【監修:青山健一】
目 次
歯磨きをしているときや他の人がにっこり笑うのを見たときなど、思わず自分の歯並びが気になることがありませんか。
自分が周りからどう見られているのかは誰でも気になるものです。
特にすきっ歯は年代を問わず現れる可能性のある身近な悩みです。
ときには大きなコンプレックスになったり、誰にも相談できないと感じたりすることもあります。
今回は歯科医がすきっ歯に関する原因と治療方法を紹介します。
是非参考にして信頼できる歯科医に相談しましょう。
すきっ歯を自力で治そうとするのは危険
以前アメリカで中央の上の前歯2本を輪ゴムでくくり、正中離開と呼ばれる前歯のすきっ歯を自分で治療をするのがブームとなりました。
しかし、これは歯並び・歯と歯茎との関係・歯を通る神経などを考えるとあまりに危険な行為です。
実際に歯科医師会からはすぐ注意喚起が出されました。
すきっ歯は自力では治療できないと認識しておくべきでしょう。
すきっ歯の原因
すきっ歯の原因は生まれつきのものから習慣的なものまで大きく分けて5つあります。
その多くは口腔ケアをすれば改善するものもあるのです。
具体的にみていきましょう。
先天性欠損・欠如
先天性欠損・欠如とは生まれつき永久歯をつくれない素因を持つために、歯と歯の間の隙間が広く見えてしまうすきっ歯です。
実際に歯と歯の隙間が広いわけではなく、歯の本数が少ないために一見すきっ歯のように見えます。
主な治療方法としてはブリッジ・インプラント・入れ歯などがあげられます。
矮小歯
矮小歯とは一部の歯が小さいために隙間が空いて見えるすきっ歯です。
すべての歯の大きさが顎の大きさに対して小さい場合と、数本の歯が小さいだけの場合があります。
例えば前歯2本が小さいだけでも正中離開と呼ばれるすきっ歯となります。
歯並びは良くても歯が小さいためにすきっ歯に見えてしまうのが矮小歯によるすきっ歯の特徴です。
上唇小帯低位付着
上唇小帯低位付着とは上唇小帯が歯の生え際に近い位置に付着し生じるすきっ歯です。
上唇と歯茎とつなぐ上唇小帯は通常歯茎の中間の高さへ付着しています。
生まれた時には低い位置に付着していても、乳歯から永久歯に生え変わる7歳頃までには中間の高さまで上がることも多いのです。
永久歯は歯茎からハの字に生えて徐々に閉じていきますが、上唇小帯が低い位置に付着していると歯間乳頭が大きく発達しすぎて歯が閉じられなくなることがあります。
これが上唇小帯低位付着によるすきっ歯です。
生え変わりの時期まで上唇小帯が低位に付着していれば、唇小帯を正しい位置へ移動させる形成術を行うこともあります。
舌や口元の悪い癖
舌や口元の悪い癖によりすきっ歯や出っ歯になることもあります。
舌癖の具体例をあげてみましょう。
- 舌で歯を押す癖
- 下唇を噛む癖
- 指を噛んだり吸ったりする癖
こうした舌癖が原因で歯と歯の間に隙間ができたり出っ歯になったりするのです。
予防方法としては舌を上顎につけるように保ち、下唇や指を噛まないことを習慣化すればきっ歯の悪化を防ぐことができます。
治療には悪い癖と歯の両方を治すことが重要となります。
歯周病
歯周病によるすきっ歯とは歯茎の状態が悪化し、歯並びが崩れることで隙間が広がった状態をいいます。
歯周病の治療とともにすきっ歯治療を進めることになります。
すきっ歯が引き起こす問題
すきっ歯は主に見た目と発音の2種類の問題がありますので注意するようにしましょう。
見た目に影響
多くの人が最初に気にするのは見た目の問題でしょう。
すきっ歯をからかわれてコンプレックスになってしまった人や、他人に自分の歯を見られるのが嫌になってしまった人もいます。
見た目にコンプレックスを抱えてしまうと人と話しづらくなるものです。
すきっ歯がもたらす見た目のコンプレックスは、人によりさまざまで決して小さくありません。
発音がおかしくなる
前歯の真ん中のあたりに隙間があると、発音するときに息が漏れて、相手から何か聞き返されることがあります。
特にサ行とタ行の発音の際に聞き取りにくくなる傾向があります。
すきっ歯治療のメリット
