【監修:青山健一】
目 次
歯並びをよくするために矯正治療を受けたいものの、歯列矯正は自律神経失調症の原因になるかもしれないという不安から、なかなか治療に踏み出せないという患者さんは多いのではないでしょうか。
歯列矯正は正しい知識を身に着け、不安や疑問などあれば歯科医師とコミュニケーションをとりながら1つずつ解消してから始めましょう。
歯列矯正は自律神経失調症の原因になるのか、歯列矯正が身体に与える影響について歯科医が解説します。
自律神経失調症の概要
自律神経失調症は交感神経と副交感神経が機能するバランスが崩れることによって生じる症状の総称です。
主に呼吸や血液循環・消化吸収・排泄・体温調節などに異常をきたし、検査しても異常が発見されない不定愁訴がみられることもあります。
主な原因として生活リズムの乱れ・ストレス・ホルモンバランスの乱れがあげられます。
しかし、自律神経失調症は歯並びが悪いことや生まれながらの体質が原因で起こることもあり、改善するためにはなぜ症状があらわれているのか原因を突き止めて治療に臨むことが大切です。
自律神経失調症の主な症状
自律神経失調症の主な症状としてあげられるのは、全身的症状としてだるい・眠れない・疲れがとれないといったことがあげられます。
器官的症状は、頭痛・動機・息切れ・めまい・のぼせ・立ちくらみ・下痢・便秘・冷えなどです。
精神的症状として、情緒不安定・イライラ・不安感・うつなどの症状が現れることもあります。
このほかにも食欲不振・胃痛・腰痛・肩こりなどの症状など多岐にわたるのが特徴です。
また、検査をしても異常が発見できない、あるいは発見できても原因が究明できない場合が少なくありません。
そのため患者さん自身は長い間、不安を抱えたまま生活することになるわけです。
これらの症状がみられた場合は速やかに専門の病院を受診しましょう。無理な我慢は症状を悪化させる原因となります。
自律神経失調症の原因
自律神経失調症の原因は交感神経と副交感神経がバランスよく働けなくなることで起こるとされています。
自律神経失調症の原因について詳しくみていきましょう。
生活リズムの乱れ
自律神経失調症の原因の1つとしてあげられるのは生活リズムの乱れです。
自律神経は交感神経と副交感神経に分かれていて、人の体において交感神経は体を活発に動かすときに主に優位に働き、副交感神経は体を休めるときに優位に働きます。
生活リズムが乱れている場合、この2種類の神経の切り替えがうまく行えず、自律神経失調症の症状を引き起こします。
生活リズムを改善する方法としては、起床時間・就寝時間・食事をする時間を決め、正しくルーティン化することです。
特に夜型の生活をしている方は、日光浴をすることも体内時計がリセットされるため有効です。
生活リズムの乱れはストレスやホルモンバランスの乱れにもつながるため、自律神経失調症に悩んでいる方はご自身の生活を振り返り、生活リズムが不規則になっていないか確認する必要があります。
改善点が見つかった場合は早急に対応しましょう。
ストレス
大きなストレスは交感神経の働きを強くしすぎてしまうため、過度なストレスも自律神経失調症の原因となります。
ストレスは人によって感じ方が異なり、ストレスの耐性が低い人は強い人に比べて自律神経失調症になるリスクが高いとされています。
ストレスには対人関係によるもの・まわりの環境によるもの・ホルモンバランスによるものなど、さまざまです。
場合によっては複数のストレスが原因となっている場合もあります。
まずストレスの原因を整理して、緩和に向けた適切な治療方法を施すことで自律神経が正常に機能し、症状の改善につながります。
ホルモンバランス
ホルモンバランスの乱れも自律神経失調症の大きな原因となります。
特に女性ホルモンの分泌の増加・減少が自律神経失調症と関係が深いと考えられます。
それは女性ホルモンの分泌を調整するよう脳下垂体に指示を出す脳の部位と自律神経の働きを支配する脳の部位がどちらも視床下部であり、影響し合っているためです。
結果として、女性ホルモンの分泌が増加する思春期と減少する更年期の女性が特に自律神経失調症になりやすいと考えられます。
また、男性の身体でも女性と比べて量は少ないものの女性ホルモンが分泌されています。
また、男性も更年期などでホルモンバランスが乱れ自律神経失調症になることがあるため注意が必要です。
歯列矯正は自律神経失調症の原因になる?
