【監修:青山健一】
目 次
歯列矯正を進める際はブラケットやマウスピースなどを利用して矯正治療を進めていくことになります。治療を進めていく中で一時的に歯のスペースが空いてしまうことがよくあります。
そのときに使用されるのがパワーチェーンという矯正器具です。
今回はパワーチェーンの特徴や効果、外れたときの対処法などについて紹介していきます。是非参考にして矯正治療を進めていきましょう。
パワーチェーンの特徴
パワーチェーンとは「エラスティックチェーン」とも呼ばれている歯列矯正に使用される医療用の道具です。
主な使用方法は歯と歯の隙間を閉じる目的でブラケット装置やフックに引っ掛けて使用されています。
パワーチェーンという名前のため、非常に強い力で引っ張られるようなイメージを持たれる方もいますが100g程度の力で引っ張るため、そこまで引っ張る力は強くありません。
パワーチェーンは丸いゴムの小さな輪っかがいくつも連なっており実際のチェーンのような鎖状になっています。
また、パワーチェーンは動かした方向へ引くときにも使用され、用途に合わせて5種類の強さから選びその時々にあったパワーチェーンが選定されます。
このときの力の調整は玉数で変わるため「右が4玉で左は5玉」などという指示のされ方をするのも、特徴的です。
パワーチェーンの効果
歯列矯正中に使用されるパワーチェーンですが「抜歯したスペースを閉じる」「歯を動かしたい方向へ引っ張る」この2つの用途で使われることが多いです。
また、パワーチェーンは力の調整がしやすいため歯の移動に必要な力を勘案しながら微調整ができます。
パワーチェーンの効果は強い力を掛け続けることではなく適切な力で持続的に引っ張ることで歯の隙間をとじたり歯を動かしたりできるところにあります。
力の調整が可能
前述でも紹介しているとおり、パワーチェーンは力の調整がしやすい矯正装置です。
パワーチェーンは一般的に来院ごとに強さを計算しなおして新しいパワーチェーンに交換します。そのため、矯正治療の進捗によって調整を繰り返します。
強さは5段階の種類がありさらに輪っか状のゴムの数を増やしたり減らしたりすることで調整が可能な装置です。
矯正治療は強い力を掛けることで治療が進むわけではありません。「至適矯正力」というのがあり、 それに応じたバランスで歯列矯正を進めていくことが必要です。
動かしたい方向へ歯を移動させる
パワーチェーンのメカニズムとして、ブラケットに1つずつゴムを掛けていき歯に持続的な弱い力で引っ張り続けることで動かしたい方向へ歯を移動させます。
このときに、来院のたびに歯列矯正の状況を確認しながら適切な力が加わるようにパワーチェーンを調整しながら進めていきます。
パワーチェーンは2週間ほどで牽引力が弱まるような仕組みとなっており、これは歯を動かすときは一気に強い力を加えず休み休み動かしていった場合のほうが効果があるからです。
これは牽引力が強い始めに歯冠という頭が動き、弱くなったところで歯根が動くためこのような仕組みになっています。
歯と歯の隙間を縮める
矯正や抜歯をすると歯と歯の間に隙間が生まれることが多々あります。このときにできてしまった隙間を縮めるのにパワーチェーンは使用されます。
パワーチェーン自体には大きな力がないため、ゆっくりと縮めていきますがこのときに結構な時間が掛かってしまうため、焦らずに治療を進めることが重要です。
このように一時的にできてしまったスペースを埋める効果がパワーチェーンにはあります。
パワーチェーンを用いる症例
パワーチェーンは歯を引っ張って意図した方向へ移動して歯並びを矯正する治療法です。
それでは実際はどういった症例に用いられるのでしょうか。
ここではパワーチェーンを用いる症例を紹介していきます。参考にして自分の悩みに合いそうであれば歯科医と相談して利用してください。
歯がねじれて生えている
歯がねじれて生えていることを「捻転歯」と呼びます。これは歯自体の変形ではないため、矯正治療で矯正をすることが可能です。
パワーチェーンを用いた治療法でも矯正することは可能ですがねじれの状態によっては違う矯正方法をとることもあります。
ほかの歯に負担が掛かったり歯並びが悪くなったりと悪影響を及ぼすため早めに対処しましょう。
歯と歯の間の隙間が広い
パワーチェーンは歯を移動することに使用される場合が多くあります。しかし、歯の種類、状態、引っ張る方向などによって必要な力は違ってきます。
力が強すぎると痛みや頭痛の原因となりますし、弱すぎると矯正することができません。
前述でも紹介しているとおり、パワーチェーンは力の調整がしやすい矯正装置なため必要に応じて力を調整できます。
歯列矯正に用いるパワーチェーンの交換頻度
パワーチェーンの交換時期は歯科医の考え方にもよって変わりますが平均的に3~4週で交換をしてきます。
