【監修:青山健一】
目 次
歯列矯正の1つである裏側矯正に興味があるという方は多いのではないでしょうか。
裏側矯正はその特徴から、様々なメリットがあるのも事実です。
しかし、メリットだけでなくデメリットがあることを忘れてはいけません。
そして、どの矯正方法を選ぶか決める際に、費用や治療期間も重要なポイントになるでしょう。
今回は、裏側矯正の特徴や注意点に至るまで詳しく解説していきます。
裏側矯正の特徴
歯列矯正と一言でいっても様々な種類があり、そのうちの1つが裏側矯正です。
表側矯正と比較されることが多い裏側矯正ですが、まずはその特徴を2つの視点から解説します。
歯の裏側に矯正装置をつける
裏側矯正は、歯の裏側に矯正装置をつけるのが特徴です。
歯の裏側にブラケットという装置をつけ、そこにワイヤーを通します。
表側矯正の場合はブラケットとワイヤーを裏側に装着しますが、裏側矯正は反対側に装着するということです。
装置をつける位置が舌側のため、「舌側矯正」ともいいます。
表側矯正と効果は変わらない
歯の表側と裏側とでは、取り付けるワイヤーの長さに違いがあります。
裏側の方が表側よりも短いワイヤーをつけることになり、裏側矯正の方が比較的弱い力のことが多いです。
ワイヤーの長さや力が異なりますが、これは表と裏で歯の形態が違うので仕方ありません。
そこで、「裏側矯正は効果が変わるのではないか」と不安に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、歯列矯正の効果としては表側と変わらないので安心してください。
裏側矯正のメリット
裏側矯正にはワイヤー矯正としての効果だけでなく、様々なメリットがあります。
そのため、裏側矯正を選ばれる患者様も少なくありません。
ここでは、裏側矯正のメリットを3つご紹介します。
矯正装置が見えない
裏側矯正のメリットは、矯正装置が周りの人から見えないということです。
歯列矯正を受けるにあたり、矯正装置が目立つことに悩む方もいらっしゃいます。
いくら歯並びを良くするためとはいっても、長期間歯に装置をつけていなければなりません。
仕事で人と接することが多い方や、親類・友人の結婚式を控えている方など、矯正装置が目立つと困る方もいらっしゃるでしょう。
裏側矯正は、矯正治療中であっても装置が見えないため、見た目には普段と大きな違いがありません。
そのため、裏側矯正は人と接する仕事をしている方やイベントを控えている方も治療を受けやすいのです。
舌癖を防止する
裏側矯正のメリットとして、舌癖を防止することがあげられます。
舌の先は、本来上顎の前方のあたりが定位置ですが、口呼吸などが原因で低い位置に舌がくる方も少なくありません。
これによって舌先で歯を押す癖がつき、歯並びに影響を与えるのです。
しかし、歯の裏側に矯正装置がついていることで、舌先で歯を押す癖を防止することができます。
歯並びに影響を与える舌癖を防止することで、矯正治療をスムーズに進めることにつながるのです。
前歯が後ろに下がりやすい
前歯が後ろに下がりやすいことも、裏側矯正のメリットといえます。
歯列矯正では出っ歯など、前歯を後方に動かしたいケースも多いです。
裏側矯正は歯の裏側に装置をつけるため、引き込む力が強くなります。
そのため、表側矯正では困難な前歯のケースでも、裏側矯正ならスムーズに治療が進む可能性があるのです。
裏側矯正のデメリット
どのような治療にもメリットがあればデメリットもあるものです。
様々なメリットがある裏側矯正ですが、デメリットを知って治療への理解を深めてください。
ここでは、裏側矯正のデメリットを2つご紹介します。
発音に影響がでる
裏側矯正のデメリットとして、発音に影響がでることがあげられます。
舌側に矯正装置があるため、歯に舌をあてて発する言葉が発音しにくいことが多いです。
例えば「さ行」「た行」「ら行」の言葉がこれにあたります。
発音への影響は不安に感じる方もいらっしゃいますが、個人差はあるものの1週間~1か月ほどで慣れる患者様が多いです。
装置の違和感がある
装置をつけていることへの違和感も、裏側矯正のデメリットの1つです。
先ほどお伝えしたように、裏側矯正では舌側に矯正装置をつけることになります。
普段なら何もついていないような場所ですので、「装置がついている」「装置が舌にあたっている」という違和感が生じるのです。
違和感だけでなく、場合によっては舌にあたって傷ができてしまうこともあります。
装置の違和感も、発声と同様に慣れるまで大変という方も少なくありません。
ただし、違和感が続いている、痛みがあるなど気になる症状は歯科医師に相談しましょう。
裏側矯正の費用
様々なメリットがある裏側矯正ですが、表側矯正よりも費用が高くなることを押さえておきましょう。
そもそも歯列矯正自体が自由診療ですので、決して費用も安い訳ではありません。
ここでは裏側矯正の費用を、全体矯正と部分矯正に分けてそれぞれご紹介します。
全体矯正の場合
全体矯正の場合、裏側矯正の費用は約100~170万円が目安です。
表側矯正でも100万円以上かかることが多いですが、裏側矯正の方が20~50万円ほど費用が高くなります。
