【監修:青山健一】
目 次
赤ちゃんが指しゃぶりをしている姿は、可愛いくて癒されます。しかし、指しゃぶりを続けていると、出っ歯になるという話を聞いたことはありませんか?
出っ歯は見た目の問題だけでなく、噛み合わせにも影響が出る可能性もあります。そのため、子どもに指しゃぶりの癖があることを、気にしている親御さんも多いです。
今回は、子どもの指しゃぶりと出っ歯の関係についてのお話をしていきます。指しゃぶりの解決法も紹介しているため、参考にしてみてください。
指しゃぶりで出っ歯になるのはなぜ?
指しゃぶりが癖になっている子は、常に口の中に指が入っている状態です。指を口に入れたままでいると、上の前歯に強い圧力がかかります。
指に押される圧力で、前歯が前に傾いてしまうのです。
また、子どもが指しゃぶりをするときの吸う力は、大人が思っているよりも強いです。長期間指しゃぶりが続くと、吸う力によって歯列の幅がせまくなることがあります。
歯列がせまくなると、歯がうまく並びません。前歯が押し出されて、結果として出っ歯になってしまう可能性があります。
子どもの指しゃぶりの特徴
子どもの指しゃぶりが歯並びに影響を与えることは、子育て中の人なら知っている人も多いはずです。そのため、気にしている人もいます。
指しゃぶりへの対応は、年齢によって考えましょう。年齢ごとの、指しゃぶりの特徴について、お話します。
胎児
指しゃぶりは、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるとき、胎児の頃から始まっているのです。早ければ妊娠14週ごろからエコーで、指をくわえているような動きがみられます。
お腹の中の赤ちゃんは、へその緒を通してお母さんから栄養をもらっていますが、外に出たら自分で栄養を摂らなくてはいけません。
胎児がお腹の中で指しゃぶりをするのは、生まれてから母乳やミルクを飲むための練習です。
生まれてから1歳まで
生まれてから4か月ごろまでの指しゃぶりは、胎児のころから練習してきた母乳を飲む練習の名残です。手が口に触れるから、思わず口に入れてしまうのは、赤ちゃんの本能といえます。
また、赤ちゃんは手に持ったものは何でも口に入れる時期がありますが、これは口を使って物の形や感触を確かめる行為です。
赤ちゃんにとっては、自分の指もおもちゃと変わりません。目に入った自分の手を口に持って行って、感触を確かめながら遊んでいるのです。
つかまり立ちをするようになると、指しゃぶりをするのが難しくなるため、少し頻度が減っていくことがあります。
1歳までの指しゃぶりは自然なことです。また歯も生えそろっていない時期のため、指しゃぶりをしていてもやめさせる必要はありません。
1~2歳ごろ
1歳を過ぎると、積み木やブロックなど手指を使って遊ぶことが増えます。昼間など、遊んでいるときは指しゃぶりが減っていく子が多いです。
ただ、まだ退屈なときや眠いときなどに指しゃぶりをする子も多くいます。3歳くらいまでの指しゃぶりは、異常なことではありません。
まだ、見守っていてもよい時期だといえます。日中も頻繁に指しゃぶりをしていないなら、慌てなくて大丈夫です。
3歳~就学前
3歳を過ぎると、自然と指しゃぶりをしなくなる子も増えてきます。保育園や幼稚園に通うようになると、新しいことに興味がでてくるものです。
ただ、中には慣れない集団生活や新しい環境へのストレスを感じて、安心感を求めて指しゃぶりをする子も少なくありません。
このころからは、指しゃぶりに依存してしまう子もいます。永久歯が生え始める6~7歳頃までに、指しゃぶりが卒業できるように働きかけをしていきましょう。
子どもが指しゃぶりする理由
赤ちゃんや、小さい子どもが指しゃぶりをするのは、自然なことだとお話しました。
では、子どもが指しゃぶりをする理由について、お話していきます。
吸てつ反射
赤ちゃんがする指しゃぶりは、原始反射と呼ばれるものの1つである、吸てつ反射によって起こっているのです。
原始反射は生まれながら備わっている、赤ちゃん特有の反射運動になります。寝ているときにビクッとする、モロー反射や掌に触れられるとギュッと握る把握反射も、原始反射です。
口に入ってきたものを、唇と舌を使って吸い付く反射運動のことを、吸てつ反射といいます。
吸てつ反射は、お母さんのお腹の中で母乳を飲むための練習をしていたときの、名残で3~4か月ごろには、ほとんどなくなっていきます。
1~2歳ごろまでは、名残が残っていることがあるため、指しゃぶりは異常なことではありません。
精神的なよりどころ
子どもが指しゃぶりをするのは、精神的なよりどころとなっている場合があります。赤ちゃんは、お母さんのおっぱいを吸うことで安心感を得るのです。
おっぱいを吸うように、指を吸うことで精神的な安定に繋がるという子は多くいます。緊張したときや不安があるときに、指しゃぶりをするのは、精神安定剤のようなものだと考えてよいです。
指しゃぶりをする子は愛情が足りないのでは?と心配される人もいますが、関係ありません。近くにおっぱいがないから、代わりに指を吸っているだけです。
ただ、5歳を過ぎて指しゃぶりが増えてきた場合などは、何かに不安やストレスを感じている場合があります。子どもの様子をよく観察してみてください。
指しゃぶりはやめさせるべき?
