【監修:青山健一】
目 次
歯列の乱れは見た目の良し悪しだけでなく、噛み合わせの悪さが頭痛や肩こりといった直接的な歯との関連性がわかりにくい症状を引き起こす原因となります。
ところが歯を矯正したいと考える人の多くは噛み合わせが悪いことより、歯並びが悪いという悩みから解放されたいという動機もあるのです。
この場合は矯正中のほとんどの人が審美性も気にしてしまいます。
今回は、そんな人たちに指示されている目立たない裏側矯正についてのお話です。
裏側矯正の特徴
紀元前のギリシャやエトルリアの遺跡から矯正装置と思われる出土物がある史実より、人類が歯並びを良くしたいというのは昔から変わらない想いであるのがわかります。
それが長い歴史をへて今ではさまざまな種類の矯正装置が開発され、施術を受ける人の要望によって歯科医が適切なものを選んでくれるようになっているのです。
金属を使用する矯正装置の方式としては、歯の表面にブラケットと呼ばれる小さな装置を固定装着したものにメタルワイヤーを通すタイプがあります。
また、金属を使用しないマウスピースタイプの矯正装置も開発されていて、歯科医はそれぞれの特徴をうまく活用しながら最適な矯正装置を選んでいるのです。
一方で、矯正装置は歯の表側に装着するタイプと歯の裏側に装着するタイプにも分けられ、審美性を重んじる患者は裏側矯正を希望する場合が多くなっています。
裏側矯正の特徴は何といっても矯正装置が目立たないことで、人前での仕事に携わっている多くの人から選ばれているのです。
他の矯正施術について興味のある方はこちらをご覧ください。
裏側矯正のメリット
裏側矯正は別名では舌側矯正ともリンガル矯正とも呼ばれていて、基本的な構造としては歯の裏側にブラケットとメタルワイヤーを装着します。
このブラケットとして汎用品を使用するかカスタムメイドするかによって施術名が変りますが、患者に合わせたメタルワイヤーを交換して矯正していくのは同じです。
ここでは裏側矯正のふたつのメリットについてお話しします。
矯正器具が目立たない
街を歩いていて前歯を金属製のワイヤーでつないでいるような人を見かける場合があります。そのほとんどは歯の表面にブラケットとメタルワイヤーを固定するタイプの矯正装置をつけている人たちなのです。
このように矯正装置が目立つのを知ってしまったため、矯正を躊躇している人は少なくありませんでした。
ところが技術の進歩で矯正装置を目立たないようにしながらも、効果的に矯正できるようになってきているのです。
裏側矯正は目立ちやすいブラケットやメタルワイヤーを歯の裏側に装着するため、周囲の人に矯正していることさえ知られずに施術できます。
この矯正装置が見えないというのが裏側矯正の最も大きなメリットなのです。
裏側矯正のデメリット
裏側矯正と表側矯正には、それぞれにメリットだけでなくデメリットもありますが、患者に合わせて歯科医が最適な矯正装置を選んでいるのです。
ここでは裏側矯正のデメリットの中で主なものについてお話します。
費用が高い
裏側矯正の矯正装置は表側矯正のものと比べると精度や調整難易度が高くなっています。これは歯裏形状が複雑だったり口腔内の空間が狭かったりするためなのです。
カスタム度合いが高い裏側矯正の矯正装置は製造費も高くなり、調整も難しいため技術費用もあがってしまいます。
しゃべりにくくなる
表側に矯正装置を装着した場合に唇が引っ掛かって口が閉じにくくなるケースについては既に説明していますが、裏側に矯正装置を装着した場合も不自由が発生します。
それは歯の裏に矯正装置があると多少なりとも舌の動きが制限されてしまい、一時的に話しにくくなってしまうのです。
特に、歯の裏に舌をつけて発声するサ行・タ行・ラ行や濁音のザ行やダ行で影響がでやすくなりますが、ほとんどの場合に1カ月程度で慣れてしまいます。
裏側矯正ができない症例
裏側矯正には精密な矯正装置と高い調整技術力が必要となるため、向き不向きがあると思い込んでいる人が少なからずいます。
また、受診した歯医者によって希望通りの矯正治療が受けられない場合もあるのです。
ここでは、そんな裏側矯正にかかわる対応可能範囲についてお話をします。
非抜歯矯正なら表側が優位!
