【監修:青山健一】
目 次
綺麗な歯並びをイメージして歯列矯正を始めたにも関わらず、諸事情で治療を断念するケースも少なくありません。
転勤・引っ越しなど、ライフスタイルが変わることでやむなく治療を断念することもあります。
なかには歯列矯正に失敗したり、歯医者さんとの折り合いが悪くて治療を中断したりする方もいます。
特に歯列矯正に失敗したときに気になるのが治療費の返金問題です。
この記事では、 歯列矯正で失敗した際の返金請求できるケース・失敗しないための歯科医院の選び方を歯科医が解説します。
歯列矯正の治療完了後に返金されることは少ない
歯列矯正の場合、厚生労働省が定めた咬合異常や手術を必要とする顎変形症の術前および術後の治療以外は、保険適用外になります。
そのため、治療費は高額になり経済的な負担は大きく、デンタルローンを組んで治療している人も少なくありません。
また、歯列矯正の場合、検査費用・装置代など事前に支払っているものが多く、途中で治療をやめても支払った金額が多くなります。
マウスピース矯正では、検査後すぐにマウスピースを作成するため、マウスピース作成にかかった費用は返金されないのが一般的です。
特に、歯列矯正の治療が完了した後は、返金される可能性は低いといえます。しかし、100%返金されないということではありません。
明らかに歯列矯正が失敗したと思われる場合は、返金を請求できるケースもあります。
歯列矯正の失敗例
歯列矯正の失敗例として代表的なものが、「噛み合わせが悪くなった」「いつまでも治療が終わらない」の2つです。
歯並びや噛み合わせの失敗は見た目や機能的なことだけでなく、身体にも悪影響を及ぼす危険性があります。
また、あまりにも治療期間がかかるのも失敗と思われるかもしれません。ここでは、この2つのケースについて解説します。
噛み合わせが悪くなった
歯科医に治療完了を告げられたのに、歯の噛み合わせが悪くなったケースも報告されています。
噛み合わせが悪くなると顎に負担がかかり、肩こり・頭痛の原因にもなります。
噛み合わせの悪い状態が続くとストレスにもつながり日常生活に支障を与えかねません。
歯列矯正したはずなのに噛み合わせが悪くなる原因はいろいろ考えられますが、本来抜歯すべきでない歯を抜いてしまったことも大きな原因のひとつです。
いつまでも治療が終わらない
歯の矯正治療において多いのが、治療期間に関する不安や不満です。
「歯医者に1年で終わると言われたのに2年経っても終わらない」など、先が見えない治療に不安や不満を抱いている方も少なくありません。
しかし、治療に時間がかかるからといって一概に失敗とはいえません。歯並びの状態が複雑でデコボコしているような場合は、どうしても治療期間は長くなります。
歯列矯正には、歯を動かすための「矯正期間」と固定するための「保定期間」があり、一般的な歯科治療よりも期間がかかります。
部分矯正で約6か月~1年、全体矯正では1年以上かかり、さらに同じくらい保定期間はかかると覚えておきましょう。
歯列矯正で失敗した際に返金を請求できるケース
高い費用をかけたのに歯列矯正に失敗したら、誰でも返金して欲しいと思うものです。
ここでは、歯列矯正で失敗したときに返金を請求できるケースをご紹介します。
明かな医療ミスがある
明らかな医療ミスで歯列矯正が失敗した場合は、法律的にも「不法行為」に該当するので、返金請求できます。
歯列矯正で明らかな医療ミスとは、「治療に必要な抜歯をしていない」「不必要な抜歯をした」などです。
また、事前の検査が不十分で治療すべき歯を見落すなどのミスで、治療期間が延びてしまったのも医療ミスと考えられます。
歯列矯正で返金されない可能性があるケース
歯列矯正で失敗したからといってすべてが返金されるわけではありません。
返金を請求できるのは、あくまでも明らかな医療ミス・説明義務違反の場合で、下記のような理由で歯列矯正が上手くいかなかったときは返金されない可能性が大きくなります。
矯正器具を正しく装着していなかった
歯列矯正にはいくつかの方法がありますが、ブラケットと呼ばれる器具を使用して、ワイヤーに力を加え、歯を動かしながら矯正していくのが一般的です。
この矯正器具を正しく装着していないと歯列矯正の失敗にもつながります。また、長い時間矯正器具を触ったり、装着時間を守らなかったりするのも失敗を引き起こします。
このような行為が原因で矯正に失敗したときには、返金を請求するのは難しいです。
医師の指導に従わなかった
医師には治療に関する説明義務がありますが、医師の説明をよく聞かずに治療を継続した結果、歯列矯正に失敗した場合は返金されないことに注意しましょう。
矯正治療では歯科医の指示を守ることが、成功への近道です。
歯列矯正で綺麗な歯並びを手に入れるために、どのようなことをしなければならないのかをしっかりと理解することが重要です。
治療を中断した場合の返金は?
