【監修:青山健一】
目 次
癒合歯とは通常1本ずつ生えてくる歯が何らかの原因で2本に癒着した状態で生えてくることをいいます。
乳歯では数%、永久歯では1%にも満たない確率で生じるとされており、そこまで頻度の高い状態ではないため、一般の方にはあまり知られていないのが現状です。
今回の記事ではこの癒合歯についてのお話と併せて、この矯正治療を保険適用にて行えるのかについて解説していきます。
癒合歯の矯正は保険適用になるのか?
実は癒合歯の原因はまだ解明されていません。また、癒合歯は周りの歯へ影響することも多く、歯科矯正の領域で治療を行う場合があります。
結論から述べると、癒合歯の治療を歯科矯正で行う場合は残念ながら「保険適用にならない」です。
一般的に癒合歯を含め、その他の不正歯列も歯列矯正は保険適用できないことがほとんどになります。
矯正治療は見た目をきれいにするといった美的な目的が強いため、診断が下るような「病気」ではないからです。
そのため、歯列矯正治療は高額な治療費が掛かってしまうのです。
癒合歯の特徴
癒合歯は上記でも述べたように2本がくっついて生えてくる状態をいいます。この癒合歯が生じる原因とそのリスクについて解説します。
主な原因
癒合歯が生えてくる原因はまだはっきりと解明されていません。
しかし、歯が歯茎の中で作られている時に、歯の種である歯胚(しはい)が何らかの異常でくっついてしまうことが原因という仮説が存在します。
歯が完成した後にくっつくことはないため、歯茎の中にある段階に何らかの原因があることは確かです。
癒合歯のリスク
癒合歯が生えてきても食事や会話に問題がない場合は基本的に心配はありませんが、癒合歯が周りの歯に影響を与えていることも考えられます。
例えばくっついて1つの歯になってしまっている分、通常よりも歯が足りなくなる場合です。
癒合歯の有無に関わらず、生まれつき歯が足りない方や逆に多い方もいらっしゃいます。これらは周りから見て気づくことはまずなく、生活に支障がなければ問題はありません。
一方で癒合歯の境目には凹凸があるため、そこに食べ物が挟まったり溜まったりすることで虫歯のリスクが高まります。
さらに乳歯は永久歯が生えてくる時期に根元が自然に溶けて吸収されますが、癒合歯ではこれらの吸収が上手くできず抜けにくい場合もあります。
癒合歯があることはそこまで問題ではありませんが、予め考えられるリスクに対する対応は必要です。
癒合歯は治療が必要なのか
上記で述べたように、癒合歯自体は悪さをしなければ特に問題があるわけではありません。しかし、虫歯などのリスクは存在します。
もし癒合歯が生えてきた際にどのような対処が考えられるのか、治療の内容や流れをご説明します。
乳歯は経過観察が多い
生えてきた癒合歯が乳歯であれば、将来的には永久歯に生え変わるため経過観察する場合が多いです。
しかし生え変わりの邪魔をしていたり、噛み合わせに影響を与えているようであれば対処する必要があります。
レントゲンを撮影することで、歯の吸収具合や永久歯がどれくらいまで成長しているかなどはすぐにわかるため、生え変わりの時期に一度歯科医で見てもらうとよいです。
もし邪魔するようであれば、早めに乳歯を抜いて永久歯が生えやすくしてあげることも1つの方法になります。
虫歯対策は必要
癒合歯の歯と歯の境目に凹凸がある場合が多いです。歯は凹凸が多い部分に食べかすや汚れが溜まりやすく、虫歯になりやすいです。
そのため癒合歯は特に丁寧にブラッシングをして、虫歯にならないように対策が必要になります。
ブラッシングの他にも市販のフッ素を塗って虫歯になりにくいケアをすることもおすすめです。
矯正するなら永久歯が生え揃ってから
もし矯正をする場合は永久歯が生え揃ってからになります。これは癒合歯があったかどうかに関わらず、歯列矯正全般にいえることです。
乳歯の段階で綺麗に並べても、永久歯が生えてきた段階で歯並びは変化します。
乳歯のときは綺麗に並んでいたのに、永久歯が生えてきてから歯並びが悪くなるというケースも少なくありません。
逆に乳歯のときは歯と歯の間にスペースがあったりスカスカして歯並びが悪かったのに、永久歯は綺麗に生え揃うという方もいます。
永久歯が生えてくる予想を立てながら治療することは難しいため、ほとんどの場合生え揃ってから治療を行うのです。
子どもの癒合歯は早めに歯科医に相談しよう
癒合歯は永久歯よりも乳歯で生えてくる可能性が高いです。もしお子さんに癒合歯が生えてきたときは、影響がなくてもそのまま放置せずに一度歯科医に相談しましょう。
なぜ歯科医に相談した方がよいのか、その理由について解説します。
永久歯にも問題があることが多い
癒合歯は吸収が上手く為されずに生え変わりに影響する可能性があるとともに、永久歯にも問題がある可能性も考えられます。
