【監修:青山健一】
目 次
矯正治療をお考えの患者様で、どのように治療を進めていくか分からず担当医に相談せず悩んでいる方は増えています。
しかし矯正治療はさまざまな工夫をして患者様の負担を減らしていく治療をしていくため安心してください。
例えば、矯正治療の方法の1つにバイトアップがあります。歯科用語でバイトとは「噛み合わせ」を示し、アップは「上がる」という意味があります。
バイトアップとは噛み合わせを上げて高さを一定にする矯正治療をいいます。今回はバイトアップの特徴やよくある悩みについて説明していきます。
歯列矯正で行うバイトアップの特徴
矯正装置を装着した際に、心配なことは噛み合わせが深くなることです。また、寝るときに歯ぎしりをする方はさらに装置に圧力が加わり負担がかかります。
一番よくないことは、噛み合わせで装置が壊れてしまうケースです。もう一度装置を作り直すとなると、費用も時間もかかり患者様にとって大きな負担になります。
そのため、奥歯にバイトアップを盛り込つけて圧力を軽減させることが必要です。下記ではバイトアップの素材・処置する場所・費用の3点を詳しく解説していきます。
バイトアップの素材
バイトアップはレジンというプラスチックに似たような樹脂素材で処置をします。医療用の樹脂は安全性があり強度が高いです。
光を当てて固まる光重合形のものと、2種類のものを混ぜて硬化させる化学重合型があります。軽度の虫歯治療の際、青い光を当てられた経験はありませんか。
このときは光重合型UVレジンを使って治療しています。一方、バイトアップは厚みを出したり自然に固まる強度が高いエポキシレジンを使用するケースが多いです。
色は用途によって青やピンクに変えられます。使用する先が細い注射器のような容器は、高さを上げたい場所に重点的に盛り付けていくのに便利です。
処置をする場所
バイトアップを盛り付ける場所は奥歯2か所が主流です。前歯より奥歯の方がレジンの接着面を確保でき、外れにくく安定感があります。
歯並びや矯正装置の種類により、2か所以上のバイトアップをつけるケースもあります。食事や会話などしづらいですが、少しずつ慣れるのを待ちましょう。
バイトアップの費用相場
バイトアップはリンガル矯正でよく使われます。リンガル矯正とは歯の裏側にそってワイヤーを通す裏側矯正・舌側矯正のことです。
歯の裏側にそって通した上部のワイヤーが、下の前歯にあたり装置が落ちる可能性が高いためバイトアップを使って噛み合わせにスペースを空けます。
透明のマウスピースのインビザラインやマウスピースの矯正方法ではバイトアップを使いません。バイトアップの相場費用というより、リンガル矯正の相場で考えた方がよいです。
一般的な矯正よりも高度な技術を用いて治療するため費用は高く、100万円~150万円ほどかかります。
患者様の年齢やお口の状態によって異なるため、一度診察に来ていただくのがベストです。
下記では矯正相談を無料で行っています。矯正費用や期間など疑問に思ったことを気軽に相談してください。
バイトアップの矯正が必要な症例
矯正治療といっても、必ずバイトアップを使用するわけではありません。患者様のお口の状態を診察してから治療を進めていきます。
インビザライン・ワイヤー矯正・裏側矯正などどの矯正方法にするか患者様のご希望をお聞きするため、安心して治療に臨んでください。
もしバイトアップが必要な可能性が高い歯並びである場合は、歯科医から説明があります。下記ではバイトアップが必要な症例について2つ挙げました。
それぞれの歯並びの特徴を解説しています。あなたの歯並びに当てはまるかどうか参考にしてください。
鋏状咬合
鋏状咬合の別名はシザースバイトといいます。英語でシザースとはハサミを意味し、ハサミのように上の奥歯が外側に、下の奥歯が上側に入り込み噛み合わせがズレている状態です。
そのため、食べ物を上手く噛めず頬の内側を噛んでしまいがちになります。口の中が痛くなると食事することにストレスを感じたり、正常な噛み合わせの方だけで噛もうとしたりすることが多いです。
そして歯のバランスが崩れます。さらにブラッシングが上手くできず、虫歯になりやすくなり歯周病を引き起こすため早期に治療をすることが大切です。
交叉咬合
通常、上下の歯を噛み合わせたときに上の歯が下の歯よりわずかに出ているのが正しい位置です。しかし交叉咬合(クロスバイト)は上下反対の噛み合わせになっています。
遺伝によるものや生活習慣などさまざまな要因が関係していますが、交叉咬合を放置すると顎の歪みなど日常生活に支障が出てくるかもしれません。早期に治療するのがとても重要です。
大人だけでなく子どもの患者様にも多い歯並びであり、子どもは顎の成長を使い歯並びを整えられるため小児矯正することをおすすめします。
バイトアップの必要性
過蓋咬合(ディープバイト)など噛み合わせが深く、上の歯が下の歯を覆い被さるような歯並びの場合にバイトアップすることが必要です。