費用の幅は矯正の難易度(歯の動かし易さ)によって変動し、抜歯が必要な場合は別途かかることが多いです。
また、初診料・検査費・調整費用も別料金の場合があります。
部分矯正の場合
裏側矯正は、前歯のみなどの部分矯正にも対応しています。
部分矯正の場合の費用は、40~60万円が目安です。
表側矯正の費用は20~50万円が相場ですので、全体矯正と同様に裏側矯正の方が高いのが分かります。
部分矯正の場合も、別途費用がかかることがあるので注意してください。
部分矯正は全体矯正よりも費用を抑えることができますが、それでも決して安い費用ではありません。
裏側矯正の場合はさらに高くなる可能性がありますので、まずは見積もりをとってもらい、比較することをおすすめします。
裏側矯正にかかる治療期間
裏側矯正にどれくらいの治療期間が必要なのか気になるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
裏側矯正の場合、表側矯正よりも少し治療期間が必要というケースが多いです。
例えば全体矯正の場合、表側矯正にかかる期間は1~3年ですが、裏側矯正は2~3年になります。
また、ワイヤーで動かした歯は力を加えるのをやめると元の位置に戻ろうとするため、これを防がなくてはなりません。
そのため、後戻りを防ぐために保定期間を設けて保定装置をつけます。
表側・裏側に関わらず、ワイヤー矯正後は保定期間が必要です。
歯が固定されるまで2年以上は保定装置をつけるため、この期間も押さえておいてください。
裏側矯正を行う場合の注意点
裏側矯正には注意点があり、それを知らずに治療を受けると後悔することになりかねません。
ここでは裏側矯正を行う場合の注意点を2つご紹介します。
注意点を理解したうえで、治療の選択をすることが重要です。
歯磨きが難しくなる
歯の裏側に装置をつけているため、裏側矯正では歯磨きが難しくなることに注意してください。
表側矯正と共通していえるのは、歯と装置の間の汚れに気をつけなければならないということです。
歯の表側に装置がついている場合は鏡を見ながら歯磨きをし、磨き残しがないかチェックしやすいでしょう。
しかし、歯の裏側に装置がついている場合はなかなかそうはいきません。
装置が見えにくい裏側矯正は、自分の目からも見えにくく、歯磨きがしにくい状態といえます。
そのため、裏側矯正を行うときには特に磨き残しによる虫歯や歯周病に注意しなければなりません。
普段の歯磨きはもちろんのこと、調整のための通院時に口腔内の状態をチェックしてもらうことが大切です。
歯科医師の技術・経験に左右される可能性がある
裏側矯正は、歯科医師の技術や経験に左右される可能性があることに注意してください。
一般的に歯の表側よりも裏側の方が複雑な形をしています。
また、歯科医師にとっても表側より裏側の方が見えにくいため、矯正器具の装着やワイヤーの調整には技術や経験が必要です。
需要が高まっている裏側矯正ですが、歯科医師によって技術や経験に差があることを押さえておいてください。
裏側矯正を希望される場合は、裏側矯正の実績のある歯科医師を選ぶことをおすすめします。
矯正方法に迷ったら信頼できる歯科医師に相談
表側矯正・裏側矯正はブラケットとワイヤーを装着するワイヤー矯正ですが、矯正方法は他にも種類があります。
マウスピースを装着するマウスピース矯正も需要が高まっていますし、審美性に優れたセラミック矯正という選択肢もあるのです。
いくつもの矯正方法がある中で、どの方法がいいのか迷う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ワイヤー矯正にするにしても、表側か裏側かで迷う方も少なくありません。
もし矯正方法で迷うことがあれば、信頼できる歯科医師に相談しましょう。
どのような治療にもメリット・デメリットがあります。
患者様にとってメリットとなる部分だけでなく、デメリットまでしっかりと説明する歯科医師が安心です。
歯科医師がデメリットや注意点を説明してこそ、患者様が治療について理解することができます。
不安なことや分からないことを相談しやすい歯科医師や、治療についてしっかりと説明してくれる歯科医師のもとで矯正治療を受けてください。
まとめ
今回は、歯の裏側に矯正装置をつける裏側矯正についてご紹介しました。
裏側矯正は、矯正装置が見えにくいのがメリットです。
矯正していることが目立たないため、人と接することが多い仕事をしている方にも選ばれています。
しかし、メリットがある一方で発音への影響や違和感といったデメリットがあることも押さえておいてください。
また歯磨きのしにくさから虫歯や歯周病のリスクがあるため、矯正治療中のお口のケアも必要不可欠です。
そして、裏側矯正は歯科医師の技術や経験に左右されることがあるため、実績のある歯科医師を選ぶようにしましょう。
不安に思っていることを相談しやすく、治療についてしっかりと説明してくれる歯科医師が、患者様にとって安心できるのではいでしょうか。
信頼できる歯科医師のもとで、理想の歯並びを手に入れてください。