癒合歯は矯正治療が必要なのか歯科医が解説|乳歯の癒合歯への対処法や永久歯への影響もご紹介

【監修:青山健一】

癒合歯は矯正治療が必要なのか歯科医が解説|乳歯の癒合歯への対処法や永久歯への影響もご紹介

癒合歯は特に乳歯に多い現象です。歯同士がくっついた状態で生えてくるため、保護者の方は驚くかもしれません。
癒合歯自体は特に問題ないとされています。しかし放置するのはよくありません。虫歯や将来の歯並びにリスクがあるためです。

癒合歯は、適切なタイミングで治療や矯正を行うことが大切です。今回は、癒合歯の治療の必要性や治療方法を紹介します。
お子様やご自身の癒合歯に不安がある方はぜひ最後までご覧ください。

癒合歯は矯正治療が必要?

癒合歯は矯正治療が必要?

癒合歯に矯正治療が必要かどうかは、ケース・バイ・ケースです。大人の癒合歯の場合、矯正自体が難しいこともあるためです。
癒合歯の矯正は、多くの場合、歯同士がくっついた状態で治療せざるを得ません。つまり通常の矯正治療より難易度が高くなりがちです。

よって、矯正後の仕上がりは多少妥協せざるを得ないこともしばしばです。なお、乳歯の癒合歯は基本的に治療は必要ありません。
理由は、乳歯はそのうち永久歯に生え変わるためです。ただし乳歯の癒合歯を放置すると、永久歯の歯並びに悪影響が出ることがあります。

そのため乳歯の癒合歯は、永久歯に生え変わるタイミングで矯正治療が必要になる場合もあります。
癒合歯の治療が必要かどうか判断が難しい場合は、下記のリンクから無料相談してください。

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癒合歯の概要

癒合歯の概要

癒合歯は、隣接する2本の歯がくっついて1本になった状態です。乳歯と永久歯のどちらにも発生します。
ただし乳歯の発生率が3~4%であるのに対し、永久歯の発生率は0.3%程度です。つまり癒合歯は大人よりも小児に多い現象です。

ちなみに癒合歯には2つのタイプがあります。1つ目は歯の表面だけがくっついたタイプです。「癒着歯」と呼ばれることもあります。

2つ目は、歯の表面に加え根元の神経同士までくっついているタイプです。癒合歯といえば、一般的にはこちらを指します。
癒合歯の見た目もさまざまです。たとえば、くっついた歯と歯の間に境界線が残るものもあれば、完全にくっついて1つの歯に見えるものもあります。

いずれの場合でも、癒合歯は通常の歯並びより歯の数が少なくなります。理由は、本来2つに分かれるはずの歯が1つの歯として生えるためです。

好発部位

癒合歯はほとんどの場合、前歯に起こります。より具体的には、前歯の真ん中から3番目の歯までが好発部位です。
癒合歯は上下の前歯のどちらにも発生します。ただし下の歯の方が出現率はやや高めです。なお、好発部位は上下で若干異なります。

【下顎の好発部位】

乳中切歯Bと乳側切歯C
乳側切歯Aと乳犬歯B

【上顎の好発部位】

乳中切歯Aと乳中切歯B

主な原因

癒合歯のもともとの原因は、胎児のときに歯胚がくっついてしまうことです。歯胚は、乳歯の芽のようなものです。
それでは、なぜ乳歯の芽同士がくっつくのでしょうか。原因の1つとして、母体の全身状態が指摘されていました。

たとえば母親の薬物使用のほか、栄養状態や病気などが原因で、胎児の歯の発達に支障が出るという説です。
しかし癒合歯は、母親の全身状態に問題がない場合でも発生します。そのため癒合歯の原因が必ずしも母親にあるとは限りません。

もう1つの有力な説は骨格です。具体的には、顎が小さすぎるために歯胚同士が成長過程で接近し、結果くっついたと考えられています。
特に現代は、顎が小さい方が非常に多いです。結果、歯の芽同士がくっつきやすくなり、癒合歯に至るというわけです。

癒合歯によるリスク

癒合歯によるリスク

癒合歯自体はさほど問題はありません。かといって、癒合歯の放置にはリスクがあります。主なリスクを2つ紹介します。

虫歯のリスク

虫歯のリスク

虫歯は癒合歯の代表的なリスクです。原因は、くっついた歯の境界線のケアがしづらいためです。

癒合歯の多くは、癒合した歯の間に溝ができます。溝の間は歯ブラシが届きにくく、歯磨きしても食べかす・汚れを十分に落とせません。
結果、歯の溝にプラークがたまり、虫歯に発展しやすくなります。