そのため、通院のタイミングで新しいパワーチェーンに交換していくことが多いです。
前述でも紹介しましたがパワーチェーンは2週間でゴムの劣化により歯を引っ張る力が弱くなりますがこれは仕様のため、そのまま使用しても問題ありません。
パワーチェーン装着時のトラブル
パワーチェーンはモジュールのリング(ゴム)が連なっている形状をしているため、切れたり外れたりトラブルは少なくありません。
切れてしまったり取れてしまったりすると矯正力がなくなってしまうため、本来の効果が得られなくなって治療期間が延びてしまうこともあります。
ほかにもパワーチェーンには起きやすいトラブルが起きる可能性があります。これから紹介するトラブルの対処法や注意点に気を付けて矯正治療を進めていきましょう。
パワーチェーンが切れた・外れた
基本的にパワーチェーンは食事中もつけてたままにしておきますがゴムのため、簡単に切れてしまうことがよくあります。
このときにゴムを飲み込んでしまった経験がある人もいると思いますが基本的にゴムは体内に入ってもガムに近い性質で無害のため飲み込んでも問題はありません。
また、邪魔だからといって自身で切ることもできますが口内を傷つけてしまったり戻すことができなかったりするため自分で切り取ることは控えましょう。
また、2週間くらいを過ぎてくるとゴムの引っ張る力が弱くなり外れてしまうこともあります。
完全に外れてしまうと矯正の効果を得ることができないため、早めに歯科医院に相談をして治してもらいましょう。
パワーチェーンの着色汚れ
パワーチェーンはゴムでできているため、着色汚れやつきやすく落としにくいです。
特に着色の多いカレーやコーヒー、ワインなど色素が強い食べ物や飲み物はできる限りさけることをおすすめします。
パワーチェーンは1か月前後で交換ができるため問題はないかもしれませんが新しく交換したばかりですと着色汚れが目立ってしまうため注意が必要です。
逆に来院直前であれば着色汚れが着いたとしてもすぐに交換できるため、上手くやりくりをしてストレスなく矯正を進めていきましょう。
歯に汚れがつきやすい
パワーチェーンはゴムが連続繋がっているため、歯とゴムの間に歯垢がつきやすく落としにくいです。そのため、セルフケアには特に力を入れる必要があります。
医師から歯磨きを指導を受けたり通常の歯ブラシだけでなく歯間ブラシなどの特殊な系所の歯ブラシを利用して歯垢やプラークがつきにくい環境を整えましょう。
特に歯とパワーチェーンの間を意識して様々な角度から細かく磨くことがポイントです。
矯正用パワーチェーンが外れたら?
前述でも紹介しているとおり、パワーチェーンの引っ張る力はそこまで強くありません。さらに、装着しているうちにも力が弱くなっていく構造になっています。
そのため、食事や歯磨きなどの日常生活で外れてしまうことはよくあることです。そこで、パワーチェーンが外れたときの対処法について紹介していきます。
早めに歯科医に伝える
パワーチェーンが外れてしまうと効果を十分に引き出すことができません。そうなるとせっかく順調に進んでいた矯正も延びてしまいます。
特に念入りに歯磨きをしようとして、歯とチェーン歯ブラシを突っ込んで歯磨きをしていると誤ってパワーチェーンが外れてしまいます。
こんなときは自分で無理をして直さずに早めに来院をして見てもらいましょう。特に交換したばかりで外れてしまった場合は次の来院のタイミングを待たずに見てもらう必要があります。
切れた場合は無理に取らない
パワーチェーンが外れて口の中でぶらぶらしていると気になるため自身で切ろうとしてしまう人も少なくありません。
パワーチェーンはゴムでできているため、ハサミなどで簡単に切ることができます。
簡単に切れるところにある場合は邪魔になってしまうのなら切ってから歯科医に行ってもよいのですが、切りにくいところだと無理やり切ろうとすると口内を傷つけてしまいます。
そんなときは無理に切らずに早めに歯科医に相談をしてください。また、切っても違和感がある場合も早めに相談をしましょう。
歯列矯正の不安は歯科医に相談しよう
パワーチェーンに限らず歯列矯正で不安を感じた場合は歯科医に相談をしましょう。歯列矯正治療は長期間の我慢を強いられてしまう治療です。
そのため、治療法に不安や疑問があるとその分余計なストレスを溜めてしまいます。
不安や疑問は担当の歯科医にしっかりと相談をして適切なアドバイスをもらうことで、正しい治療を進めることができます。
まとめ
今回紹介したとおり、パワーチェーンは歯を移動させたり隙間を閉じたりする目的で使用される矯正器具ということがわかりました。
また、比較的外れやすい器具のためセルフケアをする際には細心の注意をして行う必要があります。
パワーチェーンは自己管理をしっかりとしないといけないため、セルフケアの方法から外れたときの対処法まで担当の歯科医に相談をしながら治療を進めましょう。