【監修:青山健一】
目 次
歯ぎしりは睡眠中に起こることがほとんどです。そのため、自分では気づいていないケースもあります。
歯ぎしりの原因はストレスというイメージが強いですが、実は噛み合わせや歯並びに問題があるかもしれません。
歯ぎしりを放置すると、身体にはさまざまな悪影響があらわれます。そのため、原因を特定して早めに対処することが大切です。
今回は歯ぎしりの原因と適切な対処法を解説します。心当たりのある方は、ぜひ最後までご覧ください。
歯ぎしりに悩む人は多い?
一説には、日本人の約7割は歯ぎしりを経験したことがあると指摘されています。つまり、歯ぎしりの症状がある方は決して少なくありません。
しかし、悩みを抱えているかどうかは別の問題です。歯ぎしりは睡眠中の現象であるため、自身では気づかないことも多いためです。
よって歯ぎしりに悩む方は、歯ぎしりを経験したことがある方に比べると数は少なくなります。
ちなみに歯ぎしりには主に3つのパターンがあります。
グライディング:上下の歯を横方向にこすり合わせる
クレンチング:上下の歯をぎゅっと食いしばる
タッピング:上下の歯を小刻みにかみ合わせる
最も一般的なのはグライディングです。ギリギリと大きな音が出るのが特徴です。
クレンチングやタッピングはさほど大きな音が出ません。そのため、グライディングに比べると気づかれにくい歯ぎしりです。
もちろん、自身の歯ぎしりに気づいて悩みを抱えている方もおられます。タイプや悩身の有無にかかわらず、歯ぎしりを放置するのは危険です。
歯ぎしりは歯や口腔の健康に悪影響を及ぼすこともあるためです。
歯ぎしりによる悪影響が気になる方は、無料相談を利用して歯科医のチェックを受けてみましょう。
歯ぎしりに気づくきっかけは?
まずは、歯ぎしりに気づくきっかけをみていきましょう。下記の3パターンに心当たりがある場合は、歯ぎしりをしている可能性が高いです。
周囲の人に指摘された
もっとも多いのが、家族・友人などに指摘されるパターンです。
一緒に寝ていた人に「昨夜、歯ぎしりがうるさかったよ」と教えられるパターンは、さほど珍しくありません。
たまに歯ぎしりを指摘される程度ならば、さほど気にする必要はありません。睡眠中の歯ぎしり自体は珍しくない現象であるためです。
一方、年に複数回指摘される場合は、歯ぎしりが常習化しているおそれがあります。歯ぎしりは頻度が高いほど身体への悪影響も大きくなります。
自身ではさほど歯ぎしりを気にしていなくとも、周囲から指摘される頻度が高い場合は、少し注意しましょう。
起床時に歯が浮く感覚がある
歯が浮く感覚をキッカケに、歯ぎしりに気づくこともあります。歯が浮くとは、なんとなく歯が歯ぐきから浮き上がっているような感覚を指します。
歯が浮くのは、歯の周辺組織に負荷がかかるためです。具体的には、歯根膜という組織にダメージがあります。
歯根膜とは歯の根元を包むクッションのような組織です。主な役割は、咀嚼などの際に顎の骨に直接負荷がかかるのを防ぐことです。
歯ぎしりをすると、歯根膜には大きな負荷がかかります。ちなみに歯ぎしりによる負荷は体重の約2倍です。
歯根膜に過度な負荷がかかると歯周組織が腫れるため、歯がフワフワと浮くような感覚が起こりやすくなります。
とくに歯が浮く感覚が起床時に集中している場合は、睡眠中の歯ぎしりに原因があるケースがほとんどです。
顎関節の痛み
顎関節に異常な痛みを感じて、歯ぎしりに気づくこともあります。ちなみに顎関節とは、耳の穴の前あたりにある関節のことです。
歯ぎしりでは大きな負荷が顎全体にかかります。結果、顎の関節が外れたり、変形したりすることが少なくありません。
あるいは、口の開閉時にカクカクと異音がすることもあります。顎の関節に起こる障害は、まとめて「顎関節症」と呼ばれます。
歯ぎしりの原因
歯ぎしりが常習化している場合は早めに対処しなければなりません。適切に対処するにはまず原因を特定する必要があります。
歯ぎしりの主な原因をみていきましょう。
ストレス
歯ぎしりの代表的な原因がストレスです。一説では、睡眠中の歯ぎしりにはストレスを解消する効果があると考えられています。
ちなみに睡眠が深いときは、歯ぎしりはほぼ起きません。眠りが深いときは筋肉が弛緩するため、食いしばることが物理的に難しいためです。
一方、ストレスや疲労が蓄積すると、眠りは浅くなりがちです。すると身体の緊張が解けにくくなるため、睡眠中の歯ぎしりが起こりやすくなります。
噛み合わせ不良
噛み合わせの不良も歯ぎしりの原因の1つです。たとえば特定の歯が他の歯と接触している場合などは、歯ぎしりのリスクが高まります。
あるいは、歯の詰め物や被せ物の位置が高すぎて、向かいの歯と接触している場合もあります。
もし虫歯などの治療後に歯ぎしりが始まった場合は、詰め物・被せ物に問題があるかもしれません。
歯並びと歯ぎしりの関係性
歯ぎしりが歯並びを悪くする場合があります。とくに食いしばる力が強い場合や、歯ぎしりが長期間にわたる場合は、歯並びへの悪影響が出やすくなります。
原因は、歯ぎしりによって歯や歯の根元に負荷がかかることです。歯ぎしりでは、体重の2~3倍の負荷が歯の根元にかかります。
