口の改善ができるという大きなメリットがあります。
マウスピース型で痛みがなく治療しやすい
ムーシールドの治療方法は、マウスピース型の装置を寝ている間に装着するだけです。
そのため痛みが少なく、幼いお子様でも治療しやすいメリットがあります。
家庭内での治療で完了でき、他人に気付かれにくいという点もムーシールドのメリットです。
永久歯の矯正より安価
永久歯に生え変わってから行う矯正治療よりもムーシールドは安価です。費用の負担が少ないという点もムーシールドのメリットといえます。
ただし、一般的にムーシールドは矯正治療のなかでも安価な治療ですが、歯科医院によって金額は大きく異なります。
メンテナンス費や調整代として月々にかかる費用もあるため、治療を始める前に治療の総額費をしっかり確認しておきましょう。
歯を抜かない
ムーシールドは、歯を抜かずに治療できます。
歯を抜いたり外科手術をしたりせずに受け口を改善できるため、お子様への負担が少ない治療方法です。
抜歯は、小さなお子様にとっては恐怖ですし、トラウマになるケースも考えられます。歯医者嫌いになってしまうと、今後の虫歯治療や定期健診などの支障にもなります。
お口の健康のためには、子どものうちから「歯医者さんは怖くない場所」と認識してもらうことも大切です。
お子様の精神的・身体的な負担を少なくしたうえで治療できるメリットがムーシールドにはあります。
ムーシールドのデメリット
メリットがたくさんあるムーシールドですが、デメリットがないわけではありません。
治療を始める前に知っておくべき注意点でもあるため、デメリットも必ず理解しておきましょう。
後戻りの可能性
ムーシールドで受け口を改善しても、成長によって後戻りしたり再治療が必要になったりするケースもあります。
骨や筋肉が動きやすい成長期は、生活習慣や食べ癖・舌の癖によって噛み合わせが変わりやすいものです。
幼いうちに反対咬合を治しても、舌が低い位置のまま機能する癖を治せないと後戻りする可能性があります。
受け口にしか効果がない
ムーシールドは、受け口を改善する治療方法です。そのため、歯並びそのものがきれいになるという治療方法ではありません。
受け口にしか効果がない治療であるため、噛み合わせや歯の状態によってはムーシールドで反対咬合を治したあとに矯正治療が必要になる場合があります。
虫歯や歯周炎のリスク
眠っている間は虫歯菌の活動が活発になりやすい時間帯です。
そのため、眠る間にマウスピースを装着するムーシールドは、お口の中が不衛生になりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
お子様の虫歯や歯周病リスクを下げるためにも、就寝前と起床時の歯みがきは丁寧に欠かさず行いましょう。
効果が出ない場合の対処法
反対咬合の改善に適したムーシールドですが、効果が出ない場合やムーシールドだけでは受け口が改善されない場合もあります。
効果が出ない場合、お子様の成長を観察しながらほかの矯正と併用することもひとつの対処法です。
ムーシールドで受け口が改善せず、永久歯に生え変わる7~10歳になった場合は、上顎前方牽引装置という方法もあります。
上顎前方牽引装置は、上顎を前方に移動させると同時に下顎の成長を抑える治療方法です。
こちらも寝ている間の装着で治療が可能ですが、見た目はヘッドギアのような装置でムーシールドよりも大掛かりな装置です。
そのため、お子様によっては治療を嫌がる可能性もあります。
上顎前方牽引装置の治療が難しい場合、受け口を改善するには歯列矯正や外科手術などのほかの方法を視野に入れなければいけません。
ベストな治療方法は一人一人異なるため、専門の歯科医に相談したうえで治療方針を決めることも大切です。
受け口を放置する危険性
受け口を放置すると、歯並びや噛み合わせに大きな影響を与えるため、早めの治療がおすすめです。
受け口をそのままにしておくことで、下顎の骨が過度に成長しやすい状態となります。そのため、いわゆるしゃくれになるなど顔つきや輪郭にも大きな影響を及ぼします。
下顎が過度に成長してしまった状態を大きくなってから治そうとする場合、矯正治療では改善が難しいケースも少なくありません。
その場合、下の顎の骨を切除するといった大掛かりな外科手術が必要になる可能性もあります。
反対咬合は滑舌や発音にも影響を与えます。放置しておくと舌ったらずな喋り方やサ行やタ行の発音がうまくできない滑舌になりやすいです。
また、受け口は咀嚼時に下顎が大きく動きやすく、特徴的な食べ方になりやすい傾向があります。
滑舌や特徴的な食べ方が、子ども同士の間でからかわれてしまう原因にもなります。
成長後の噛み合わせや見た目の問題、滑舌など、あらゆる面を考慮するとお子様のためにも受け口は放置せず早めに対処しましょう。
お子様に受け口の症状が見られる場合は、無料の矯正相談を活用して専門医に診てもらいましょう。下記のボタンからご予約いただけます。
小児矯正の悩みは信頼できる歯科医に相談
成長期の子どもは、歯も骨も変化しやすく歯並びや噛み合わせも不安定です。
そのため、反対咬合も「成長とともに自然に治る」「様子をみる」といった見解もあります。
しかし、骨や歯の形成が不安定な成長期だからこそ、幼少期の歯並びや噛み合わせが将来に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。
歯並びや噛み合わせは、見た目にも影響を及ぼすため、お子様がコンプレックスを抱えてしまう可能性もあります。
歯や骨が動かしやすい子どものうちに受け口をはじめとする噛み合わせの問題は治しておきましょう。
ムーシールドだけではなく、小児矯正は症状に適したさまざまな治療方法があります。小児矯正の悩みがある場合は、専門の歯科医に相談しましょう。
下記のボタンから無料相談の予約ができます。
まとめ
反対咬合は遺伝や生活習慣・癖などから発生しやすい噛み合わせ異常のひとつです。
また、目に付きやすい症状でもあるため、大人になってから深刻なコンプレックスを抱えてしまう人もたくさんいます。
お子様のためにも早いうちに受け口を治しておいて損はありません。
ムーシールドは幼いお子様でも治療を始められる噛み合わせの初期治療に最適な治療方法です。
「もしかしたら?」と受け口が気になったら、まずは小児矯正の専門医に相談してみましょう。