将来の歯並びへの影響

乳歯が癒合歯の場合、永久歯の歯並びに悪影響が出ることがあります。代表的なのは下記のケースです。

  • 永久歯が癒合歯になる
  • 永久歯の数が足りない
  • 歯並びがガタガタになる

癒合歯による永久歯への影響については、後ほど詳しく解説いたします。

乳歯が癒合歯のケースの対処法

乳歯が癒合歯のケースの対処法

多くの場合、乳歯の癒合歯は根本的な治療を行いません。ただし、虫歯予防のためにはある程度のケアが必要です。
乳歯の癒合歯の基本的なケア・対処方法を解説します。

フッ素塗布・シーラント

フッ素塗布・シーラント

虫歯予防のために、癒合している歯には定期的にフッ素を塗布します。フッ素は歯の表面をガードする成分です。
歯からエナメル質が溶け出すのを防ぎ、さらに歯の表面を硬化させることで虫歯に対する抵抗力を高めます。

また、フッ素には虫歯の働きそのものを抑制する作用もあります。フッ素を塗布すると、万が一虫歯になっても軽症で済むこともしばしばです。
同じくシーラントも虫歯予防治療の1種です。シーラントでは、歯の溝やくぼみに樹脂製の物質を流し込みます。

つまり歯の溝を埋めてしまうわけです。癒合歯は、歯の溝に歯垢が溜まることで虫歯が起こります。
シーラントであらかじめ溝を塞いでしまえば、そもそも歯垢は溜まりません。よって、虫歯のリスクを下げられるというわけです。

乳歯はとくに虫歯になりやすいものです。癒合歯になると虫歯リスクはさらに高まります。
早めにフッ素やシーラントで歯を強化することで、将来的な虫歯リスクを回避できます。

定期的な歯科受診

癒合歯は虫歯になりやすいため、定期的に歯科医のチェックを受けましょう。たとえフッ素やシーラントでケアしても、効果は一時的にすぎません。
フッ素やシーラントの虫歯予防効果を持続させるには、定期的に歯科医院でのメンテナンスを受ける必要があります。

定期的な歯科受診が必要とされるのには、もう1つ理由があります。永久歯への影響をはかるためです。
乳歯の癒合歯は、永久歯の歯並びに悪影響をもたらすことがあります。
しかし永久歯に生え変わるタイミングで適切な処置を受ければ、影響を最小限にすることも可能です。

癒合歯の小児は定期的に歯科医のチェックを受けて、永久歯への影響を把握しておかなければなりません。
具体的な診察のタイミングは、歯の生え変わりが始まる5~6歳ごろです。ただし、虫歯予防などのためにも、5歳以前であっても定期受診は大切です。

できるかぎり歯科医院には定期的に通い、歯の状態を把握しておきましょう。
日ごろからこまめにチェックを受けておくことで、歯の生え変わりに直面したときも、スムーズな処置が期待できます。
なお、永久歯の状態を調べるときは、歯のレントゲン写真を撮ることが一般的です。

起こり得る永久歯への影響

起こり得る永久歯への影響

癒合歯は永久歯に影響を与えることがしばしばです。多くの方は永久歯の生え変わり後に矯正治療を必要とします。
それでは、具体的にどのような影響があるのかみていきましょう。

1本足りない

癒合歯は、2本の歯が1本として生えます。つまり通常よりも歯の数が足りません。
すると永久歯に生え変わったときに、同じく歯が1本足りなくなることがしばしばです。
永久歯の数が欠ける現象は「先天性欠如」「先天性欠損」などと呼ばれます。乳歯の癒合歯が先天性欠如歯に至る確率は約50%です。

永久歯の数が足りないと、生え変わり後に、歯と歯の間に余分な隙間ができることになります。
結果、歯が移動して歯並びがガタガタになったり、隙っ歯になったりするケースは少なくありません。

形・大きさ

癒合歯の後に生えてくる永久歯は、サイズが小さくなる傾向があります。また、形が変わっていることも珍しくありません。
具体的には、三角形をしているケースが多いです。「矮小歯」と呼ばれる歯の異常現象で、通常の歯と比べると極端に小さいのが特徴です。

矮小歯は、とくに2番目の前歯によくあらわれます。矮小歯があるからといって、ただちに悪影響が出るわけではありません。
ただし将来的に、噛み合わせの悪化や隙っ歯につながるおそれがあります。あるいは審美的な問題も少なくありません。