最初に、表側矯正で対応できるものは裏側矯正でも対応できるという基本を覚えておいてください。
非抜歯矯正がご希望の場合に、裏側矯正では歯列のアーチを広げにくいため、表側矯正でないと非抜歯矯正ができない場合があります。
また、小さな顎のせいで歯がでこぼこになる叢生も移動スペースを確保するために抜歯であれば裏側矯正が可能ですが、非抜歯矯正がご希望の場合は、表側での矯正が優れています。
歯科医院によって対応できる症例が異なる
診断を受ける歯科医によって裏側矯正で対応できる症状が異なる場合があります。それはどちらかが診断を誤っているわけではなく、対応できる技術が異なっているためなのです。
非抜歯での裏側矯正を掲げている矯正歯科医では、抜歯で移動スペース確保が必要になるような状態での施術は対応していない場合もあります。
また、歯を抜歯する代わりに、ディスキングと呼ばれる技術で移動スペース確保できる歯科医院もあるのです。
このように移動スペースの確保に限っても異なる施術方法があり、それらは日々進化しているため矯正歯科医は常に新しい技術に追従していかなければなりません。
矯正歯科医ならすべての矯正施術に対応できるのが理想ですが、それぞれの矯正施術の専門性が高まれば高まるほど複数の矯正施術の最新技術を維持していくのが難しくなります。
そのため、維持している矯正技術の専門性によって対応できる症例が異なってくるのです。
裏側矯正の治療の流れ
ここでは実際に裏側矯正をする場合を想定して、どのような段階を踏んでいくのかについてお話します。
同じ裏側矯正でも装置の汎用性を活かして費用をおさえる方式と、患者ごとにフルカスタムで装置を製造する方式がありますが、基本の流れは変わりません。
また、矯正の流れでなく必要とされる期間についても認識を深めてください。
カウンセリング・精密検査
矯正を開始する前には歯科医と患者との間での意思疎通をはかるために必ず治療相談ともいわれるカウンセリングをおこないます。
このさいに、矯正への不安や希望などをちゃんと伝える必要があるため、あらかじめ整理してから臨むようにしてください。
カウンセリングをおえたら、次は矯正に必要な精密データを取得するための検査を受けます。
ここでの検査項目はブラケットもカスタム対応するか否かによって変わり、3Dでの精密データや精密歯型を作成する場合もあるのです。
矯正装置の製造
矯正装置の製造は方式によって違いがあって、カスタムメイドのインコグニトやその進化形のWINはブラケットもドイツでの製造となります。
一方、マルチリンガルブラケット自体は標準品をつかう場合でも、メタルワイヤーだけはカスタム製造対応で患者に合わせ込むのです。
矯正装置の設置・調整
裏側矯正の矯正装置であるブラケットとメタルワイヤーが準備できたら、いよいよ患者の口腔内に設置します。
最初に歯の裏に接着固定したブラケットにメタルワイヤーを通して矯正開始状態をつくり、1カ月ごとに指定されたメタルワイヤーに順次交換していくのです。
矯正期間はカスタムブラケット対応の矯正装置では2年から3年、マルチリンガルブラケット対応では2年半から4年が必要となります。
カスタムブラケット対応の矯正期間が短くなる理由は、ブラケットのカスタム化でより強い固着力が得られ反発力を高められるからなのです。
保定装置の装着
メタルワイヤーの交換を重ねて矯正目標位置まで歯の移動が完了しても、それを支えてくれる歯周組織は不完全で後戻りをおこしやすい状態となっています。
そのため、歯周組織がちゃんと保持してくれるようになるまで、リテーナーと呼ばれる保定装置を装着するのです。
保定装置の装着期間は状態によって異なりますが、一般的には2年から3年程度となります。
この保定期間の対処を怠ったり誤ったりすると後戻りをおこして、矯正期間のさらなる長期化につながるため、歯科医から指示された通りに対処するよう注意してください。
裏側矯正を受ける際の歯科医院を選ぶポイント
日本の法律では歯学部の卒業資格と歯科医師国家試験の合格があれば歯科医師免許を取得ができます。
そして、歯科医師免許さえ取得していれば矯正治療もおこなえるため、裏側矯正にかかわらずあらゆる矯正の際に矯正歯科医の選び方がとても大切になるのです。
ここでは、矯正治療を受ける際の歯科医院の選び方についてお話しします。
歯科医院の実績を確認する
自院の得意とする治療技術や施術実績を広く知ってもらうために、インターネットなどの媒体を通じて積極的な情報公開をしている歯科医院も少なくありません。
「裏側矯正」が得意な医院、「非抜歯矯正」が得意な医院、「マウスピース矯正」が得意など、クリニックによって得意な治療というものがあるものです。
裏側矯正を検討しているなら信頼できる歯科医師に相談しよう
裏側矯正にかかわらず歯科矯正が成功するか否かは、信頼できる歯科医師選びができるかどうかに掛かっているといっても過言ではありません。
また、患者側にも豊富な経験と知識がある矯正歯科医を見極める術が求められています。
患者側は公開されている情報だけでなく、評判などについての書き込みや知人を通じての評価も合わせて確認するようにしてください。
そして、矯正治療をはじめる前に信頼できる主治医と不安や疑問について良く相談することがとても大切なのです。
信頼できる歯科医選びについて興味のある方は無料相談を検討してみてください。
まとめ
ここでは治療中であるのが周囲から目立ちにくい裏側矯正と、歯科医によって対応できる症状が違うという状況について説明しました。
また、ここで説明した内容はすべての矯正施術に共通しているものも多く、必要に応じて参考にしてください。
今回の説明が、裏側矯正を検討していたり疑問を持っていたりする人のお役に少しでもたてるようなら幸いです。