【監修:青山健一】
目 次
鏡を見てにこっと笑ったとき、「まん中の線がずれてるな」と感じたことはありますか?実は、そのずれは不正咬合のひとつです。
上下の歯の中心の線のことを正中線といい、この線がずれているとさまざまなトラブルが起こる可能性があります。
「まん中の線がずれているだけだから」と気にならない方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそのずれが全身に影響を及ぼしているかもしれません。
では一体どのようなトラブルがあるのでしょうか?今回は正中が合わない原因と、起こりうるトラブルについてご紹介していきます。
正中のずれは歯列矯正で治せるのか
正中のずれを治せるかどうかは、ずれを引き起こしている原因によります。歯の生え方や歯並びが原因であれば、矯正治療のみで治すことが可能です。
しかし、あごの骨が歪んでいたり曲がっていたりする場合だと矯正治療だけで治すのは難しく、外科治療が必要な可能性もあります。
また、矯正といってもいろいろあり、代表的なものは次のような方法です。
- ブラケット矯正
- セラミック矯正
- マウスピース矯正
- 矯正用のインプラントを入れる
子どもと大人では治療方法に違いもあり、子どもはあごの成長を利用した矯正方法で治療ができ、将来的に矯正で抜歯をする可能性を低くすることが可能です。
もし大人の方でセラミック矯正を考えている場合は、健康な歯を大きく削ってしまうということ、将来的な歯の寿命に影響する可能性が高いということを理解して治療に望んでいただきたいです。
詳しい治療方法については矯正医に相談しましょう。下記リンクより無料の矯正相談の予約ができます。お気軽にご相談ください。
正中が合わない原因
正中がずれる原因にはいろいろありますが、その原因を4つほど紹介していきます。
顔・上顎のずれ
顔の中心に対し、あごが左右どちらかにずれてしまっていることが原因のひとつです。
「あごがずれている」と聞くと、下顎がずれているのを想像してしまうと思いますが、実は上顎がずれている場合もあります。
上顎は頭の骨にくっついているのですが、これが曲がってついていることで下顎が歪んでみえたり、噛み合わせの問題で曲がってみえたりするのです。
顎のバランスが悪い
これは普段の生活での癖や、習慣により起こる可能性があります。
例えば毎日同じ方向を向いて寝ていたり、頬杖をついたり、片側でばかりものを噛んでいたりする場合です。
普段の生活で左右どちらかのあごに負担をかけすぎることで、あごの骨がずれてしまい、結果として正中もずれてしまいます。
よく頬杖をついている、片側だけでものを噛んでいるなど心当たりのある方は、これを改善するだけで正中がずれることを回避できるかもしれません。
ほかにも上顎の骨だけが大きく発達してしまっていたり、歪んでいたりすることで骨のバランスがとれていないことも原因のひとつです。
これには遺伝的な問題もありますが、上記で説明したような生活の中の癖や習慣で、骨が歪んでしまうこともあります。
歯の大きさが左右で異なる
人間の身体は、基本的に左右非対称です。右の眉と左の眉は僅かですが形が違いますし、笑った時の口角の上がり方も若干違います。
ですが、大きさという点では右も左も変わらないことが多く、それは歯の大きさも同じです。
しかし、まれに左右の歯の大きさが異なることがあり、この大きさの違いにより正中がずれることがあります。
生えていない歯がある
先天性欠損という言葉を聞いたことはありますか?
歯科でいう先天性欠損とは、永久歯の卵である歯胚が元からなく、永久歯が生えてこない状態のことをいいます。
永久歯は通常28本(親知らずを入れて最大32本)ありますが、先天性欠損の場合は、乳歯が残っているか永久歯の本数が少ないです。
歯は、隙間があると前に傾いてくるため、それにより噛み合わせがかわります。
人間のあごはちょうどよい噛み合わせになるようにどんどんずれていくため、噛み合わせが変わるとあごがずれ、正中がずれてしまいます。
八重歯がある場合も、同じ理由で正中がずれる可能性があるため、気になる方は歯科医院で相談しましょう。
正中のずれは治すべき?
実は、絶対に治すべきとはいえません。
1~2mm程度のずれで、噛み合わせに問題がなく、見た目も気にならないのであれば無理に治す必要はありません。
正中が大きくずれている方はあごに問題があるか、歯並びが原因であることが多いため、一度矯正医に相談することをおすすめします。
下記リンクより無料の矯正相談の予約ができます。お気軽にご相談ください。
正中が合わないことで生じるトラブル
ここまでで正中がずれる原因をお話しました。ここからは正中がずれていることで起こるトラブルについていくつかご紹介します。
歯列が悪化する
正中がずれているということは、歯ならびや噛み合わせ、あるいはあごに問題がある場合がほとんどです。
あごは噛みやすく楽な方へずれようとするため、放置していると今の歯ならびや噛み合わせの状態が悪くなってしまうことが考えられます。
正中のずれ以外にも歯ならびなどで気になることがあれば一度矯正医に相談しましょう。
食べ物を上手く噛めない
あごの骨がずれている、あるいは噛み合わせに問題がある場合、左右どちらかの奥歯が噛めていない可能性が高いです。
カチカチと噛み合わせたとき、右あるいは左が先に当たるような感覚はありませんか?
