【監修:青山健一】
目 次
受け口で悩んでいる方は意外と多いです。歯列矯正で改善が見込める場合が多い受け口ですが、保険が適用されないことが多く高額な治療費がかかってくる可能性があります。
「できれば自力で治したい!」と考えている方もいるかもしれません。しかし受け口を自力で治すことにはさまざまなリスクが潜んでいます。
今回は受け口を自力で治すことのリスクやそのまま放置することのデメリットについて解説していきます。
受け口の概要
受け口は専門用語で「反対咬合(はんたいこうごう)」といい、下顎が上顎よりも前に出ている文字通り噛み合わせが反対な状態のことで、「しゃくれ」と一般的には呼ばれることもあります。
通常上顎の方が下顎よりも前にありますが、何らかの原因で噛み合わせが逆になってしまうことで生じます。
受け口は見た目へ影響するだけでなく、噛み合わせや口まわりの筋力バランスを崩してしまう原因です。
放っておくと知らず知らずのうちに歯並びまで歪んでしまう可能性や肩こり・頭痛といった口まわり以外の場所にまで影響を与えることが考えられます。
そのため受け口は可能であれば早めに治療して改善することが望ましいです。
受け口になる原因
さまざまな影響を及ぼす受け口ですが、なぜ起こるのかという原因について解説していきます。
遺伝
親が受け口の方はその特徴を受け継ぐ可能性があります。受け口の原因は上顎が小さいことや逆に下顎が大きいなどの骨格の大きさのバランスです。
親に顔が似ている方がいるのと同じで、骨格の大きさや形が似ている場合もあるのです。この場合、残念ながら予防策はありません。
口呼吸や舌癖
受け口は遺伝の他に生活習慣が原因になることもあります。例えば口呼吸や舌癖です。
口呼吸は口まわりの筋肉の緩みや使わないことによる衰えが原因で、口まわりが緩むことで下顎が前傾になり前に出やすくなります。
また舌で前歯を押すような癖があると下顎が前に出やすくなります。
試しに舌で前歯をグッと押してみると、下顎が前に出ていくような力がかかる感覚がおわかりいただけるはずです。
こういった癖の積み重ねによって次第に受け口になってしまう可能性があります。しかし、早めに生活習慣を見直すことで、受け口を予防できます。
ご自身でお心当たりのある方やお子さんが同様の癖をお持ちの場合は、止めるように注意したり意識をしましょう。
上下の顎の大きさのバランス
上記でご説明したように遺伝的に受け口になりやすい骨格の方もいらっしゃいます。
一方で親は受け口でなくても上下の顎の成長バランスが崩れてしまうことはあるため、そういった場合には受け口になる可能性があります。
また歯並びが悪いことが原因で噛み合わせが悪くなり、受け口になるといった逆パターンもあり得るのです。
受け口の原因には上下の顎のバランスが重要なカギとなっていることがおわかりいただけます。
受け口を自力で矯正するリスク
意識的に下顎を引っ込めたり、無理やり押し付けてみたりと、自力で受け口を矯正しようとしている方もいらっしゃるかもしれません。
しかしこれらの方法はとても危険なことなのです。続いては受け口を自力で矯正するリスクについてお話していきます。
歯並びが悪化する
自力で受け口を治そうとすることで歯並びが悪化する可能性があります。これは無理やり顎や歯に力を加えることで、返ってバランスが崩れるためです。
受け口を含めた歯列矯正では治療前に綿密な検査とシミュレーションを行います。さらに治療途中においても、予定通りの経過を辿っているかを確認しながら治療します。
しかし自力で治す場合はそういった確認や検査は何も行いません。そのためいつの間にか無理な力が歯に加わり、歯並びが歪んでしまう恐れがあるのです。
噛み合わせが悪化する
歯並びだけでなく噛み合わせも悪化する可能性が考えられます。受け口の時点で噛み合わせが歪んでしまっていますが、さらに悪化する恐れがあるのです。
人間は咀嚼するときに40~60kgの力がかかります。もし歪んだ噛み合わせで、毎日咀嚼すると骨格や歯にかかる負担は計り知れません。
見た目には影響がない場合も多い噛み合わせですが、口の中では気づかないうちに大きな負担を与えてしまっている可能性があるのです。
歯の寿命を縮める
自力で受け口を治す行為は歯の寿命までも縮めてしまう可能性があります。
前述で歯や噛み合わせが悪化する場合があるとお伝えしましたが、正しく噛み合わせられていないことで、歯が必要以上に擦り合わされ摩耗してしまいます。
また歯並びが凸凹していると隙間に食べかすが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクも高めてしまうのです。
歯の摩耗や虫歯、歯周病といったものは歯の寿命を縮めます。数年程度であれば変化はないかもしれません。
しかし数十年単位で見たときに、将来自分の歯が1本も残っていないという可能性もゼロではないのです。
現段階では想像できない遠い未来の話になってしまいますが、年をとっても元気な自分の歯でいるためには労らってあげる必要があります。
自分で受け口を治したい気持があっても、何かあってからでは手遅れです。まずはカウンセリングだけでも受けてみて状況を確認してみることをおすすめします。