例えば乳歯が癒合歯の場合、その下から生えてくる歯が1本になることがあります。
またきちんと2本生えてきても、乳歯が癒合していたことで永久歯2本分が生えるための十分なスペースが確保できないこともあるのです。
このように意図せず永久歯にも問題を与えてしまう可能性はあるため、早めに歯科医へ相談して定期的に様子を見る必要があります。
癒合歯は歯並びに影響しやすい
癒合歯があることで永久歯の生え方に影響を与えてしまい、結果として歯並びが悪くなることがあります。
癒合歯そのものには問題がなくても、周りに及ぼす影響は考慮しなければなりません。
また中には本来2本で噛み合わせるべきところに癒合した1本の歯しかないことで、噛み合わせが悪くなり歯並びが歪んでしまう可能性もあります。
癒合歯自体は問題なくとも、今後影響を与える可能性が潜んでいるかもしれません。
ご自身のまたはお子さんの癒合歯がこのまま様子をみても大丈夫な状態か、心配な方は一度歯科医で診てもらうことをおすすめします。
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癒合歯の矯正が保険適用にならない理由
癒合歯による歯列の歪みや噛み合わせに対する矯正治療は保険適用にならないことがほとんどです。
癒合歯の治療はあくまで並びや噛み合わせを整えるといった見た目の治療であり、虫歯のような身体に害のある病気に対する治療ではないことが大きな理由です。
もちろん癒合歯の他にも保険適用となるような問題があり、その症状を含めた治療であれば適用される場合も考えられます。
矯正が保険適用になる条件
癒合歯を含めた矯正治療のほとんどは保険適用されません。しかし、矯正治療においても条件によっては保険適用される場合はあります。
例えば、このまま放置しておくと健康上に大きなリスクが生じる可能性がある、といった重大性のある症状や通常の矯正治療ではカバーしきれないような症例に対してです。
具体的に保険適用になる条件についてお話していきましょう。
国が定めた疾患
保険適用がされるかどうかの判断は国と諮問機関で行われています。
そのため、国が定めている特定疾患に分類されている症例であれば、歯科矯正治療においても保険が適用されます。
唇や口蓋が割れている状態の口唇口蓋裂や骨の形成異常である軟骨形成不全症・骨形成不全症、舌が小さい小舌症など先天的な異常が対象です。
先天的な異常を含めた50種類以上の疾患が保険適用の対象として定められています。
顎変形症の術後矯正
顎変形症とは上顎・下顎またはその両方において形や大きさに異常がある状態です。
これらのケースでは通常の歯科矯正では治療が困難な場合が多く、手術を伴うことがあります。
このような外科的処置が適用される顎変形症から生じる歯列不正については、手術後保険適用にて治療を行うことができます。
一般的には口ゴボや出っ歯の歯列矯正に保険適用はされませんが、顎変形症のような病気から生じている症状であれば適用されるのです。
永久歯が3本以上生えず歯茎の切開術が必要
保険適用されるケースとして、永久歯が3本以上生えず歯茎の切開術が必要な場合です。
歯茎の中に永久歯が埋もれたまま生えてこない場合、歯茎を切開して引っ張り出さなければなりません。
通常中学に上がるころまでには永久歯が生え揃うため、その頃になっても生えてこない場合は手術が必要となる可能性が高くなります。
癒合歯や矯正費用の疑問は歯科医に相談
ご自身またはお子さんに癒合歯がある場合はまず、その状態を見てもらうとよいです。前述したように癒合歯があるからといって必ずしも治療が必要になるとは限りません。
しかし治療の必要性についてはご自身で判断することは難しく、専門家の意見を聞くことが最も安全です。
万が一矯正が必要だと判断された場合には、保険適用外のため全額自己負担で治療する必要があります。
これからの治療方針や矯正費用の心配など悩みごとが増えるかもしれませんが、悩みは決して抱え込まずに、お気軽に歯科医へ相談しましょう。
どんな些細なことでも悩みや疑問に思ったことは伝えるようにしてください。
最近では無料のカウンセリングを行っている歯科医もあります。時間に余裕がある方はどんな治療方法があるのか、複数の歯科医で相談してみることをおすすめします。
そして、ご自身の希望に最も沿う方針の歯科医を選びましょう。
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まとめ
今回は癒合歯についての解説とともに、これらの歯列矯正治療に保険適用されるのか、またされる治療の条件についてご紹介してきました。
歯列矯正は費用が高額になる傾向にあります。そのため、ご自身が納得の行く治療が受けられるように、納得できるまで歯科医と相談しましょう。
この記事を読んで癒合歯について少しでも理解が深まると幸いです。