【監修:青山健一】
目 次
赤ちゃんの頃の指しゃぶりは可愛いけれど、1歳2歳と大きくなるにつれて、このまま放っておいてもよいのかと気にする親御さんは多いです。
指しゃぶりは、歯並びや顎の成長に影響を及ぼす可能性があります。長期的に指しゃぶりをしている場合は、注意が必要です。
今回は、指しゃぶりが歯並びに及ぼす影響について、詳しくお話していきます。
指しゃぶりをやめさせる方法や、注意点も併せて紹介していくため、お子さんの指しゃぶりに悩んでいる親御さんは、参考にしてみてください。
長期間の指しゃぶりは歯並びに良くない?
子どもが指しゃぶりをする際の、指を吸う力はかなり強いです。子どもの口から指を抜こうとしても、簡単には抜けないほどの力で指を吸っています。
強い力で指を吸い続けていると、歯に強い圧力がかかるのです。口の中の圧力も強くなり、上顎の形にも影響がでる可能性もあります。
指しゃぶりする行為自体は、胎児の頃から始まっていて、乳児期は本能でしているものです。指しゃぶりすべてが歯並びに影響するわけではありません。
問題は、歯が生えそろい顎の成長が活発な幼児期の指しゃぶりです。幼児期に長時間・長期的に指しゃぶりをしている場合は、注意をしましょう。
指しゃぶりが歯並びに及ぼす影響
指しゃぶりを続けていると、歯並びにどんな影響があるのでしょうか。指しゃぶりが原因で起きやすい問題について、お話していきます。
歯列狭窄
歯列の形は本来、U字です。しかし、指しゃぶりで指を吸う力が加わることで、奥歯が内側に押される力が働きます。
奥歯が内側に押されることで、歯列の幅が狭くなってしまうのです。歯列の幅が狭くなると、歯が正しい位置に生えることができません。
歯列が狭くなると歯が重なって生えてしまうこともあります。
上顎前突
下の前歯に比べて、上の前歯が大きく前にでている状態が上顎前突です。上顎前突は、出っ歯や下顎の後退によって起こります。
指しゃぶりで口にくわえた指の力で、上の前歯が前方に傾いて、出っ歯になってしまうのです。
歯列狭窄によって前歯が押し出されて、出っ歯になるケースもあります。どちらも、指しゃぶりが原因で起こる出っ歯の症状です。
また、指しゃぶりをするときは指をくわえるために、下顎を後ろに引きます。下顎を引いた状態が続くと、下顎が下がってしまうことも上顎前突の原因です。
開咬
上下の歯を噛み合わせたときに、奥歯は噛み合っているのに前歯の上下が噛み合わず、隙間ができている状態が開咬です。
指しゃぶりのときに、指を上下の歯ではさみます。常に歯と歯の間に指をはさんでいることで、前歯に指を通すための隙間ができてしまうのです。
出っ歯も開咬の原因になります。指しゃぶりのほかに、舌を前歯ではさむ癖がある人も、開咬になりやすいです。
歯並びの悪化によって起こる症状
上の項目では、指しゃぶりで起こりやすい、歯並びの問題についてお話してきました。歯並びの問題を、放っておくことは、リスクがあります。
歯並びを悪化させることで起こる症状をみていきましょう。
口呼吸
上顎前突や開咬の状態が悪化すると、口をしっかり閉じることが難しくなります。口が開いたままでいると、鼻呼吸の癖がつきません。
鼻で呼吸ができないと、口で呼吸をする口呼吸の状態になります。口呼吸は、口臭や歯周病のリスクを高めるのです。
また、口は鼻よりもウイルスなどが入り込みやすい場所になっています。そのため、口呼吸が癖になっていると、風邪やアレルギーになりやすいです。
舌癖
指しゃぶりによって前歯に隙間ができると、その隙間が気になって舌を突き出す癖がついてしまうことがあります。
たとえ指しゃぶりを卒業しても、歯の隙間に舌を突っ込んでしまう癖が、残る可能性が高いです。
舌癖があると、舌が歯の隙間からみえてしまうため、見た目もよくありませんし、歯並びの状態が、さらに悪化する可能性もあります。
舌癖は、発音にも影響がでるため、舌足らずなしゃべり方になることもあるのです。
顔の歪み
指しゃぶりによって、噛み合わせが合わない状態が続くと、顎の骨が正しく成長することができません。
噛み合わせが悪いと、食べ物を咀嚼するときに、顎に大きな負担がかかってしまうのです。顎の骨に歪みが生じ、上下の顎の位置がずれてしまうケースもあります。
上下の顎の位置がずれてしまうことで、顎のバランスが崩れて顔の歪みを引き起こす可能性があるのです。
指しゃぶりをやめさせるタイミング
指しゃぶり卒業のタイミングは、一般的には4~5歳くらいが目安になります。3歳までは、無理にやめさせようとしなくても問題はありません。
3歳を過ぎるころから、幼稚園などの集団生活に入る子も多く、自然と指しゃぶりの回数が減っていく子が多いです。
指しゃぶりの頻度が少なくなっていくようなら、慌てなくても自然になくなっていきます。見守るくらいで大丈夫です。
ただ、3歳を過ぎても指しゃぶりの回数が減らない場合や、増えた場合は少しずつでも減らせるように、働きかけをしていくようにしてください。
永久歯への影響を少なくするためにも、6歳までには指しゃぶりを卒業できることが、望ましいです。