それでは歯列矯正と自律神経失調症に相関関係があるのかみていきましょう。
治療中の不安定な噛み合わせが影響
歯並びをよくするために歯科矯正を受ける方がいらっしゃいますが、治療中、一時的に自律神経失調症と同じ症状が出ることがあります。
原因は治療するにあたって一時的な歯の噛み合わせの不安定さによるためです。
噛み合わせが原因の場合、治療が終了して噛み合わせが正常に戻れば症状は治ります。
ただし、場合によっては改善されずに症状が残ることもあるため注意が必要です。
歯列矯正で症状が改善することも
臼歯不正咬合で自律神経失調症を発症するケースもあります。
臼歯の不正咬合は自律神経である交感神経および副交感神経の働きが抑制されるからです。
一方、不正咬合があってもそれが臼歯でない人は不正咬合がない人と比べて自律神経の働きを示すパラメータに優位な差がみられなかったという症例があります。
つまり、臼歯以外の歯の噛み合わせは自律神経の働きに影響を与えないということです。
このことから、臼歯の噛み合わせが悪いことが原因で自律神経失調症を患っている方は歯並びを矯正することによって症状が改善することが期待できます。
歯列矯正で改善する身体のポイント
歯列矯正をすることでどのような身体の症状が改善するのか詳しくみていきましょう。
噛み合わせ
歯科矯正により歯の噛み合わせが改善できます。
主に下記の症状が緩和できると考えられます。
- 自律神経失調症の改善(原因が歯並びの場合)
- 口腔環境の改善(歯の噛み合わせを改善により、口腔内の汚れ・プラークが落ちやすくなるため、虫歯になりにくくなる)
- 顎関節症になるリスクの軽減
- 筋肉が左右府対象につくことによる顔が歪むリスクの軽減
- 側頭筋の緊張による頭痛の改善
- 広頸筋のバランスの崩れからくる肩こりの改善
噛み合せがいかに身体に大きな影響を与えているかお分かりいただけたでしょうか。
呼吸
歯科矯正により口呼吸を改善できます。
口呼吸は歯並びの悪化や虫歯・歯肉炎・アトピー性の鼻炎や皮膚炎・怠さなどの原因になります。
また、高齢になると誤嚥による肺炎にもつながるため注意が必要です。
口呼吸によって引き起こされる症状は成長しても治らないものが多いため、歯並びが気になる場合は早期の歯科矯正を受けるとよいと考えられます。
骨格のバランス
歯科矯正により骨格のバランスが整えられると下記の症状が改善されます。
- 上顎前突(じょうがんぜんとつ)
- 反対咬合(はんたいこうごう)
- 八重歯
- 乱杭歯(らんぐいば)
- 開咬(かいこう)
- 顎変形症(がくへんけいしょう)
口・顎周辺の骨格のバランスが悪いと顎関節症・発音障害・虫歯・歯槽膿漏などの原因になります。歯科矯正はこれらの症状の改善や予防に大変有効です。
自律神経失調症を悪化させないために
自律神経失調症の悪化を防ぐためにはどのような方法があるのかみていきましょう。
噛み合わせを悪化させる癖を直す
自律神経失調症の原因である無意識で行う癖を見直すことで、噛み合わせの悪化を予防することができます。
特に下記のような悪い姿勢は噛み合わせを悪くする原因となります。
- 食事のときよく噛まない、または左右どちらかの歯のみを使って噛む
- 指をしゃぶる癖がある
- 片足に重心を乗せて立つ癖がある
- 重いものを片方の手のみで毎回持つ癖がある
- 足を組んで座る癖がある
- 頬杖を突く癖があるうつ伏せで寝る
このような癖がある人は普段から姿勢を意識し、バランスよく筋肉をつけましょう。
また、お子さんがいる方は指しゃぶりをしないよう親御さんが注意を払わなくてはなりません。
気分転換をする
自律神経失調症の原因として特に増えているのは現代人の多くが抱えているストレスです。
ストレスは気分転換して軽減することで症状の緩和ができる場合があります。
例えば、入浴が自律神経を整えるのに有効だと考えられ、浴槽浴により身体を温めリラックスすることで疲労回復や精神的な安定化を促進する可能性が少なくありません。
入浴の効果は、深部体温上昇や血管拡張により全身の代謝の促進で疲労回復や痛みの改善につながります。
また、入浴のほかにもアロマテラピー・スポーツ・レジャーなど自分に合った気分転換方法を見つけてストレスを解消してください。
趣味を持つことで気分転換し、ストレスを発散させて自律神経失調症の予防・改善に努めましょう。
歯列矯正中の不調はすぐ専門医に相談を
歯列矯正は完治するまで約1年から3年かかり、その間は状態にもよりますが噛み合せを整えるため矯正器具を装着することになります。
治療前から継続している噛み合せの悪さや治療のストレスで歯列矯正中に心身の不調を感じる方もいらっしゃいます。
そうしたときは我慢せず速やかに専門医に相談しましょう。
歯列矯正でお悩みの方は、下記のリンクから無料の矯正相談の予約ができます。
まとめ
歯列矯正は自律神経失調症の原因になるのか、歯列矯正が身体に与える影響について解説しました。
自律神経失調症で悩んでいる場合、生活リズムの乱れ・ストレス・ホルモンバランスの乱れが原因であることが多く、普段の癖や習慣に起因していることもあります。
歯列矯正中による自律神経失調症は治療中の一時的なものです。
矯正治療によって歯並びがよくなれば、治療前からみられていた自律神経失調症は以前より改善される場合もあります。
幼いころから矯正することで自律神経失調症になるリスクを軽減することもでき、口呼吸や骨格のバランスが悪くなることによって起こる病気の予防にもつながります。
また、歯列矯正を行うことで口腔環境が改善し、頭痛や広頸筋のバランスの崩れからくる肩こりから解放されるケースも少なくありません。
治療中は一時的な自律神経失調症がみられる場合もありますが、歯列矯正は将来にわたってあなたの健康を守る手段として有効です。
ぜひこの機会に歯列矯正をご検討されてはいかがですか。