【監修:青山健一】
目 次
日本では昔から八重歯に対して寛容的でチャームポイントといわれてきました。
しかし、現在では八重歯によるデメリットが医学的に広く知られるようになっています。
八重歯を放置すれば口の中の健康に大きく影響することもあるため、正しい知識と理解が欠かせません。
今回は歯科医による八重歯の抜歯基準と必要な対処方法を紹介します。
八重歯でお悩みの方、ぜひ参考にしてください。
八重歯の原因
八重歯は顎の骨と生えている歯のバランスの悪さが原因です。
その要因は下記の4つになります。
- 乳歯の抜けるタイミングが遅い
- 顎の成長が不十分
- 歯のサイズが大きい
- 遺伝的要因
八重歯とは犬歯(糸切り歯)が歯の列からはみ出て生えてしまった状態のことを指します。
原因の1つとしてあげられるのは歯の生え変わるタイミングが遅いことです。
例えば乳歯が虫歯で早く抜けてしまうと、永久歯が生えてくるまで時間がかかるため別の歯ができてしまったスペースを埋めようと移動します。
その結果、犬歯が生えるときにスペースがなくなり他の場所から生えてしまいます。
また、顎の骨が小さすぎたり、歯が大きすぎたりしても顎の骨の中に歯が収まりきらずに歯列からはみ出して八重歯になることも少なくありません。
一般的に犬歯は歯の中で一番生えるのが遅いためはみ出すことが多く、上の前歯の横に尖った歯(犬歯)がはみ出した状態がもっとも八重歯に多いといわれています。
次に八重歯になる原因としては遺伝が考えられます。
歯自体が遺伝するわけではなくご両親の顎・骨の大きさが原因です。
八重歯の治し方
八重歯を治す方法をいくつか紹介しましょう。
抜歯自体は短時間ですみますが、犬歯は他の歯に比べて根が深く強度もあるため体調によっては患者さんの体に負担がかかることがあります。
また八重歯が重なり合って生えている状況によっては抜歯するケースも少なくありません。
その他のケースとしては、理想的な歯並びを作るために健康な犬歯を抜かずに他の歯を抜歯する方法もあります。
ただいずれにせよ矯正治療は時間と費用の療法が必要なため、どの治療法が自分に合っているか慎重に判断して決める必要があります。
八重歯抜歯の判断基準
それでは歯科医が抜歯すべきと判断する基準はどのようなケースなのか解説します。
そもそも八重歯って
八重歯でもっとも多い典型的な症例は、上の前歯の横に犬歯がはみ出している状態です。
この症例は顎の骨に対して、歯が入り切らないではみ出したことで起こります。
歯が歯列からはみ出していると、その歯本来の役割を果せません。
八重歯はチャームポイントと捉える風潮もありますが放置すればさまざまなリスクを抱えることになります。
八重歯を抜歯する判断基準
八重歯があると重なった歯と歯の間が磨くにくくなり汚れが残りやすくなります。
そして将来的に虫歯・歯周病の原因となるリスクがあるため抜歯を検討します。
また、八重歯あることで口が閉じにくい場合も抜歯を検討すべき症例です。
口の中は唾液で潤うことで虫歯が予防されていますが、口が閉じにくいとどうしても乾燥した状態になることで雑菌の増殖から虫歯・歯周病の原因になります。
また、口の中が乾燥した状態では、ウィルスなどが洗い流されなくなり感染症にかかりやすくなるため抜歯が必要といえます。
八重歯を抜くべきと考える症例
八重歯は咬み合わせする際に重要な役割を果たしています。
それではどのような場合に八重歯を抜くべきなのか具体的な症例をみていきす。
抜歯で全体の歯列・咬み合わせがスムーズに改善
八重歯は一見余計な歯のように見えますが、その歯を1本抜くことで大きな影響を及ぼす場合があります。
そのため抜歯は歯科医とよく相談して決断してください。
しかし、他の歯に一切問題がなく奥歯できちんと咬める状態なら八重歯だけを抜けば歯列全体だけでなく咬み合わせもスムーズに改善できます。
矯正治療のように長い時間と費用がかからないため仕事などで治療の時間が取りにくい人や費用面で治療に二の足を踏んでいる人には最適といえます。
周囲の歯と重なり歯周病のリスクが高い
歯周病は歯ブラシが十分に届かないため磨き残しが原因で起こります。
隣の歯と深く重なっている場合は歯磨きが困難なだけでなく食べ物が挟まりやすくなり歯周病の原因になります。
八重歯自体に問題
八重歯が既に虫歯・歯肉炎・歯周病などに罹患している場合、周囲の歯への拡大を考慮して速やかに抜歯を検討します。
また、何らかのアクシデントにより根が割れている歯も、長持ちは期待できないため抜歯を検討する必要があります。
八重歯を抜くべきではないと考える症例
八重歯を抜かずに矯正する症例についてみていきます。