歯列矯正は、1年以上治療期間がかかるので、転勤や引っ越しなどで通院できなくなることも少なくありません。
また、矯正歯科との折り合いが悪く途中で歯科医を変えることもあります。このような場合、それまで支払った費用はどうなるのか解説します。
理由にかかわらず返金される
歯列矯正治療の契約は、一般的な医療治療と同様に「準委任契約」になります。
準委任契約とは、治療の結果に対するものではなく治療の過程で対価を支払うことを約束した契約です。
そのため、治療の結果に対する責任を負うものではありません。
反対に、理由に関わらず患者さまはいつでも中途解約できるのが準委任契約の大きな特徴です。
そのため、中途解約の場合、歯科医院はそれまでにかかった治療費の対価を差し引いた金額を返金する義務があります。
ただし、あくまでも治療費の対価であって、100%の金額が戻るわけではありません。
返金額は治療の進行度によって決まる
民法では、中途解約がされた場合、治療の割合に応じて請求権が認められていますが、この「治療の割合」が具体的にどのぐらいなのかは曖昧です。
日本臨床矯正歯科医会では、治療の進行度によって下記のような返金の目安を設定しています。
永久歯列期のマルチブラケット装置による治療の場合を例にあげます。下記は、既に全額入金となっている患者さまに対しての返金する割合の目安です。
- 全歯の整列
- 犬歯の移動
- 前歯の空隙閉鎖
- 仕上げ
- 保定
全歯の整列はおよそ60~70%、犬歯の移動はおよそ40~60%、前歯の空隙閉鎖はおよそ30~40%、仕上げはおよそ20~30%、保定はおよそ0~5%です。
途中で歯列矯正治療をやめる場合、矯正歯科とのトラブルに発展するケースもあり、特に返金の請求には注意が必要です。
信頼できる人や専門の機関に相談することも大切になります。
歯列矯正で失敗しない歯科医院の選び方
歯列矯正で失敗しないためには、信頼できる歯科医院を選ぶことが重要です。
実績・評判はその判断基準の1つになります。実績・評判について詳しくみていきましょう。
実績を確認する
歯列矯正に限らず、その歯科医にどのような治療実績があるのかは重要な判断基準です。
治療実績が豊富であれば、さまざまなケースに対応できるため安心して治療が受けられます。
ホームページなどでは、治療実績などが紹介されているので、チェックしてみてください。実績が記載されていない場合は、直接歯科医に聞くことも必要です。
歯列矯正治療は歯科の中でも、専門分野になるため専門医としての経験がどのくらいあるのかを確認しましょう。
評判や口コミを確認する
矯正歯科が近所にあるのなら、近所の人に評判を聞くことも選択肢のひとつです。インターネットの口コミなども参考にしてみましょう。
具体的にどのような点がよいのかをきちんと述べているコメントや、メリットだけでなくデメリットもきちんと言及しているようなコメントは信頼できます。
歯列矯正で失敗したくないなら信頼できる歯科医院に相談
歯列矯正には高額な費用がかかるため、失敗したくないと思うはずです。
「万が一失敗したらどうすればいいのだろう?」「失敗したら費用は返金されるのだろうか?」と不安に思う方もいます。
歯列矯正で失敗したくないのであれば、信頼できる歯科医のもとで治療を受けるようにしましょう。
口コミだけでなく、歯科医の実績や経験を確認することが大切です。また、矯正相談やカウンセリングを活用して、歯科医との相性を確認するのも成功への近道になります。
まとめ
歯列矯正で失敗した際の返金請求できるケース・失敗しないための歯科医院の選び方を解説しました。
歯列矯正で失敗したり、医師との折り合いが悪く治療途中で転院したりした場合に気になるのが返金の問題です。
歯列矯正が完了した後で治療費の返金を請求することは難しいですが、明らかな医療ミス・医師の説明不足の場合は返金請求が可能になることもあります。
また、何らかの理由により治療を途中で解約する場合は、治療の進行度によって一定の金額が返金されます。
歯列矯正で失敗しないためには、矯正歯科の実績・評判・口コミなどをチェックして信頼できる歯科医を選ぶことが大切です。
信頼できる歯科医のもとで、安心して矯正治療を受けてください。