奥歯を盛ることで上下の歯を正しい位置に持ってくることができます。また、歯ぎしりで歯がすり減って歯並びに影響が出ている場合も高さを戻すのに重要なのです。
バイトアップのデメリット
これまでバイトアップの必要性などをお話してきましたが、歯にレジンを盛り付けると「日常生活が困難になるのではないか?」と考える方も多いです。
メリットとデメリットは、どのようなことでもセットでついてくるものです。患者様に安心して矯正治療を受けていただくためにも、デメリットを下記でお話していきます。
色が目立つ
バイトアップの色は歯科医院によってさまざまですが、通常は青色のものを使用します。処置する位置は、上記で説明した通り奥歯2か所のケースが多いです。
場合によっては2か所以上処置することもあり、お口を大きく開けて鏡で見ると気になる方もいらっしゃるかもしれません。
仕事で接客業をされている方は、相手と話したり笑顔になったりする際に特に不安に感じやすいです。
しかし大きくお口を覗かないと分からないため、普段の会話や食事のときに相手に気づかれることはほとんどありません。
また、バイトアップよりもワイヤー矯正の方が日常生活で目立ちやすいといえます。
違和感がある
バイトアップは噛み合わせが深ければ深いほどレジンを盛る量が多くなり、違和感があるのは当然であり少し辛い思いをするかもしれません。
さらに矯正装置で痛みがあり、噛み合わせたときに違和感があるケースは多いですが、上の歯の装置が下の装置にあたり壊れるのを防ぐための方法の1つなのです。
個人差がありますが、バイトアップは3~6か月ほど行う必要があります。その間は奥歯で噛みづらかったり、話しづらくなる可能性があります。
しかし数日~数週間で違和感が緩和する方も多く、その後は以前と変わらない日常生活を過ごせます。安心して治療を検討してください。
もし、歯科矯正する際に痛みや違和感が心配な方は、一度治療する前に担当医に相談してみましょう。下記リンクでは、矯正治療の無料相談を受け付けています。
バイトアップの注意点
バイトアップをした後、日常生活などで注意する点があります。歯科医から治療のときに説明を受けるため、矯正治療を長引かせないようによく注意して行動しましょう。
噛み合わせが深いほど量が多い
噛み合わせが深いほどバイトアップ(プラスチック)の量は多くなりますが、噛み合わせを浅くして歯を動かすために大切な処置です。
治療初期は奥歯の充填した場所だけしか噛めず、食事をしづらくストレスを感じてしまいます。
例えば、矯正中は食べ物を柔らかいものなどに変えてみたり、細かく食べ物を切って噛む回数を減らしたりするなど工夫してみましょう。
こまめに歯をケアする
矯正でブラケット(ワイヤー装置)や裏側矯正をしている場合、ワイヤーの間に食べ物のカスが溜まりやすくなり虫歯になる恐れがあります。
そのうえ、バイトアップした場所は歯ブラシが当てづらく普段通りにいかないかもしれません。虫歯にならないためにも、朝昼晩の食後はこまめに歯磨きしましょう。
バイトアップに関するよくある質問
下記ではバイトアップでよくある質問についてまとめました。少しでも納得いく治療を進めていくために、医師に質問することはとても大事なことです。
バイトアップが必要な期間
患者様の歯並びの状態によって期間は異なりますが、おおよそ3~6か月ほどです。特に歯がデコボコで内側に入った歯を外側に出すのに時間がかかります。
この治療は緻密な技術を要するため期間が長くなります。最初は歯の高さが変わりとても違和感がありますが、矯正期間中に慣れてくる患者様が多いです。
痛みの程度や期間
個人差はありますが、矯正して痛みが続くようであれば一度来院して担当医に相談しましょう。バイトアップの部分の高さを微調整してくれるかもしれません。
この痛みは歯が元の位置に戻るのに、ブラケットなどで圧力をかけているため起きているものです。最初はお肉など固いものを食べるのは難しいです。
しかし歯が元の位置に戻るにつれ痛みが軽減されて普段通りに過ごせるはずです。
食事の管理はご家族の協力が必要な場合もあり、お粥や温野菜など食べやすいメニューにしてみましょう。
矯正治療でお悩みの方は専門医に相談を
バイトアップの特徴・必要性・よくある悩みについてお話してきました。バイトアップ期間を含めて矯正は長い期間を必要とします。
バイトアップが何らかの原因で外れてしまったり、ブラケットの間に食べ物が挟まったりトラブルが起こることもあります。
高度な技術を要する矯正治療だからこそ、信頼できる歯科医を見つけてください。矯正相談やカウンセリングも活用しましょう。
まとめ
今回は、矯正治療で行うバイトアップについてご紹介しました。バイトアップは、矯正治療を成功させるために大切な処置の1つです。
痛みや違和感を生じることがあり、不安に感じる患者様もいます。矯正治療やバイトアップの不安は、歯科医に相談しましょう。