歯周病のリスクが高まっている
周囲の歯で歯周病のリスクが高まっていても八重歯が健康で問題がなければ、八重歯は抜歯すべきではありません。
八重歯を移動させるために犬歯以外の歯を抜けば、ペースが空き歯の重なりが解消されれば歯磨きがしやすくなるため歯周病のリスクは低下し歯並びも美しくになります。
小臼歯の抜歯で八重歯が移動するスペースができる
八重歯に虫歯・歯周病などの問題がない場合は、小臼歯を抜歯してスペースを確保し八重歯を移動させます。
小臼歯とは犬歯の後ろにある歯で、上下左右合わせて4本あるため抜いても比較的咬み合わせに影響が少ないことから犬歯の代わりに小臼歯を抜歯してスペースが確保できます。
小臼歯の大きさは1本7~8mmで左右2本抜くとかなりのスペースを確保できるため、八重歯を移動させることが可能です。
IPRや側方拡大などで必要なスペースができる
IPRと側方拡大は歯と歯の間にスペースを作る手法です。
IPRとは「InterProximal Reduction」の略でIPRはヤスリで歯のエナメル質だけを削りスペースを作る方法です。
痛みもなく治療時間の短縮と矯正治療の範囲を拡大できるメリットがあります。
側方拡大とは歯列を側方に拡大する方法で大人の場合は数ミリ、子供で最大10ミリまで拡大が可できます。
八重歯矯正の方法
八重歯はどのように矯正すればよいのか具体的に解説していきます。
八重歯を抜く判断は矯正可能かを判断後
八重歯を抜く判断は、矯正治療により八重歯が移動可能か診断して判断することになります。
犬歯の抜歯は最終手段です。もし歯科医に抜歯をすすめられても納得できない場合は他の歯科医にも意見を聞いて検討しましょう。
施術手法
八重歯の施術手法には、ワイヤーと透明なマウスピースを使う手法があります。
抜歯はどの歯を抜く場合でも歯列・咬み合わせに影響があるため慎重に検討することが必要です。
ワイヤーを使うメリットは歯列全体を同時に動かすため矯正にかかる期間が短くてすむことです。
ワイヤー矯正は歯列を段階的に動かしていく手法であり1ヶ月に1度通院して矯正器具を調整しなければなりません。
マウスピース矯正のメリットはワイヤー矯正に比べてまわりから目立ちにくく、自分で取り外しが可能で歯磨きも自由にできることです。
しかし、マウスピース矯正は歯の状態によっては適さない場合もあるため、どちらの手法を選ぶかは歯科医の判断が必要になります。
八重歯の矯正治療の流れ
八重歯の矯正治療の流れはまず、八重歯自体に虫歯・歯周病がないか・歯列から大きくはみ出していないかチェックが必要です。
特に問題がなければレントゲン撮影・CT撮影を行ってから矯正手法を判断します。
ワイヤー矯正を選択すると抜歯なしでスペースを作れるか検討しますが、それができなければ小臼歯を抜歯してスペースを作ります。
マウスピース矯正では3Dで治療計画を作成しどれくらい歯が動くのかを目で見て確認が可能です。
治療前に3Dを使い歯の動きが目視できるため安心して治療が始められるのがマウスピース矯正のメリットです。
ワイヤーもマウスピースも一定期間の装着が必要で期間内にメンテナンスのため定期的な通院が必要で、ワイヤーの場合は月に1度、マウスピースなら2~3カ月に1度の通院になります。
自分にどれくらいの時間が作れるのかよく考えてから施術手法を選び矯正治療を始めてください。
八重歯抜歯で悩んだら専門医に相談
八重歯の抜歯で悩んだら、矯正歯科の専門医に相談しましょう。
八重歯の悩みを解消するためにはさまざまな問題があります。
そのためには歯の状態を詳しく診察できる矯正歯科の専門医を選ぶことが重要になります。
信頼できる医師であることはもちろんですが、矯正治療を行う際には長い間通院する必要があるため、豊富な経験・知識・技術とともに、自分が通いやすい場所・雰囲気がよい場所であることも大切です。
信頼できる医師を見つけた場合でも、他に意見を聞ける医師を作っておくと何かと役に立ちます。
現在ではセカンド・オピニオンを求めるのは一般的になっています。
より安心して治療を受けるためには、2人以上の専門医に相談するのがおすすめです。
まとめ
今回は、八重歯の悩みを解消するために八重歯自体を抜歯する方法の他に矯正治療についても説明しました。
現在は矯正治療もワイヤー法だけでなく、マウスピースを使用する手法もあるため選択肢が広がり自分に合った治療法が選べるようになっています。
治療することで八重歯によるさまざまなデメリットが解消できるだけでなく、見た目の変化も期待できます。
八重歯でお悩みの方、信頼できる歯科医のもとで矯正治療して美しい健康な歯を取り戻してください。