すきっ歯を治療するとさまざまな問題が解決できます。
すきっ歯治療により体が健康になるだけではなく外見上の悩みも解決できるのです。
審美性が上がることで、自分に自信が持てるようになり人前で歯を見せることにコンプレックスを抱かずにすむようになります。
すきっ歯の治療方法
すきっ歯の治療法で広く行われているのは5種類あります。
それぞれにメリットやデメリットがあるため、治療する際には比較検討が大切です。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は金属やプラスチック製の矯正器具を歯の一本一本に接着し、そこへワイヤーを通して歯を移動させ隙間を埋めていく方法です。
すきっ歯だけではなく矯正治療のための一般的な方法です。
ワイヤー矯正のメリット
長年広く行われているワイヤー矯正にはたくさんのメリットがあります。
- 広範囲のすきっ歯を同時並行で治療できる
- 歯の形や大きさを変えずにすむ
- 歯を削らずにすむ
- 出っ歯や歯並びの悪さなどによるすきっ歯も治せる
- 比較的隙間の広いすきっ歯でも治せる
多少歯並びが悪くても広範囲にわたってすきっ歯の治療できる点がワイヤー矯正の最大のメリットです。
ワイヤー矯正のデメリット
ワイヤー矯正にはある程度のデメリットがあります。
- 器具が目立つ
- 簡単には矯正器具を外せない
- 後戻りを防ぐ保定装置をしなければ元に戻りやすい
- 治療が長期
- 費用が高額(裏面装着はより高額)
- 歯磨きしづらい
- 器具装着部は着色しないため、矯正中の器具周りの着色が目立つ
審美性が落ちる点と長期の通院・費用の高さがネックといえるでしょう。
マウスピース矯正
マウスピース矯正はプラスチック製のマウスピースにより歯を矯正し、歯を移動させることですきっ歯を治療する方法です。
ワイヤー矯正と同様、すきっ歯だけではなく一般的な歯並び矯正として用いられる方法です。
マウスピース矯正のメリット
矯正治療としてはワイヤー矯正と並んで2大選択肢となるほど、マウスピース矯正にはさまざまなメリットがあります。
- 広範囲のすきっ歯を同時並行で治療できる
- 歯の形や大きさを変えずにすむ
- 歯を削らずにすむ
- マウスピースが透明で治療中も目立ちにくい
- 器具が邪魔になりにくい
- 食事や歯磨きの際には矯正器具を取り外せる
- ホワイトニングを並行できる
広範囲に行えるうえ自分の意思でマウスピースが外せるため、食事・歯磨きの際にも取り外しが可能な点が最大のメリットです。
ホワイトニング液をマウスピース内に入れてからはめることでホワイトニングを並行できますがリテーナーを使う保定期間中がおすすめです。
マウスピース矯正のデメリット
マウスピースが取り外し可能だからこそ生じるデメリットがあります。
- 着用時間を守らないと効果が出ない
- 装着忘れが起こる
- 後戻りを防ぐ保定装置をしないと短期間で元に戻りやすい
- マウスピースを衛生的に保つ必要がある
- 治療が長期
- 比較的費用が高額
食事後には装着忘れが起こりやすく、外しっぱなしでは効果がないためきちんと着用時間を守る必要があります。
プラスチック製のためひとつひとつの矯正器具自体は高くありませんが、徐々に歯を動かしていくためにマウスピースを段階的に新しく作るため結果的に治療費は安くありません。
セラミッククラウン
歯を埋める治療法です。
セラミックとの密着度を高めるために歯の全周を削ってからセラミックを被せます。
セラミッククラウンのメリット
汎用性と審美性の高さがセラミッククラウンの大きなメリットといえるでしょう。
- 治療が矯正に比べ短期
- 被せもので審美性を上げられる
- 歯の移動がない
- ある程度なら歯並びによるすきっ歯を治せる
噛み合わせを考えつつセラミック製のかぶせものをするため、正中離開のような部分的なすきっ歯の治療に向いています。
セラミッククラウンのデメリット
費用面と技術面がセラミッククラウンの主なデメリットがあります。
- 広範囲のすきっ歯には向かない
- 削る歯の割合が大きい
- セラミックのため比較的高額