癒合歯の後の永久歯は、矮小歯になるリスクが高いです。矮小歯が発生した場合は、矯正治療によって歯列や見た目を改善することもあります。

永久歯が生えるスペースが足りない

乳歯の癒合歯では2本の歯がくっつきますが、大抵は2本あわせて1.5本分くらいのサイズにしかなりません。
では1.5本分の乳歯が抜け落ちた後に、通常通り2本分の永久歯が生えてくるとどうなるでしょうか。

答えは、「歯が並ぶスペースが足りなくなる」です。単純に考えても、1.5本分のスペースに2本の歯が並ぶのは窮屈です。
結果、永久歯がねじれて生えたり、重なって生えたりすることが少なくありません。つまり歯並びが悪くなってしまうのです。

もちろん永久歯がきれいに並ぶ可能性もゼロではありません。しかし多くの場合、乳歯の癒合歯の方は永久歯の歯並びが悪くなります。
永久歯に悪影響が出る場合は、生え変わりのタイミングにあわせて矯正治療を行うことが一般的です。

癒合歯を矯正する方法

癒合歯を矯正する方法

癒合歯は矯正治療を行うこともあります。しかし2本一緒に矯正しなくてはならない分、通常の矯正より難易度は高めです。
癒合歯の矯正治療の考え方や、あらかじめ理解しておくべきデメリットを紹介します。

癒合歯は温存することが多い

癒合歯を無理やり割ったり、2本まとめて抜いたりすることはほとんどありません。他の歯や口への負担が大きすぎるためです。
多くの場合、矯正は癒合歯を残したまま行います。とくに永久歯の数が足りないときなどは、乳歯を抜かずそのまま使用することもしばしばです。

中には、成人後も乳歯が残っている方もおられます。ただし乳歯は永久歯と比べると脆弱であるため、矯正に耐え切れないこともあります。

ディスキングでサイズを整える

ディスキングは矯正治療の1種で、歯を削る方法です。より具体的には、歯の表面のエナメル質を削ることで、歯を小さく整えます。
ディスキングには2つのメリットがあります。1つ目は歯のスペースの確保です。たとえば永久歯が生えるスペースが狭い場合などに有効です。

歯を削って永久歯のスペースを十分に確保することで、歯並びを整えやすくなります。2つ目のメリットは見た目が良くなることです。
ディスキングは、歯を削ることで歯のサイズを調節できます。一方癒合歯は他の歯より大きいことがほとんどです。

サイズが異なる歯が1つでもあると、たとえ歯並びが揃っていたとしても、歯並びが悪いような印象を与えかねません。
そこでディスキングが有効になります。癒合歯を削って全体のサイズを揃えることで、口元の印象を改善できるというわけです。

ただしディスキングにはデメリットもあります。代表的なデメリットは、健康な歯を削ることです。
特に若年者は、歯を削ることで知覚過敏のリスクが高まるとも指摘されています。

仕上がりに妥協することも

癒合歯の矯正は、通常の矯正治療よりも自由度が低いことが一般的です。理由は、くっついた歯そのものは矯正できないためです。

たとえば癒合歯がねじれてくっついている場合、矯正でもねじれは改善できません。あるいは、前歯の中心線がズレるなどのケースもよく見られます。
癒合歯の矯正は仕上がりが理想的にならないこともある点は、事前によく理解しておきましょう。

癒合歯の不安は早めに歯科医に相談しよう

癒合歯の不安は早めに歯科医に相談しよう

癒合歯を放置すると虫歯や歯並び悪化のリスクがあります。できれば、癒合歯を発見した時点で一度歯科医のチェックを受けることが望ましいです。
癒合歯の矯正で不安や疑問があれば、矯正相談を受けることをおすすめします。下記のリンクから、無料の矯正相談の予約ができます。

無料矯正相談Web予約はこちら

まとめ

まとめ

 

一般的に癒合歯は乳歯の異常と考えられています。しかし実際には、乳歯から永久歯に生え変わった後でも影響が残り続けるケースが多いです。

実際に乳歯が癒合歯だった方は、永久歯の矯正治療が必要であることがほとんどです。どの程度の治療を行うかは個人差があります。
まずは一度、歯科医を受診して歯のチェックを受けましょう。




監修者:銀座青山You矯正歯科グループ 理事長・総院長 青山健一

理事長・総院長 青山健一 1965年 広島県呉市生まれ
1990年 広島大学歯学部卒業
1992年 南青山デンタルクリニック開院
2001年 医療法人社団 健青会 設立
2011年 日本で初めての「部分矯正専門医院」のYou矯正歯科を開設
2021年 You矯正歯科 池袋西口医院開設
2021年 You矯正歯科 広島紙屋町医院開設(銀座、青山等で9医院開院中)
▼総院長ブログ「幸せってなぁに?」もご覧ください。

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