【監修:青山健一】
目 次
「矯正治療を行っていたら、歯髄壊死になった」と聞いたことがある人も多いと思います。矯正治療をしていて歯髄壊死という状態になってしまうのは、嫌なはずです。
しかし、歯髄壊死の概要や歯髄壊死と矯正治療の関係について知っている人は少ないと思います。
そこで今回は、矯正治療と歯髄壊死について知りたい方に向けて歯髄壊死の概要や矯正治療が原因で歯髄壊死になるのかなどについて解説します。
矯正治療のメリットやデメリットについても紹介するため、矯正治療に対して不安な気持ちを持っている人はぜひ最後まで読んでみてください。
歯髄壊死の概要
歯髄壊死とは、歯髄が死んでしまった状態です。歯髄という言葉自体よく分からない人も多いと思います。
歯髄は歯の内側の組織です。歯の外側をエナメル質といい、エナメル質の内側を象牙質といいます。エナメル質より内側にあるのが歯髄です。
歯髄には、歯のなかにある神経や血管があります。歯髄にある神経や血管が死んでしまった状態が歯髄壊死です。
歯髄壊死と聞くと滅多にないような気がしますが、歯髄壊死の一歩手前の歯髄炎になっている人は多いです。
虫歯が原因で、多くの人が歯髄炎になっています。虫歯が進行し歯の神経を抜く治療をした人も多いはずです。
虫歯で歯髄炎や歯髄壊死になると神経を抜きます。そのため、神経を抜いたことがある人は歯髄炎や歯髄壊死になっている可能性が高いです。
歯髄壊死の症状
歯髄壊死の症状は、無痛と見た目の変化の2つがあります。「虫歯で激痛を感じていたけど、急に痛みを感じなくなった」という話を聞いた人も多いはずです。
これは、虫歯が神経に達して痛みが強く出た後に神経の全てが虫歯にやられ、壊死してしまうため起こります。
痛みや触られた感覚は神経を通して脳に伝達されますが、神経が壊死してしまえばその歯に伝わっている情報は脳に伝達されません。
そのため、歯髄壊死になってしまえば無痛になります。
また、歯髄壊死すると歯の色がどんどん黒くなっていきます。これは、歯髄を通っている血管も死んでしまうからです。
血管を通る血液が栄養を運び、代謝が行われます。また、歯にも血液が届き代謝が行われるのです
しかし、歯髄壊死は歯髄にある血管も死んでしまうため、正常な代謝機能が発揮されず黒くなってしまいます。
歯髄壊死の主な原因
歯髄壊死になる原因は、さまざまあります。歯髄壊死になる原因を理解すると、歯髄壊死にならないために必要なことが分かるはずです。
そのため、歯髄壊死の原因を3つ紹介します。
虫歯の放置
歯髄壊死の原因の1つ目は、虫歯の放置です。虫歯の進行はエナメル質から進んでいき、象牙質から歯髄へと進行していきます。
虫歯が歯髄まで進行すると歯髄炎となり、放置していくと歯髄壊死になります。
そのため、歯髄壊死を防ぐためには虫歯にならないことと虫歯になったらすぐに治療することの2つが大事です。
咬合性外傷
歯髄壊死の原因の2つ目は、咬合性外傷です。
咬合性外傷とは、噛む力や歯ぎしりなどによって歯に過度なストレスが加わり起きる外傷をいいます。
主な咬合性外傷の症状は、歯の詰めものが壊れたり顎関節症になったりなどです。また、歯髄に炎症が生じる可能性もあり、ひどい場合は歯髄壊死が起こります。
咬合性外傷の原因はさまざまあり、歯科医が原因を評価し改善をはかります。咬合性外傷の原因が歯ぎしりだと、夜にマウスピースを着用する方法で改善する場合が多いです。
咬合性外傷を自分で判断するのは難しいため、気になる場合はすぐに歯科医に相談しましょう。
外傷
歯髄壊死の原因の3つ目は、外傷です。
転倒して歯を地面に強くぶつけてしまったりスポーツをしているときにボールや肘が歯に当たったりなど、歯に強い衝撃が加わると歯髄壊死が起こる可能性があります。
もちろん、歯に強い衝撃が加わると絶対に歯髄が壊死するわけではありません。しかし、歯に強い衝撃が加わった後に歯が変色していると歯髄壊死を疑います。
そのため、歯になにかぶつかった後に歯が変色したらすぐに歯科医に診てもらいましょう。
歯列矯正が原因で歯髄壊死になるのか?