すると歯の根元が折れたり、溶けたりして、歯がぐらつきやすくなります。あるいは、歯の根元の向きが変わることも珍しくありません。
結果、歯が動いたり傾いたりしやすくなるため、歯並びそのものが悪くなってしまいます。
たとえば前歯が傾いて出っ歯になるケースや、奥歯がすり減って噛み合わせが深くなるケースが代表的です。
あるいは歯が割れたり削れたりして、歯の大きさがバラバラになり、審美性が落ちるケースもあります。
もともと歯並びが綺麗な方でも、歯ぎしりによって歯並びが悪化することは珍しくありません。
うるさい歯ぎしりのデメリット
歯ぎしりは単純にうるさいだけでなく、身体にさまざまな悪影響をもたらします。歯ぎしりによる主なデメリットをみていきましょう。
歯がすり減る
歯ぎしりでは上下の歯を強くこすり合わせます。歯同士に大きな摩擦が加わるため、歯の先端がすり減る場合が少なくありません。
歯がすり減った状態は「咬耗症(こうもうしょう)」と呼ばれます。咬耗症は、歯ぎしりによって歯の表面のエナメル質が剥がれることで起こります。
軽度の歯ぎしりであれば、エナメル質が剥がれてもさほど大きな問題はありません。エナメル質は、多少剥がれても再生されるためです。
しかし歯ぎしりが常習化すると、エナメル質の修復が間に合わなくなります。結果、歯そのものが削れてしまうのです。
歯がすり減ると歯の大きさがバラバラになるため、噛み合わせに支障が出やすくなります。また、単純に審美性の悪さにもつながります。
歯の寿命を縮める
歯ぎしりが、健康な歯の寿命を縮めるケースは少なくありません。理由は、歯ぎしりの負荷によって歯・歯の根元に大きな負荷がかかるためです。
歯ぎしりによって大きな負荷がかかると、歯や歯の根元が割れたり欠けたりしやすくなります。
あるいは、歯ぎしりの負荷が顎の骨を溶かすこともあります。いずれも歯の健康を脅かすリスクです。
とくに歯ぎしりでは、特定部位に偏った圧力がかかることがほとんどです。1か所の歯にのみ負荷がかかれば、当然その部位は脆くなります。
顎関節症のリスク
顎関節症は、口の開閉時に顎の関節が痛んだり、カクカクと音がしたりする症状です。口が大きく開かないこともしばしばです。
歯ぎしりは歯だけでなく、顎や顎の関節にも大きな負荷がかかります。結果、顎の関節がズレるなどして顎関節症に至るわけです。
顎関節症は重症化すると、頭痛・肩こり・めまいなどを引き起こすこともあります。
さらに深刻化すると、吐き気や食欲不振の他、うつ病・自律神経失調症・内臓機能の低下にもつながります。
うるさい歯ぎしりの対処法は?
歯ぎしりはできるだけ早めに処置することが大切です。ここからは、歯ぎしりの代表的な対処法をみていきましょう。
歯ぎしり対策のマウスピース
歯ぎしりの代表的な対策が、マウスピースの利用です。歯ぎしり用のマウスピースは、「ナイトガード」とも呼ばれます。
睡眠中にマウスピースを装着すれば、たとえ歯ぎしりをしても、上下の歯が直接接触することはありません。
つまり歯の摩擦・ダメージが小さくなるため、摩耗や割れ・欠けなどのリスクを下げられます。
また、歯ぎしり自体を減らす効果も期待できます。なお、歯ぎしり対策のマウスピースは、自分の歯並びに適したものを利用することが望ましいです。
できれば歯科医院で歯型を取り、専用のマウスピースを作りましょう。
ストレス解消法を見つける
歯ぎしりの代表的な原因はストレスです。歯ぎしりを止めるには、原因であるストレスを解消するのが1番の方法です。
代表的なストレス解消法には、趣味・旅行・スポーツなどがあります。自分に合った方法を見つけて歯ぎしりを防ぎましょう。
歯列矯正
噛み合わせや歯並びに原因がある場合は、歯列矯正によって歯ぎしりを解消できます。とくに特定の歯が飛び出している場合などは、歯列矯正が有効です。
ちなみに歯並びとは日々変化していくものです。歯ぎしりや日常生活の癖などが原因で、噛み合わせや歯並びが悪くなるケースは珍しくありません。
つまり歯並びに自信がある方でも、実は歯ぎしりの原因が口の中にあるというケースはあり得ます。
歯ぎしりが続く場合は、できれば歯科医院で診察を受け、歯並びや口腔をチェックしてもらいましょう。
うるさい歯ぎしりの悩みは歯科医に相談しよう
歯ぎしりの原因はさまざまです。患者様ご自身では特定が難しい場合もあります。歯ぎしりが続く場合は、まず歯科医のチェックを受けましょう。
原因が特定できても、治療が難しいケースもあります。たとえばストレスが原因の場合は患者様本人が自力で解消しなければなりません。
もし有効な治療法がない場合は、代わりに対策を練る必要があります。たとえばマウスピースによって歯を守る方法が代表的です。
治療法・対処法に関しても、原因の特定と同じく歯科医でないと判断が難しい事柄です。
自身の歯ぎしりが少しでも気になる場合は、できるかぎり早めに歯科医院で診察を受けてください。
無料相談を利用するのもおすすめです。
まとめ
歯ぎしりは珍しい現象ではありませんが、放置すると歯や身体に悪影響を及ぼすこともあります。
少しでも歯ぎしりが気になる場合は、なるべく早めに歯科医の診察を受けましょう。