どちらかの歯があたっていないことにより、食事中ものをうまく噛めずに飲み込み、胃に負担をかけ消化不良を起こすこともあります。
胃の不調の原因が意外なところにある、ということです。また、どちらか一方しかあたっていないと、あたってる方でばかり噛むようになります。
片側の負担が大きいため、前述のようにあごがずれてしまい、正中がずれる原因になります。
見た目が気になる
正中のずれを感じる方が、一番気にするのはやはり見た目です。
鏡を見る度に憂鬱な気持ちになったり、自分に自信が持てず、人とのコミュニケーションがうまくいかなかったりする方もいます。
噛み合わせに問題がなくても、見た目が気になる方には、矯正医に一度相談することをおすすめします。
発音が悪くなる
噛み合わせたときに上下の歯がしっかり当たっていないと、その隙間から空気がもれやすく、話しにくくなります。
また、歯ならびが悪いと舌の動きに制限がかかり、滑舌が悪くなってしまうことが多いです。
これらが原因で起こる発音のしにくさは、歯ならびや噛み合わせ、あごの問題によるもののため治療することでよくなる可能性が高いです。
長期間そのままでいると、舌がその動きを覚えてしまい、矯正治療後に舌のトレーニングや発音練習が必要なこともあります。
身体症状の原因になる
噛み合わせが左右にずれている状態やあごの骨のバランスがとれていない状態のことを、「顎偏位(がくへんい)」といいます。
下顎は、頭蓋骨からブランコのようにぶら下がっている状態です。そのため、ある程度自由にあごを動かすことができ、ものを噛んだりしゃべったりができるのです。
人間はものをかむとき、あごの関節だけではなく口まわりの筋肉や側頭筋という筋肉も使っています。
噛み合わせやあごに問題がある場合、この筋肉がうまく使われず頭痛や肩こりを引き起こす可能性があり、状態がひどくなるとめまいや手足のしびれといった症状がでることもあります。
噛み合わせみ合わせの問題が全身状態に影響していることがあるため、気になる方は早めに歯科医院に相談しましょう。
正中のずれを矯正治療する際の注意点
正中がずれてしまう原因とそのままにしておくことで起こりうるトラブルについて、ご理解いただけましたか?
ここからは、正中のずれを治療する際の注意点をお伝えします。
治療しなくてよいケースもある
上記のとおり、噛み合わせに問題がなく見た目も気にならないのであれば、無理に治療する必要はありません。
しかし、噛み合わせに問題がなくても、ほかの身体的症状で思い当たることがあれば、一度相談だけでもしておくことをおすすめします。
矯正専門医ではなくても普段かかっている歯科医院があれば、そちらで相談してもよいです。
矯正で治せないケースもある
正中のずれが大きい場合、あごの骨が歪んでいたり曲がっていたりなどの骨格的な問題が多いです。
この、骨そのものの位置が歪んでいたり曲がっていたりする状態のことを「顎変形症」といいます。
顎変形症は矯正装置を入れてもよくはならないため、骨格に問題のある方は別の治療が必要になります
どちらの場合でも、その人によって治療を始めるタイミングや状態により治療方法も変わるため、矯正医ときちんと相談したうえで治療するか決めるのが大切です。
矯正治療でも治らなかった場合は
あごの骨に問題がある場合、矯正治療の前後で外科手術が必要になります。あごの骨を調整し、骨格を正常な状態に戻すための手術です。
この手術をする必要があるのか、またそのタイミングについては、精密な検査をすることでわかります。
外科手術は担当する医師により仕上がりに差がでてしまうことがあるため、治療の際には症例数の多い歯科医院に行き、きちんと相談したうえで手術するかを決めましょう。
正中のずれで悩んでいるなら歯科医へ相談しよう
正中がずれるのにはさまざまな原因があり、起こり得るトラブルも多いです。
矯正治療で治る場合も多いため、少しでも気になった方は矯正医やお近くの歯科医院へ相談してみましょう。
相談に行く際には、矯正治療でかかる費用や治療内容も詳しく聞いてみるのがおすすめです。
矯正治療といってもワイヤー矯正やセラミック矯正などいろいろあるため、自分に合った治療方法を選べるとよいですね。
まとめ
正中のずれにはあごの骨や噛み合わせに問題があることが多く、そのほとんどは矯正治療で治せます。
見た目や噛み合わせに問題がない場合は治療する必要はありませんが、放置しておくとさまざまなトラブルを引き起こす可能性もあります。
- 見た目や噛み合わせが気になる
- あごが疲れやすい
- 発音がしにくい
などの症状があれば、早めに歯科医院に相談するのがおすすめです。
また、子供のうちに発見、早期治療ができればその後の矯正治療で負担が少なくすむ可能性もあります。
頬杖をつかないようにしたり、同じ方でばかり噛まないようにしたりするなど日常生活の癖や習慣に気を付けることで正中のずれを防げる場合もあるため、みなさん気を付けましょう。