歯の全周を削るうえに一本一本セラミックのかぶせものを製作するため、広範囲なすきっ歯治療にはあまり向きません。
ダイレクトボンディング
ダイレクトボンディングとはレジン・プラスチックなどで元の歯の隙間を充填する治療法です。
ダイレクトボンディングのメリット
すきっ歯の治療のなかでは比較的簡単かつ安価な点がダイレクトボンディングの大きなメリットです。
- 歯を削らずにすむ
- 治療が1回で完結歯の移動がない
- 再治療が簡単
- 素材が安く治療費も比較的安価(治療本数による)
歯を削る必要がなく1回で治療が終わるので治療に時間をあまりかけられない方にはおすすめです。
ダイレクトボンディングのデメリット
ダイレクトボンディングは素材としての問題がデメリットに直結します。
- 変色の可能性がある
- 元の歯との継ぎ目が気になることがある
- 素材が弱く欠けることがある
- 歯の高さは変えないため横幅だけ大きくなる
- 治療後にホワイトニングできない
徐々に着色していくのが難点でしょう。
素材の着色は天然歯よりも白くしにくいうえポリッシングもできません。
タバコ・お茶・ワイン・コーヒー(特にブラックコーヒー)などは特に着色しやすく、カレーライス・ミートソース系の食事も着色してしまいます。
ホワイトニングしても充填部分の色は変わらず、再治療する場合もあります。
なおホワイトニングを希望する場合には治療前に行っておくのが重要です。
ラミネートベニア
ラミネートベニアはセラミック製の薄い板のようなものを歯の一本一本に貼りつける治療法です。
密着度を上げるために歯の表面を一部削ってから接着します。
ラミネートベニアのメリット
ラミネートベニアのメリットは、セラミッククラウンのように全面を覆うのではなく表面だけなので、審美性の面ですきっ歯治療に大変向いています。
- 歯を削る量がセラミッククラウンより少ない
- ラミネートベニアの色によっては白く見せられる
- 矯正よりは治療が短期
- ダイレクトボンディングよりは強度が高い
- 変色しにくい
変色しづらく比較的強度のあるラミネートベニアは正中離開などのすきっ歯治療に向いています。
ラミネートベニアのデメリット
ラミネートベニアのデメリットは歯に貼りつけるだけのため強度面や対応できない症例がある点です。
- 歯を削る必要がある
- 歯並びの崩れが原因のすきっ歯には対応しづらい
- 荷重のかかる奥歯には向かない
- 欠けやすい
ラミネートベニアは貼りつけるだけの治療なため、歯並びの大きな乱れのある場合や臼歯など荷重のかかる部分への治療には適していません。
すきっ歯の治療に保険適用は効くのか
すきっ歯の治療では健康保険がほとんど効かないといわれています。
例外は虫歯治療のダイレクトボンディングと同時に隙間を埋めた場合になります。
歯科治療ではすきっ歯は審美目的の側面が強いため基本的に保険が効かないのが現状です。
保険適用の詳細については歯科医にご相談ください。
すきっ歯矯正の歯科医の選び方
すきっ歯の治療にはいくつかの方法があるため、技術を含めてスタッフや医師と相性の良い医療機関を選択することが大切です。
いくつかポイントをあげておきますので参考にしてください。
- 説明が丁寧で理解しやすいこと
- 患者の意見にきちんと耳を傾けてくれること
- 歯科医とスタッフに技術があること
- 問題時にも迅速丁寧に対応してくれること
- アフターケアがしっかりしていること
料金の安さや近所にあるなどの安易な理由で歯科医院を選ばないように注意しましょう。
相談して納得がいかなければ、再度説明を受けるかセカンドオピニオンを受けるのもひとつの手段です。
全額自己負担であり長期的な治療となるため納得できる医院を選ぶようにしましょう。
まとめ
すきっ歯の原因と治療方法について解説してきました。
乳幼児期のすきっ歯は成長につれ自然消滅していく一方で、消滅しないものもあります。
すきっ歯で精神的苦痛を感じている場合や物理的な不便さを感じているのなら、決してひとりで悩まないでください。
自力で治そうとしないで納得できる歯科医院できちんと治療していきましょう。