無料カウンセリングを希望の方は下記のボタンをクリックしてください。
受け口を放置するデメリット
受け口を自力で治そうとすることのリスクをお話してきましたが、次は受け口を放置するデメリットについて解説していきます。
発音しづらい
受け口の方は発音がしにくくなります。特にサ行やタ行といった前歯の裏に舌が触れるような発音をする言葉は発音しづらい傾向にあります。
これは前歯が正しい場所にないことが原因です。前歯が正しい位置にないことで舌が歯に触れにくくなり、正確な発音ができないのです。
また受け口の場合顎の関節に負担が掛かりやすく、口の開け閉めがしにくくなっていることもあります。
その結果しっかりと口を動かして発音ができないため、滑舌が悪くなることが考えられます。
咀嚼が不十分
受け口では上下の顎の噛み合わせが逆の状態です。そのため食べ物の咀嚼がしっかりと行えなくなります。
食べ物がしっかり噛めないと咀嚼が不十分なまま食べ物が胃に入ってしまうため、消化に時間が必要となり内臓に負担がかかります。
受け口は口まわりに影響を与えるだけでなく、体内にまで悪影響を及ぼす可能性があることを忘れないようにしましょう。
コンプレックスにつながる
受け口は下顎が前に突出しているため、見た目にコンプレックスを感じてしまう方も多いです。
顎が大きく見やすく、横顔のラインが崩れてしまいます。横顔は鼻の頭と頤を線で結んだときに唇がその線に触れるか、わずかに触れない程度が理想といわれています。
この理想ラインをエステティクライン(Eライン)と呼び、美容領域においても用いられる言葉です。
受け口の方はこのEラインが崩れてしまうため、理想の横顔とはいえなくなってしまうのです。
原因別の受け口の治療方法
矯正治療における受け口の治療方法についてご説明していきます。
受け口は「上下の顎のバランス」と「歯が前傾して生えている」という2つの原因があり、それぞれ治療方法が変わってきます。
顎の骨に問題がある場合
上顎が小さい・下顎が大きい・噛み合わせバランスが悪いといった「顎」に問題がある場合、歪みの程度によって治療方法が変化します。
矯正領域で治療可能な場合はムーシールドと呼ばれる硬いゴムのような装置や上顎前方牽引装置と呼ばれる装置で上顎を引き出して受け口を改善させます。
しかし上記のような装置での改善が見込めない場合は顎を削ったり、骨格を前後に動かしたりするような外科的手術が必要です。
歯の生え方に問題がある場合
上の歯が後傾していたり、逆に舌の歯が前傾していることで生じる受け口はその傾きを治す歯列矯正を行います。
また歯列矯正以外にもスペース不足により前後に傾いてしまっている場合は床矯正と呼ばれる、歯が並ぶスペースを広げる骨格矯正が行われる場合もあります。
床矯正は骨格がまだ柔軟に動く子どもの頃に行われるのが主流です。
受け口治療の方針は治療前の綿密な検査によって決められます。どうしてこの治療を行うのかといった疑問は治療前にしっかりと聞いて納得しておきましょう。
受け口の矯正の費用相場
受け口の基礎知識がおわかりいただけたところで、実際にかかる費用相場が気になっている方も多いかもしれません。
次は実際に受け口治療でかかる費用の相場についてご説明していきます。受け口の治療は基本的に保険適応がされないため全額負担になります。
地域や歯科医によっても金額は変わってくるため、目安として参考にしてください。
歯列矯正のみの場合
矯正の種類や使用する装置の数によっても費用が変わりますが、子どもの治療で大体40~120万円程度かかるとされています。
大人は骨格が安定していることで治療期間が長くなる傾向にあるため、さらに費用がかかる可能性が高いです。
一般的には症状が重い方ほど費用が嵩む傾向にあります。
外科矯正が必要な場合
歯列矯正のみでは治療が難しく外科矯正が必要な場合、大体120~180万円程かかります。手術代にプラスして入院費などの諸経費も必要です。
外科矯正を行う場合は食事の制限や傷の経過などを見る必要もあるため、費用だけでなく前後のスケジュール管理も大切です。
予め専門家にしっかり相談した上で治療方針や日程を調整するようにしましょう。
受け口で悩んだら自力で治さず歯科医に相談しよう
受け口で悩んでいる方は自力で治そうとせず、まずは歯科医に相談してみることをおすすめします。
確かに歯列矯正の費用は高額になりがちです。高い治療費を払うことはお財布の負担になるため、避けたい気持ちはとてもよく理解できます。
しかし自力で治したことで却って悪化した場合、さらに治療に時間や期間がかかることになり、結果としてさらに多くの労力を費やすことになる恐れがあります。
いきなり治療を始める必要はありません。まずはカウンセリングだけでも受けてみましょう。
下記のリンクから無料の矯正相談をご利用いただけます。ぜひこの機会にご活用ください。
まとめ
今回は受け口をテーマに自力で治すリスクや放置するデメリット、具体的な治療方法などをご紹介してきました。
受け口は体にさまざまな悪影響を与えます。費用は確かに負担が大きいですが、その分将来起こり得る弊害を防いでくれるメリットも大きいです。
受け口が気になっている方はぜひ治療を検討してみてください。