指しゃぶりは赤ちゃんの本能で、発達段階に必要な過程になります。しかし、指しゃぶりが歯並びに影響するとなると、やめさせるべきかと考える人も多いです。
まず、赤ちゃんや1歳や2歳の幼児がする指しゃぶりは、無理にやめさせる必要はありません。3歳までは、まだ歯並びへの影響は少ない時期なので、見守っていて大丈夫です。
3歳を過ぎても指しゃぶりの頻度が多い場合は、注意をしてください。3~4歳頃は歯や顎の発達が活発な時期です。指しゃぶりの回数が減っているようなら、様子をみてよいです。
ただ、指しゃぶりの回数が減らない、または多くなった場合は、少しずつやめられるようにサポートをしてあげてください。
5~6歳になっても指しゃぶりをしていると、永久歯の歯並びに影響がでる可能性があるため、このころまでに卒業ができるようにしていきましょう。
指しゃぶりの解決法
3歳を過ぎたころから、少しずつ指しゃぶりを減らせるように、両親や兄弟など、まわりで上手にサポートをしてあげましょう。
指しゃぶりを卒業するサポートに大切なことは、叱らないことです。「お化けがくる」などと脅すことも、おすすめできません。
指しゃぶりを卒業するために、叱る・脅すよりも、効果的な方法を紹介していきます。
声かけをする
3~4歳頃になって、話が理解できるようになったら、指しゃぶりをやめられるように声かけをしていきましょう。
まずは、手はバイキンが付きやすいところだから、それを口に入れるのはよくないことだと伝えます。
「風邪ひいちゃうよ」など、子どもがわかりやすい言葉で、指しゃぶりはよくないということを教えてあげましょう。
あくまで優しくがポイントです。指しゃぶりを見かけたときなどにも、声をかけて、やめられたときは褒めてあげてください。
手を使った遊びをさせる
指しゃぶりは、手持無沙汰なときにすることが多いです。指しゃぶりを始めようとしたのを見かけたら、手を使う遊びに誘ってみてください。
積み木やブロック遊び、パズルなど手先を使う遊びで気を紛らわせてあげると、指しゃぶりをする暇がなくなります。
手遊び歌なんかもおすすめです。ご両親と一緒に遊ぶことでスキンシップにもなって、子どもも指しゃぶりより楽しいと感じます。
寝るときに指しゃぶりをする子には、手を握ってあげるとよいです。
便利グッズを活用する
指しゃぶりを防止するためのグッズも、いろいろあります。爪に塗って口に入れると、苦い味がするマニキュアやハンドクリームがあり、使用する人も多いです。
指しゃぶり防止グッズを使用するときは、口に入れても安全な素材のものを使ってください。指しゃぶり防止用の手袋もあります。
お子さんの好きなキャラクターの絆創膏を、指に貼るのもおすすめです。指を口に入れる前に、絆創膏が目に入るため指しゃぶり防止に活躍してくれます。
また、物理的な効果はありませんが、指しゃぶりを題材にした絵本を読み聞かせてもよいです。
指しゃぶりで起こるその他の不正咬合
不正咬合は、出っ歯を含む歯並びや噛み合わせに、問題がある状態のことをいいます。指しゃぶりは出っ歯以外にも、不正咬合の症状がでる可能性が高いです。
出っ歯以外に指しゃぶりが、原因で起こりやすい不正咬合の症状について、お話していきます。
開咬
開咬は、歯を噛み合わせたときに、奥歯は噛み合っているのに前歯の上下に隙間がある状態のことです。
上下の前歯が噛み合わないと、食べ物をうまく噛みきることができません。そのまま放っておくと奥歯に負担がかかってしまいます。
前歯に隙間があるため、しゃべるときに舌がでてサ行やタ行の発音がはっきりしないなどの、影響があります。
口呼吸になりやすいのも、開咬のリスクです。
交叉咬合
上下の歯を噛み合わせたときに、上の歯が下の歯にかぶさっています。交叉咬合は、噛み合わせが上下逆になった状態です。
交叉咬合は、顎の骨の成長を妨げ、顎の骨がずれているため顔に歪みがでる可能性があります。顎に負担がかかるため、顎関節症のリスクの可能性もあるのです。
指しゃぶりによる出っ歯を防ぎたいなら
3歳くらいまでの指しゃぶりは、無理にやめさせる必要はありません。しかし、小学校入学時期が近くなっても、卒業できない場合は注意しましょう。
家庭内で改善できない場合は、歯科医に相談をしてみてください。歯科医では、指しゃぶりをやめるための指導も行っています。
歯科医から、子どもに指しゃぶりのリスクについて、上手に説明して卒業ができるようにサポートが可能です。
指しゃぶりを防止する装置もあるため、最終手段として導入することもあります。小児歯科を行っている歯科医なら、無料相談を行っているところも多いです。
まとめ
指しゃぶりは、長期的にしていると出っ歯の原因になります。しかし、3歳くらいまでの子どもの指しゃぶりは、本能や安心を感じるためのものです。
3歳を過ぎるまでは、無理にやめさせる必要はありません。3歳過ぎてから、少しずつ指しゃぶりを卒業していけるように、サポートをしていきましょう。
指しゃぶりの卒業には叱るのは、逆効果です。スキンシップを多めにとって、子どもに合ったやり方で指しゃぶり卒業を促してあげましょう。
家庭では指しゃぶり卒業が難しい場合や、出っ歯が気になったときは、小児歯科を行っている歯科医に相談をしてみてください。