【監修:青山健一】
目 次
受け口は輪郭だからとあきらめていませんか。
実は受け口は下顎前突ともいわれる歯科の専門分野であり、改善できます。
受け口には見た目以外のデメリットが多く、そのまま放っておけばひどくなる可能性があるものです。
今回は受け口に悩む方々へ、受け口についての知識や改善方法をご紹介します。
受け口の特徴
受け口は下の前歯が上の前歯より前に出ていることが一番の特徴です。
また下顎が前に突き出しぎみになっている場合が多く、しゃくれ顎といわれてしまうこともあります。
小さいときはあまり目立たなくても10歳を過ぎる頃から下顎が急激に成長するため目立つようになることもあるものです。
受け口のままでは噛み合わせが悪く、発音にも支障が出る場合もあります。
受け口の主な原因
受け口になってしまう原因はどのような理由があるのでしょうか。
まずは受け口の主な原因を解説します。
遺伝
顎の形や歯並びは遺伝しやすく、特に歯並びの3割は遺伝ともいわれています。
遺伝が原因で受け口になるということはよくあることです。
また、受け口は生活習慣などによってなることもあるため、先天的な理由がある場合はより症状を悪くすることも考えられます。
前歯の位置
受け口の症状の1つとして前歯の位置トラブルがあります。つまり上の前歯より下の前歯の方が前に出ているのです。
この場合、前歯が内側に傾いていることが多く、反対咬合と考えられます。
また逆に前歯が外側に向いている場合は、いわゆる出っ歯という症状になるのです。
この場合、顎に大きなトラブルがなければ、前歯の矯正治療をするだけでも改善されます。
口呼吸
受け口の原因の1つに口呼吸があるといっても、なかなかピンとこない方も多いかも知れません。
しかし実は口呼吸も受け口の原因として注意すべきことなのです。
口呼吸は下顎を前に押し出す力が発生するため、長期間続けているとだんだん下顎が前方に出てしまい上下の噛み合わせが悪くなっていきます。
また、口呼吸と合わせて関係するのが舌の位置です。
鼻呼吸の場合、舌は上顎の天井部分に付いた状態にありますが、口呼吸をすると舌はそこから離れ下がってしまいます。
この状態は舌で下の前歯に微量な圧を掛けてしまい、それが毎日続くことでだんだん下前歯が外側に倒れ、顎を押し出すことへつながるのです。
特に子どもは骨格がまだ成長しきっていないこともあり、受け口になるスピードも早いといえます。
下顎が上顎より先に成長する
基本的には、上顎が下顎より先に成長していき、それに合わせるように下顎が成長していきます。
しかし上顎の成長に問題があった場合や、下顎の成長が早いなどの成長トラブルが起こる可能性はあり、それが受け口の原因になってしまうのです。
骨の成長は成人になると止まってしまい、そうなってからでは矯正などの治療はできなくなってしまいます。
その場合、骨切などの外科手術などの大がかりな治療が必要になる可能性もあります。
そのため、受け口の治療はできるだけ子どものうちに、早めに歯科医師に相談しましょう。
受け口治療の重要性
受け口治療が重要といわれる大きな理由の1つが、骨格の影響がある場合に大がかりな治療が必要になるからです。
受け口は骨格に関係する場合もあり、成長とともに治療の難易度が上がってしまいます。
それによって治療期間の長期化や矯正治療だけでの対応が難しくなってしまうのです。
また、噛み合わせが悪いことで体のゆがみが発生するなど、口腔や顎以外にも身体的な問題が起こる可能性があります。
受け口の見た目からコンプレックスを抱えてしまい、精神的な問題を抱えてしまう人もいるでしょう。
そのため受け口の人にとって治療はとても重要であり、できればできるだけ早めにしっかり行うことが大切です。
受け口と関連する症状
受け口は噛み合わせの悪さなどの問題以外にも、さまざまな悪影響を及ぼすものです。
続いて、受け口に関連する症状をご紹介します。
顎関節症
顎関節症の症状には、咀嚼しているときの痛み、顎関節を動かしたときの雑音、口の開かない、開きにくいなどがあります。
主な原因は以下のようなものです。
- 歯ぎしり
- 食いしばり
- 歯並びや噛み合わせのトラブル
- ストレス
- 外傷
その中でも、特に原因として多いのが歯並びや噛み合わせのトラブルです。
歯並びやかみ合わせが悪いと物を噛むときに少しずつ顎の骨がズレてしまいます。
また、噛むたびに顎に負担が掛かるため顎関節が疲労状態となってしまうのです。
食事など物を食べることは毎日連続的に行うため、顎の骨はだんだんズレが進行し、そこに炎症が起こり痛みを感じることもあるでしょう。
そして顎関節症になると顎関節のトラブルだけでなく、頭痛・肩こり・首の痛み・腰痛などのトラブルの原因になる可能性があります。
言葉の発音の悪化
受け口は歯並びが悪いため、言葉を発するときに歯の隙間から息もれが生じてしまうことがあります。
それによって言葉の発音の悪化が起こってしまうのです。
また顎にトラブルのある受け口の場合は、顔の歪みなどから発音しにくく聞きづらい発音になってしまうこともあります。
発声トラブルはコミュニケーション的にもデメリットです。
発音トラブルを抱えたまま成長していくと、人間関係が希薄になったり、性格に影響を与えたりすることもあります。