指しゃぶりをやめさせる方法
指しゃぶりは自然にしなくなる子がいますが、指しゃぶりが精神安定剤代わりになっていて、それに依存してしまっている子は、なかなかやめられません。
指しゃぶりに依存してしまっている子の場合は、やめられるようにサポートをしてあげる必要があります。
どうしたら指しゃぶりをやめさせられるのか、悩んでいる親御さんも多いはずです。指しゃぶりがやめられる方法を紹介していきましょう。
家庭
家庭でできる指しゃぶりの、卒業へのサポートから紹介します。指しゃぶりを卒業するには、子ども自身が納得していることが大切です、
言葉がしっかり理解できている子であれば、指しゃぶりのリスクについて、子どもがわかる言葉で話をしてみましょう。
指しゃぶりをテーマにした、絵本を読み聞かせるのもおすすめです。指しゃぶりのリスクの話をすることで、子どもも指しゃぶり卒業を意識しやすくなります。
また、指しゃぶりをしようとしたら、手遊びに誘うのもよいですし、手指を使った遊びをするように促すと、指から気をそらせることが可能です。
寝るときに指しゃぶりをすることが多いなら、お母さんかお父さんが、手を握ってあげましょう。
手を握ってしまえば、指しゃぶりのために手を口に持っていくことができませんし、安心感も得られます。
指しゃぶりをしていないときや、自分から指を離したときは、たくさん褒めてあげてください。
指しゃぶりをやめさせるときに、大切なことは、声かけと親御さんとのスキンシップです。
「指しゃぶりしなくても安心」という気持ちを、子どもに与えてあげることで、指しゃぶりに依存することもなくなっていくはずです。
指しゃぶりをやめさえるためのグッズを使うのもよいですが、使うときは安全な素材のものを使うようにしてください。
歯科医院
指しゃぶりをやめさせるように働きかけをしたけど、依存性が強くてやめられない場合や、歯に影響が出始めている場合は、歯科医に相談をしてください。
歯科医から、指しゃぶりの何がいけないのかを、子どもに話してもらいましょう。小児歯科なら、子どもの扱いに慣れているため、上手に話をしてくれます。
親が話をするよりも、少し距離感がある歯科医のスタッフの話のほうが、よく聞いてくれる可能性が高いです。
それでも、指しゃぶりがやめられない場合は、最終手段ですが専用の装置を入れて指が入らないようにする方法もあります。
指しゃぶりをやめさせる際の注意点
指しゃぶりをやめさせるとなったときに、心がけておくべきことがあるのです。指しゃぶりをやめさせるときの、注意点についてお話していきます。
叱らない
指しゃぶりをやめさせるときは、叱らないことが大切です。歯並びが心配で、早くやめさせたいと焦ってしまう気持ちもわかります。
指をくわえているのをみつけて、つい叱ってしまいたくなるかもしれません。でも、ぐっと堪えてあげてください。
指しゃぶりは、不安な気持ちを和らげたりするためにしている子が多いです。叱って無理に外そうとすると、ストレスになってしまいます。
指しゃぶりが酷くなることもありますし、指しゃぶりがなくなっても、おねしょなど別の症状がでてしまう可能性もあるのです。
子どもの気持ちに寄り添いながら、指しゃぶりが卒業できるように、叱らずにサポートをしてあげてください。
目標を決める
指しゃぶりを、なかなかやめられない子は、きっかけづくりをしてみましょう。子どもに指しゃぶりの、リスクについて話をして、やめる日を決めます。
例えば、誕生日や入園・進級など節目になるような日を目標にして、「お姉ちゃん・お兄ちゃんになるから指しゃぶりは卒業ね」と、話してあげてください。
子どもがわかりやすい日を目標にすることで、子ども自身で意識をしやすくなりますし、心の準備ができます。
カレンダーにわかりやすく印をつけて、毎日一緒に確認していくとよいです。目標が達成できたときには、何かご褒美のようなものを用意してみてください。
子どもの好きな食事にするとか、おもちゃを買ってあげるのもよいです。指しゃぶり卒業のお祝いとして、準備してあげることで、モチベーションも上がります。
叱るよりも、指しゃぶりをやめた後の楽しみを作るほうが、効果が高いです。
子どもの歯並びが気になったら専門医に相談を
指しゃぶりだけが、歯並びの問題に繋がるわけではありません。指しゃぶり以外にも、歯並びに影響する癖は、いくつかあります。
歯並びの問題は、見た目や体全体の健康にも影響する可能性があるため、放っておくことはおすすめできません。
まとめ
今回は、指しゃぶりが歯並びや噛み合わせに及ぼす影響について、お話してきました。指しゃぶり自体は、子どもの成長の過程で起こるものです。
乳幼児の指しゃぶりは、異常なことではありません。しかし、3歳以降の長時間・長期的な指しゃぶりは、歯並びへの影響を及ぼすことがあります。
焦って無理にやめさせるのではなく、子ども自身が納得して指しゃぶりが卒業できるように、まわりでサポートをしましょう。
どうしても、指しゃぶりがやめられない場合や歯並びに影響がでているときは、小児歯科専門の歯科医を頼ってみてください。