矯正治療が原因で歯髄壊死になる可能性は、残念ながら0とはいえません。
矯正治療が進んでいくなかで、歯髄壊死になる場合があります。しかし、矯正治療前に歯髄壊死になる可能性の判断はできません。
そのため、矯正治療をしてみないと歯髄壊死するかどうかは分かりません。
また、矯正治療中は矯正器具に食べカスがついたり歯磨きをしても汚れが残りやすかったりするため、虫歯になる可能性が高いです。
虫歯になってしまい、放置すると歯髄壊死になる場合もあります。そのため、歯を丁寧に磨くことはもちろん大事ですが、定期的に歯科医に歯をみてもらいましょう。
矯正治療で歯髄壊死になる可能性は0ではないため「絶対に大丈夫」とはいえませんが、起こる可能性は低いです。
不安な人は、一度歯科医に相談するのがおすすめです。下記のリンクから矯正治療の相談をご活用ください。
歯列矯正のメリット
矯正治療の主なメリットは3つあります。矯正治療のメリットを知り、ご自身の悩みを解決できそうか検討してみましょう。
見た目の変化
矯正治療を行うメリットの1つ目は、見た目の変化です。
矯正治療は、歯並びを改善します。歯並びが崩れていると口元が見られる場合にストレスを過度に感じてしまう場合があります。
矯正治療を行い歯並びがきれいになり見た目が変化すると、ストレスを感じづらくなる可能性も高いです。
虫歯や歯周病の予防になる
矯正治療を行うメリットの2つ目は、虫歯や歯周病の予防になることです。
歯並びが崩れていると、歯磨きがしづらく歯に汚れが残りやすいです。歯に汚れがある状態が続くと虫歯や歯周病になるリスクが上がります。
歯並びがきれいになると、歯みがき後の汚れが残りづらくなります。そのため、矯正治療は虫歯や歯周病になりやすくなる可能性が高いです。
身体全体のバランスを整えられる
矯正治療を行うメリットの3つ目は、身体全体のバランスが整えられることです。
歯並びが崩れて噛み合わせがズレていると、筋肉の負担は左右均等にはなりません。そのため、左右どちらかに過度なストレスが加わってしまいます。
そのようにどちらか一方に過度なストレスが加わることによって、身体のバランスは崩れていきます。
矯正治療をしてきれいな歯並びを手に入れることで、噛むときの左右の負荷も同等になりやすく身体のバランスも整う可能性が高いです。
健康になる
矯正治療を行うメリットの4つ目は、健康になることです。
ここまで説明した通り、矯正治療を行うと虫歯や歯周病の予防になったり身体のバランスが整ったりと健康になりやすいです。
この他にも矯正治療を行い噛み合わせがよくなると顎関節症の予防になり、食べ物を十分に噛めるため食べ物を細かくできます。
そのため、胃や腸にも負担をかけづらくなります。このように矯正治療を行うと、健康になる可能性が高いです。
歯列矯正で起こり得るリスク
矯正治療はメリットだけでなく、デメリットも存在します。
デメリットを知らないと実際に矯正治療を始めたときに「こんなことはなかった」と感じてしまう可能性が高いです。
そのため、矯正治療のデメリットを3つ紹介します。
痛み
矯正治療のデメリットの1つ目は、痛みです。矯正治療で感じる痛みは2つあります。
1つ目は、歯を移動させるために歯が動くように与えたストレスによる痛みです。2つ目は、矯正器具が口の中に当たって炎症がおきて感じる痛みです。
歯に加わるストレスの痛みの場合は主な対処法はありません。しかし、矯正期間が経過するにつれ徐々に痛みが減る場合が多いです。
矯正器具が当たる痛みが不安な場合は、マウスピース矯正を選びましょう。マウスピース矯正はワイヤー矯正よりも凹凸が少ないため、痛みが感じづらいです。
そのため、痛みが不安な方でも個人差はありますがそこまで不安に感じる必要はありません。
歯根吸収
矯正治療のデメリットの2つ目は、歯根吸収です。
歯根吸収とは、歯の根が短くなってしまうことをいい、矯正治療を行うことで数%~10%程度の確率で起こる場合があります。
歯の根が短くなると、歯周病や加齢によって歯が抜けやすくなる可能性が上がります。不安な方は歯科医と十分に相談するようにしましょう。
後戻り
矯正治療のデメリットの3つ目は、後戻りです。
後戻りとは、矯正治療によってきれいな歯並びを手に入れた後に歯並びが戻ってしまうことをいいます。
かなりの費用と期間を矯正治療にかけたのに歯並びが元に戻ってしまうのは、ショックなはずです。
後戻りは、リテーナーという保定装置をつけることで防げる可能性があります。
そのため、後戻りを防ぐためにきれいな歯並びになった後もリテーナーという保定装置をつけましょう。
歯列矯正で悩みがある場合は歯科医に相談しよう
矯正治療で不安や悩みがある場合は、歯科医に相談するようにしましょう。インターネットで矯正治療についてさまざまな情報を手に入れられます。
しかし、矯正治療は人によって方法や治療期間も異なるため、手に入れた情報が自分に役立つかどうかは分かりません。
そのため、実際に歯科医に自分の歯並びを診てもらい相談した方が、より自分にあった情報を手に入れられます。
また、今までたくさんの矯正治療を行ってきた歯科医は知識だけなく経験もあるため、不安や悩みを伝えても親身になって話を聞き正しい情報を教えてくれるはずです。
そのため、矯正治療について不安や悩みがある場合は歯科医に相談しましょう。
まとめ
今回は、矯正治療と歯髄壊死について知りたい方に向けて歯髄壊死の概要や歯髄壊死の症状について紹介しました。
歯髄壊死という言葉は聞きなれないかもしれませんが、さまざまな原因で歯髄壊死になっている人はある程度います。
矯正治療前に歯髄壊死になるかどうか判断するのは難しいです。しかし、矯正治療が原因で歯髄壊死になる可能性はありますがそこまで高くありません。
そのため、過度に心配はしないようにしましょう。また、矯正治療の悩みや不安は歯科医に相談し、解消していきましょう。