全身のバランスへ悪影響を及ぼす
受け口だけでなく、歯並びや顎にトラブルがある場合、全身に悪影響を及ぼし、体のバランスまで悪くなることがあります。
歯並びや顎などにトラブルがあると、左右均一に物を噛むことができません。
歯と歯の間に隙間ができたり同じ力で接触することができなかったりして、偏った咀嚼が毎日続くことになります。
それによって顎関節に影響を及ぼし、肩や首などにも影響し、そこから背骨や腰など全身のゆがみに影響が出てしまうのです。
また歪みが起こることでさまざまな神経にも影響が出るなどの症状が出てしまう可能性もあります。
受け口の治療方法
受け口を放置するとさまざまなトラブルが発生することを解説しました。
では受け口はどのように治療できるのでしょうか。続いて受け口の治療方法を解説します。
ワイヤー矯正
まず挙げられるのがワイヤー矯正です。
ワイヤー矯正は矯正力が強力で対応できる範囲が広いため、受け口治療にはとても適しています。
特に下の歯を後ろに下げる必要があり、その必要性が大きいほどワイヤー矯正がおすすめといえるでしょう。
またワイヤー矯正の1つである裏側矯正もおすすめです。
特に大人の場合、歯の裏側にワイヤーを使用するので気づかれにくく人気があります。
ただし場合によっては抜歯が必要となる場合もあるため、事前に歯科医師に抜歯の有無についても確認しましょう。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は上下前歯の噛み合わせを矯正したい人に、とても人気の高い方法です。
マウスピース矯正は透明なマウスピースを装着するため、見た目もワイヤー矯正より目立ちません。
ただし、成人も子どももマウスピース矯正は歯の噛み合わせが原因の受け口治療に適しています。
輪郭整形
輪郭整形は主に成人の受け口治療の場合になります。
特に顎の骨に問題がある場合、歯科矯正では効果が出ないため輪郭のいわゆる骨切り手術をする治療法です。
大がかりな手術になりますが術後は劇的な変化が期待できるでしょう。
ただし、幼少期に受け口の矯正をしておけば、成人になってここまでの治療をせずに済むこともあります。
将来こうした治療をしなくても済むように、幼少期からの治療が大切なのです。
受け口を予防する方法
受け口の原因が遺伝でないことや成長期の子どもである場合は、生活習慣や癖などを直すことで予防することができます。
例えば幼児期に親指しゃぶりの癖や、下前歯を前に突き出したような笑顔が癖になっているようであればやめさせましょう。
また、口呼吸も受け口の原因となるため、早めに改善する必要があります。
親が少しでもお子さんの受け口に気付いたら、一刻も早く歯科医師に相談することがベストな予防といえるでしょう。
そのためにもお子さんの表情などをチェックすることも大切です。
受け口治療を受ける際の歯科医師を選ぶポイント
受け口の治療は幼少期から行うことが大切だと解説しました。
大人になってからの受け口治療は難易度が高く、歯科医師によっても治療の結果が左右されてしまいかねません。
最後に受け口治療を受ける際の歯科医師を選ぶポイントをご紹介します。
実績があること
同じ歯科医師といっても受け口治療の実績が少ない医師と多い医師では結果が違う可能性があります。
できるだけ実績豊富な歯科医師を選ぶことはとても大切です。
実際、矯正歯科であっても実績は年に数件などという歯科医師も現実にはたくさんいます。
そのため歯科医師選びでは実績が多いことは重要なポイントなのです。
費用が明確になっている
矯正治療は自由診療の範囲の場合も多く、それなりにお金がかかります。
必要な費用や料金体系も歯科医院によって設定が異なるため、それらが明確になっている歯科医師を選びましょう。
一般的な費用をチェックし、それより大幅に高い場合や安い場合は、その理由も確認することが大切です。
また安い場合は毎回の調整料金など含まれているのかや、別料金ならどのぐらいかかるのかなどしっかり確認します。
良心的な歯科医師であれば費用に関する疑問にも丁寧に説明してくれることでしょう。
治療中・治療後のメンテナンスがしっかりしている
治療中や治療後のメンテナンスがしっかりしているかどうかも歯科医師を選ぶ際のポイントです。
治療中には思いがけないトラブルが起こったり、治療中に不安や疑問がでてきたりすることもあります。
その際の丁寧に対応によっても、安心して治療に専念できるかどうかが変わってしまいます。
また、治療後も歯は元に戻ろうとする力があるため、リバウンドしないためにも治療後のメンテナンスはとても大切です。
こうしたメンテナンスがいき届いているかどうかも確認しましょう。
まとめ
以上、受け口の重要性に関係することをご紹介しました。
受け口の場合、成長するにつれて治療の難易度が高くなるため、特に幼少期からの早期治療が重要です。
できるだけ早い方が改善しやすく、費用も安く抑えられるでしょう。
もちろん、成人になってしまった人でもあきらめることはありませんが、治療が大がかりになる場合も想定されます。
信頼できる歯科医師に相談をして、適切な治療を行ってもらうことが大切です。